【 プロサッカー選手 田中亜土夢(HJKヘルシンキ)× コラムニスト えのきどいちろう 特別対談 】いまがあるのは。

【 プロサッカー選手 田中亜土夢(HJKヘルシンキ)× コラムニスト えのきどいちろう 特別対談 】

自然体に、志高く、今を生きる人たちの生活を綴る「BREW」
今回から、プロサッカー選手・田中亜土夢選手の特別連載をお送りします。

Jリーグ「アルビレックス新潟」でトッププレイヤーとして活躍し、現在は北欧・フィンランドで奮闘している田中亜土夢さんの”生き様”をご覧ください。

田中亜土夢 

1987年生まれ 新潟県出身。プロサッカー選手。
高校在学中に特別強化指定選手としてJリーグデビュー。
地元チームである「アルビレックス新潟」に所属し、入団から7年目の2011年にレギュラーポジションを獲得。その後、チームに欠かすことのできない中心選手に成長。

Jリーグ200試合出場を記録した2014年シーズン終了後「どうしてもヨーロッパに挑みたい」と移籍先が決定しないまま10年在籍したアルビレックス新潟を退団。

2015年2月フィンランドの強豪「HJKヘルシンキ」へ入団。背番号は「10」。
リーグ初の日本人選手の入団を地元メディアは「史上最高の外国人選手がやってきた」と大きく報じた。

デビューシーズンから「BEST ELEVEN」、メディア選出の「STAR PLAYER」(年間最高ポイント選手賞)を受賞し、多くの人に「なぜだ?」と言われながら旅立った挑戦に答えを出した。
2016年UEFAヨーロッパリーグ予選・イエテボリ戦(スウェーデン)で骨折しながら叩き込んだ1ゴール1アシストなど、記録にも記憶にも残る活躍を続けている。
[ 田中亜土夢オフィシャルウェブサイト]

PHOTO : Mika Vauhkonen /  courtesy of HJK


インタビュアー:えのきどいちろう

1959年生まれ。秋田県出身。コラムニスト。
中央大学在学中の1980年に『宝島』にて商業誌デビュー。
以降、各紙誌にコラムやエッセイを連載し、現在に至る。テレビやラジオでも活躍。
田中亜土夢とはアルビレックス新潟在籍時からの間柄。

[1]

― 言葉よりも感じ取る ―

フィンランドにおけるプロサッカーのトップディビジョンリーグであるフィンランド・ヴェイッカウスリーガ。優勝チームは、ヨーロッパ各リーグのトップチームが集結する「UEFAチャンピオンズリーグ」の予選に出場することができる。

このリーグの強豪チーム「HJKヘルシンキ」で”背番号10”をつける日本人選手が、田中亜土夢。

入団3年目として迎えた2017年4月5日のシーズン開幕戦(HJK 対 VPS)では、2ゴール、1アシストを記録し、マンオブザマッチに選出。センセーショナルなシーズンスタートとなった。

 

えのきどいちろう(以下、えのきど):開幕戦。大活躍でした。

田中亜土夢(以下、亜土夢):遠くまで来ていただいた試合であれだけの試合が出来て、本当によかったです。やっぱり、「いいところを見せてやろう」って気持ちがありましたから。その夜は興奮が収まらなくて僕もなかなか眠れませんでした。

えのきど:去年夏の骨折から復帰して、初めてのリーグ戦。あれはサッカー人生のなかでも初めての大きなケガでしたね。

亜土夢:もどかしかったですね、戦えないってことは。ずっといいパフォーマンスで順調にきていて、大事な2年目だったのに。

えのきど:フィンランドに来て1年、2年と経って、リーグの事や選手のことも相当わかってきている?

亜土夢:僕もわかってきていますけど、相手も同じように僕の事をわかってますからね。お互いに「どうくる?」って考えながら、逆を突きながらやりあうのが楽しいですね。

えのきど:亜土夢はチームの王様でした。HJKでは相当な自由度を与えられてるんだなあって思いながら試合を見てました。アルビレックスの頃はね、亜土夢に課せられたタスクはなにしろ多かった。バランスを見たり、カバーをしたり、相手の攻撃を遅らせて、守って、その中でチャンスを見つけていく。

亜土夢:今とはポジションも違いますからね。気持ちは変わってないですよ。ピンチには全力で戻りますし。

えのきど:もちろんそうだけど、このチームは亜土夢のアイデアやイマジネーションをあてにして動いてる。亜土夢在りきでチームは出来てる。これはすごいと思ったんですよ。ここフィンランドでは亜土夢は外人じゃん。異国から来た選手だからね。助っ人感がすごくあった。

亜土夢:新潟のマルシオ(リシャルデス)やミシェウ(※)。彼ら外国人選手の姿を見てきたので、僕も助っ人で来てるんだから彼らと同じようにって気持ちは強くありましたね。

※ マルシオ・リシャルデス、ミシュウ:ともにアルビレックス新潟の中心選手として活躍したブラジル人プレーヤー


えのきど:結果が必要になって来る。昔は得点だけじゃないと言ってたけど、得点という結果出しちゃってますよ。

亜土夢:意識は変わりましたね。

えのきど:いつから?

亜土夢 :ここに来た時から、最初の練習からですね。新潟にいた時に結果を出せずに帰っていった外国人の選手も見てきたし、そうなっちゃいけないな、点取らないとって。

えのきど:でもさ、相手はさ、やっぱりでかいんだよ。それはもう一目瞭然。亜土夢ちっちゃいのにこんなのとやってんだ! って。こっちに来てフィジカルを変えていこうとかしたの?

亜土夢:考え方で生き抜こうと思いましたね。体よりもどうプレーするか。体はやっていけば何とかなるかなと思ってたし。

えのきど:試合を見てると戦術的に俯瞰でピッチが見えてる選手が少ないのがわかるから、亜土夢は目立ちますね。ひとりだけピッチ全体を見てる。たとえばこの前の試合、両チームとも膠着した感じのスタートだったでしょ?

亜土夢:開幕戦でしたからね。

えのきど:そんななかで亜土夢だけはチャンスあるぞって読んで、実際グッと流れを作るんだよ。

亜土夢:そんなに考えてるわけではないんですけど(笑)流れは見えてました。ここって雰囲気は感じましたね。

えのきど:こりゃ亜土夢は楽しいだろうなって見ていました。

亜土夢:楽しいですね。トップ下(※)を任されてるし、自分の得意なプレーをやらせてもらってるからですかね。

※トップ下:攻撃の中心であり、ゲームメーカーが担うポジション

えのきど:チームメイトのこともつかんでる。こう出せばこう来るなとか。そしてチームメイトはみんな「亜土夢に出せばなんとかなる」と思ってる。

亜土夢:お互いを生かし合うのは練習でつかむしかないんで、移籍した最初の練習から観察してましたね。

えのきど:観察だけ? コミュニケ―ションは? よく海外に移籍した時は「主張しないと」って言われるじゃない。

亜土夢 :僕は合わせるタイプなんでしょうね。なんとなく感じあえるようになるもんです。言葉よりも感じ取るんです。それが一番大事なんです。

遠い異国の地フィンランドで、たったひとりの日本人プレーヤーとして活躍する田中亜土夢。チームに欠かせない主力選手への成長した彼は、今、どんな想いでサッカーと向き合っているのか。また、ヘルシンキでの生活をどう感じているのか。田中亜土夢の”現在”に、さらに深く迫っていく。

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