ゆっけ

「きものシェアクローゼット&サロン 水端」店主。企画会社、老舗呉服店を経て水端をオープン。洋装mix、ユニセックスきものなどルールにとらわれないスタイリングを得意とする。 今の暮らしに馴染む、普段のお出かけをもっと楽しくするきものの魅力を発信します。

知ったらハマる、羽織の世界

羽織の季節です

日ごとに春めいてきて、コートがいらない日が増えてきました。これからの季節、羽織が出番を迎えます。

男性のきものにとって羽織は洋服でいうところの「ジャケット」で、ある程度きちんとした場には欠かせないもの。ですが女性にとってはお茶席など特別な場を除いてはカーディガン感覚で選べるおしゃれアイテムなんです。

今日は着物や帯とのコーディネートだけでなく小物づかいや丈バランスなど、実は奥深い羽織の魅力をご紹介します!

photo by Yuji Otsubo

そもそも羽織ってどうやって着るの?

一見着物と似た形をしていますが、羽織は前を閉めずに羽織紐と呼ばれる紐で結んで着ます。ハッピに紐がついたような見た目です。男性も女性もほぼ同じ仕立てで、羽織の前の隙間から着物と帯が覗く形になります。

羽織紐は結んで使うものがベーシックですが、多くの場合付け替えられるようになっていて、ビーズやチェーン、レザー、レースなど様々なタイプが販売されているのでアクセサリー感覚で付け替えて遊ぶこともできます。

 

着物×帯×羽織+小物でコーディネートせよ!

羽織が加わるとコーディネートの幅はぐんと広がります。反対にアイテムが増える分複雑になるともいえるので慣れが必要です。

羽織を含めたコーディネートのポイントをご紹介します。

①「羽織を着る前提」で、着物と帯を選ぶ

とってもシンプルですが重要なポイントです。

羽織ものだから着付けをしてから最後に選べばいいや…と後回しにしてしまうと、いざ羽織を選ぼうと思ったときにどれもしっくりこない!という落とし穴に陥りがち(私も何回か落ちてます…)。まず着物・帯・羽織の3点から選び、着付けをしながら小物で調整するのがおすすめです。

 

②「足し算」または「引き算」で考える

足し算とはアイテム数に従って色柄を足していくこと。アイテムが増えるとなると足し算をしがちですが、実はビギナーさんには「引き算」の方が簡単なんです。

たとえば、このコーデ。この日はアンティークの羽織に合わせて帯もアンティークのビビッドなものを選んでいました。どちらも色味が強いので、そこへ反対色などの着物を合わせるのはかなりの上級テクです。そこで、無地感覚のシンプルな大島紬をチョイス。ハンサムな印象の大島紬がビビッドな色合いを落ち着けてくれ、派手めの羽織も着やすくなります。

手持ちの着物が手軽にイメチェンできる!

お客様からしばしばお聞きするのが「昔買った着物、気に入っているけれど今の自分には派手すぎる気がして手がでにくくなってしまった…」というご相談。そんなお悩みも羽織で解決できます!

たとえば華やかなピンクの着物にチョコレート色の羽織を合わせると、甘さは残しつつシックな印象になってぐっと着やすくなります。↓のコーディネートはパステルカラー同士の組み合わせではありますが、私にとってハードルの高いピンクの着物に着慣れたブルー系の羽織を合わせることで着やすくアレンジしたコーディネートです。

photo by Yuji Otsubo

足長効果の羽織orヒップをカバーする長羽織

羽織の意外な効果といえば、スタイルアップもできてしまうこと。羽織の丈は大きく2種類あり、一般的に「羽織」といえば膝上までの長さ、「長羽織(ながばおり)」は膝下まで覆うロング丈です。

大正~昭和初期頃に流行した長羽織がふたたび人気を集めているのがここ数年の傾向。長羽織は特に後ろ姿が美しく、気になるヒップ周りをカバーしてくれるのが最大のメリット。また裾すぼまりが美しく見えやすいという効果もあります。

画像はふりふオンラインショップより。クリックでジャンプします

一方、羽織のメリットは長羽織と比べて下半身が出るので足が長く見えること。印象も軽やかになります。

photo by Yuji Otsubo

他にも羽織と長羽織の中間のセミロング丈などもあるので、ご自身の身長や体型に合わせてベストスタイルを見つけてみてください。

 

羽織の楽しみ方を覚えると、着こなしの幅は一気に広がります。

まずは使いやすい羽織を2着ほど持たれるのがいいと思います。引き算に使えるシックなものと、足し算用の華やかなもの。今回は詳しく書きませんでしたが(沼が深いので…)、羽織紐のアレンジも楽しいので慣れてきたらぜひ挑戦してみてください!