蔵光で乾杯

10月17日(日)カーネギーホールコンサート当日を迎えた。早朝4時起床。正確には、寝付けなかっただけ(笑)。まずは溜まっている洗濯をした。それから5時55分(GOGOGO)まで、三味線の稽古で縁起を担ぐ。大舞台の当日だが、大切なことは普段通りの生活、普段通りの呼吸をすることである。普段通りに洗濯をして、普段通りに朝ごはん(コシヒカリ新米、納豆、味噌汁)を食べる。シャワーを浴びて、朝のルーティン完了。

9時にカーネギーホール裏口から一番乗りをして、まだ静けさが残るステージへ向かう。早速三味線を取り出して、音チェック。とても良い響きだ。オープニングの独奏を入念にチェックする。コンサートで一番大切なのは、オープニングの出だしである。この1曲目がうまくいくと波に乗れる。続いて、竹育との津軽あいや節。先生もとても柔らかい音を奏でている。3、4曲目は、パーカッショニスト和田啓さんとのコラボ。スチールドラムとの相性は抜群で、色鮮やかな音たちが、まだ観客のいない会場を埋め尽くす。

ジャズ界のレジェンドと音楽の殿堂で共演

いよいよ10時30分過ぎに、巨匠ロン・カーターさんが会場へ。タキシード姿のその出で立ちは、静かでありながら圧倒的なオーラを放っていた。これぞマエストロ。

ロンさんにご挨拶をして、いざリハーサル。まずは、荒城の月から。ピアノに山野内大使を迎え、3人でのセッション。心地よいベース音が、荒城の月に深みを与える。山野内大使のソロパートは、とても軽快なアドリブ演奏であった。そして、今回のコンサートのメインとも言うべきオリジナル曲「Tightrope」(タイトロープ)だ。この曲は、三味線とベースのために作られた言わば「協奏曲」である。即興要素が多いこの曲は、それだけ難易度が高い。ロンさんの歩くように刻むウォーキングベースのラインに、三味線の音を入れていく。難易度が高く神経を使うのは確かだったが、とにかくとても”気持ち良い”時間だった。

さあ、いよいよ本番がスタート。

提供:GION氏(写真家)

ゆっくり、ゆっくり____。そんなことをイメージしての三味線じょんから。すこし丁寧に行きすぎてしまったが、次の津軽よされ節が激しいので、その2曲の連続演奏はコントラストがはっきりしていて、聴きごたえがあったと思う。タイトロープの演奏で最高潮となり、客席は圧巻のスタンディングオベーション。

提供:GION氏(写真家)

ロンさんが最後のカーテンコールで再登場し、会場の盛り上がりはもの凄いことになった。自分はとんでもない場所にいる。三味線とベースの未知の融合は、想像をはるかに超える大きな軌跡を生んだ。全身に刻まれたこの歓声を一生涯忘れることはないだろう。

提供:GION氏(写真家)

間違いなく2019年のカーネギーホールコンサートを超えていた。スタッフ、出演者、全ての人の、苦境からのまさに“反”の力がもたらした結果だと思う。感謝の想いでいっぱいだ。ありがとう、ありがとう。

ハレの日

コンサートの打ち上げは、カーネギーホールより程近いエンパイア・ステーキハウスで、エグゼクティブプロデューサー大坪賢次会長のオーガナイズで、盛大に開催された。

提供:三浦良一氏(週刊NY生活)

ロンさんが菊水酒造の法被を着て、人生初の鏡割りに挑戦。子供のような表情を浮かべながら、樽の板を、3、2、1、よいしょ!!で大盛り上がり。初めて手にした木槌が気に入って、何度も板を叩くロンさんがかわいかった。

乾杯酒は、菊水酒造の最高酒、純米大吟醸「蔵光」であった。「蔵光」が誕生したのは、2012年。ハレの日、人生最良の日を迎えるときにふさわしい酒をつくろうというところから始まった最高峰のお酒だ。ロンドン酒チャレンジ2020でプラチナ賞を受賞している。まさに今日こそそのハレの日にふさわしい。ロンさんが非常においしいと気に入られていたので、サプライズでプレゼントした。ロンさんと史佳で、コマーシャル出来るよ。ベースでワンフレーズ、そして三味線でワンフレーズ、盃で乾杯。もうその絵面が想像できる。絶対かっこいい。

蔵光&ロン・カーター。

世界を照らす、頂点の輝きにふさわしい。

味わいは高貴でありながら、自然体で決して奢らず、圧倒的オーラで世界中の人々に感動を与え続ける__。

史佳は、まだまだ新酒。志は高い方がいい。蔵光、ロンさんの領域目指して、磨く。さらに磨く。一切の妥協を許さず、これ以上はもうあり得ないという究極を目指して。そして私もいつも誰かの人生で最高の日を照らす光となりたい。

今日からまた一歩ずつ、精進していこう__。

□ ANOTHER STORY

Saki Nakui

hakko-bunka

SHINGO KURONO

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