音楽家のリモートワークについて考えよう

非常事態に弱い演奏家や音楽講師の仕事

こんにちは! 台湾留学から帰ってきました。ケルトの笛のhataoです。
皆さんのところでは、新型肺炎の影響はいかがですか?

僕は3月、4月のほとんどの演奏依頼がキャンセルになってしまいました。さらにずっと先の6月の演奏依頼も飛んでしまい、さすがにこれは便乗キャンセル(!?)なのでは! 世の中の人々の意識が自粛・緊縮になっていることを肌身に感じています。

僕はそれほど忙しい演奏家ではないのですが、そんな僕でさえ、さしあたり20万円くらいの仕事が失われました。演奏だけで生計を立てている音楽家は、本当に厳しいでしょう。とはいえ音楽家は原価がかかりませんから収入が減るだけで済むので、まだマシかもしれません。家賃や人件費のかかるライブ会場は更につらいのですから。

こういう時、音楽家はレッスンをどうすべきか悩みますよね……。生徒の中には、家にお年寄りがいるなどでお休みされる方もいますし、気にしない人はまったく普通どおりに通ってくださる方もいます。生徒が気にしなくても、僕自身が生徒から感染するリスクもあります。そう思うと、沈静化するまでレッスンも中止にしたほうが良いのかもしれません。

そういえば、2011年の震災の時も自粛・自粛で大変でした。音楽家の生活基盤は本当にもろいのです。こんな時にどうやって生きてゆけば良いのでしょう?

この連載は今、「レッスンでビジネスを構築する」お話をしているところなのですが、一時中断をして、今回は今話題の「テレワーク」について音楽家目線で考えてみたいと思います。


東京店でテレビ通話レッスンをする筆者

人と会わずに音楽家の仕事が成り立つか?

音楽の現場では、必ず人との接触があります。レッスンでは先生と生徒、ライブでは演奏者とお客さん。人と接触すると感染リスクがあるこの状況が、そんな音楽家の弱みを直撃しています。

あれこれと悩んでいたところ、中国の友人が、中国の演奏家や音楽講師がどう対応しているか、教えてくれました。

演奏に関しては、お客さんを入れずにライブ演奏を生配信をしているそうです。日本でもそういったサービスがありますね。視聴者が好きな金額を「投げ銭」として送ってもらうことができます。サービス事業者の手数料を引いた金額が演奏者の収入になるということです。販売する音源があれば、その場でCDを即売したり、デジタル販売サービスに誘導することもできます。

僕自身はライブ配信は試したことがないのでイメージがわきませんが、ライブ会場で感染を広げるリスクがあることを考えれば、ライブに替わる有効な代替案かもしれません。

ただし反対に視聴者の立場だと考えると、集中して見続けることができるだろうか? と思います。

YouTubeの動画はカメラワークがあり、きちんと編集されてテロップも付いて見ていて飽きませんが、生配信は固定カメラで映像効果もテロップもなく地味です。演奏シーンはともかく、トークが洗練されていないと聞くに耐えないかもしれません。

自分が視聴者なら、2時間も見るのはちょっと、つらいです。それに同じ時間に他の似たような番組があれば、視聴者の取り合いになります。もちろん、演奏者とお客さんが相互にやりとりする生配信の良さもあるので、一長一短ですね。

YouTuberとして活動する

確定申告の準備のために口座をチェックすると、昨年2回、Googleから入金があったことに気が付きました。僕は個人のと店のと2つのYouTubeチャンネルを持っていて、これは個人で運営しているほうの広告収入でした。合わせて16,000円くらいです。

個人のチャンネルはたまにレッスン動画や演奏動画を投稿するくらい。あまり熱心に活動はしておらず、登録者数は3000人程度と、人気があるとは言えないチャンネルです。ですから期待をしていなかったのに、それなりの金額をいただけるものなんだなあと嬉しかったです。もっとも、僕のチャンネルは編集を人に頼んでいるので、この広告収入は編集料を差し引くとランチが食べられる程度のものです。

同じフルート奏者や音楽家で毎日毎週のように動画を投稿している方もいますし、中には大人気の方もいるので、僕の広告収入を基準に考えると相当稼いでいるでしょうね。今の感染症のことが起きる前から、副業としてYouTubeは人気がありましたが、人と接触しないで稼ぐ方法としては、音楽家にとって強力な手段です。

ただし、広告を出せるようになるまでチャンネルを成長させないといけないことや、広告収入が動画よりも遅れて振り込まれてくるので、今回の事態に今からYouTubeで対応することはできませんが、動画は長い期間、広告収入を稼ぎ出す資産になりますから、長期計画で今から始めるのは、良いと思います。
特に時事問題やビジネス系、流行を追うチャンネルとは異なり、レッスン動画や演奏動画は古びることがないのが強みです。YouTubeについては、また後日、取り上げて書いてみたいと思います。

テレビ通話のレッスンをする人も

中国の音楽講師は、テレビ通話を使った遠隔レッスンに切り替えているようです。さすがIT先進国ですね。日本でも、もうずっと前からSkypeを使ったレッスンが行われていますが、まだまだ一般的とは言えません。

僕は10年くらい前から数年間、台湾にいる生徒をSkypeを使って教えていました。レッスン料は事前にPayPalで受け取っていました。

Skypeはタイムラグがあります。語学レッスンでは二人が同時に話すことがないので問題になりませんが、音楽は合奏することが大事なので、これは最大の難点でした。お互い順番に演奏を見せあう形で行いました。また通信が途切れがちで、それもストレスでした。今はZoomなどもっと性能のよいツールがありますし、5Gになればタイムラグの問題は解決するので、もうじき日本でも普及し始めるのではないかと思います。

しかし僕にとってはあくまでも対面レッスンが一番で、テレビ通話のレッスンは遠方の生徒さんがどうしても必要だというときだけ対応しています。講師にとってもそれなりにストレスになりますからね。

現在は僕はレッスンそのものを減らしているので、テレビ通話でのレッスンは行っておりませんが、今回の事態を受けて外出を控えている生徒さんのために、久しぶりにテレビ通話レッスンをしました。

ピンチをチャンスに変える

今回は、新型肺炎をきっかけに音楽家もリモートワークをしてみよう! というテーマで、ネットを使った稼ぎ方について、3つご紹介しました。これ以外にもたくさんの方法がありますので、ぜひ皆さんも知恵をしぼってこの危機を乗り切りましょう!
案外、これがきっかけでこれまでと違うサービスが生まれて、新型肺炎が収まったあとにも使える強力な商品がサービスが生まれるかもしれません。

次回は、またレッスンのお話に戻ります。

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