バレンシアのピソ・コンパルティードで暮らした思い出

現在、スペインのマドリードに住んでいる。しかし、その前は約半年間、スペイン第3の都市であるバレンシアに住んでいた。

バレンシアでは、日本でいうシェアハウス(スペイン語では、ピソ・コンパルティード)に住み、スペイン語が話せるロシア出身の男性と、ベネズエラ出身の男性の3人と生活を共にした。

日本のシェアハウスよりもスペインのシェアハウスは、人の出入りが激しかった。例えば、2週間しかいない人が来たと思ったらすぐに引っ越しをしたり、ずっと居た住民が気づけばいつの間にかいなくなっていたこともある。

 

私が住んでいたピソ・コンパルティードでは、ロシア出身の男性が4ヶ月経った頃に部屋を出ていった。しかし、ベネズエラ出身の男性は途中で出ていくことはなかったため、半年間、同じピソ・コンパルティードで住んでいた。

観光業を学ぶ学校に通っていたベネズエラ人男性は、勉強のために基本的に家に引きこもっている場面が多かった。しかし、時々、リビングで私の話を聞いてくれたり、スペイン語を学ぶための方法を教えてくれたりと、半年間でたくさんの会話をした。

 

しかしある日、私はマドリードでの仕事が決まり、引っ越すことになった。私は彼に残り1ヶ月でここを出ていくことを伝えた。彼は「すごいじゃないか。素晴らしいこと。マドリードに行っても頑張ってね!」と言ってくれた。

別の街で、初めて海外の企業で働く私の不安を汲み取ってくれたのか、励ましの言葉をくれた。そのおかげで私は唐突なスケジュールだった引っ越しにも関わらずに、不安を楽しみな気持ちに変え、ピソ・コンパルティードを出る準備ができた。

 

ようやく家も決まり、ひと安心。ついに明後日、ピソ・コンパルティードを去るときに、突然、彼は私に声をかけてくれた。

「君が旅立つ日に僕はいないから、君にプレゼントをあげるよ。」

 

それは、クジラの尻尾のキーリングと、メッセージ付きポストカードだった。

 

彼は私にプレゼントをくれた。外国人からプレゼントを貰うなんて、バレンシアからマドリードに旅立つ私に、まさかプレゼントを買ってきてくれていたとは、本当に思いもよらなかった。

私は「ありがとう」と何度も言った。

 

関わった時間は短かったけれども、思い出を貰って私は心から嬉しくなった。マドリードに移った今、貰ったキーリングは鍵を無くさないためのホルダーとしてきちんと使っている。

可愛らしい形のクジラの尾ビレが特徴的なキーリング。見る度にバレンシア時代のピソ・コンパルティードでの楽しかった日々を思い出すのだろう。そして、大事な思い出をこれから無くすことはない

私はシェアメイトにプレゼントをあげた経験がない。ただ、今回のサプライスなプレゼントの嬉しさを感じて、これからはシェアメイトと生活することになったら、最後はプレゼントをあげたい。

不安な海外生活に元気をくれたベネズエラ出身の彼に、今でも感謝している。

 

***************************************
■ 浦川たろう(SHUMPEI URAGAWA)1989年生

スペイン専門のライター・エディター・フォトグラファー。2018年11月までスペインワーキングホリデー中。帰国後のスペイン長期移住を目指しています。ブログではスペインワーホリ情報・生活の記録、スペイン語学習などについて書いています。 興味・関心分野はスペインのIT・スタートアップ関連、ライフスタイル。趣味はサッカー観戦と読書。

Blog: https://shumpeiu.com/

Twitter: https://twitter.com/v_varentaro

Instagram: https://www.instagram.com/tarostagram/

 

□ ANOTHER STORY

KIKUSUI

ケルトの笛 hatao

SHINGO KURONO

SHINGO KURONO