hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

2年待ちのキャンピングカー「テントむし」がついに納車。全国に行商に行きます!

国内で唯一のケルト音楽専門の楽器店を2店舗経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では、私のようなスモールビジネスの経営に興味がある方向けに、私の経験やアイデアをお伝えしています。

すっかり秋が深まりました。秋は連休が多く、山の紅葉が美しい季節。紅葉狩りに温泉にと、出かけたくなりますね。今回は、そんな旅とビジネスというテーマで、最近私が手に入れたキャンピングカーをご紹介します。

初のマイカーはキャンピングカー「テントむし」

私は40代になりますが、これまで車を持ったことがありません。初のマイカーが、キャンピングカーなのです。

独身であることもありますが、公共交通機関が発達した都市圏にいると、そもそも車の必要性をあまり感じません。私のような音楽を仕事にする人間でもコントラバスやパーカッションなど大きな楽器は車が必要ですが、私はフルート奏者ですのでリュック一つでどこへでも出かけることができます。都市圏では駐車場の問題もありますし、事故のリスクもあり、税金やガソリン代など維持費も負担になります。そのため車を持つことには慎重でした。

そんな私でも車っていいかも……と思ったのが、キャンピングカーです。コロナ禍の今はキャンプやキャンピングカーの人気がさらに高まっているそうですが、私がキャンピングカーに注目したのは今から3年ほど前。予算を決め、何社かのメーカーにしぼり、キャンピングカー・フェアに行って社長から直接話を聞き購入の決断をしたのが、鹿児島県のガレージ「バンショップ・ミカミ」が制作販売している「テントむし」です。納期が2年という長い待ち時間を経て、9月にようやく納車されました。

キャンピングカーがほしかった理由

キャンピングカーといえば「お金持ちの道楽」「リタイアした高齢者の趣味」のように思われるかもしれませんが、私はいたって真剣にビジネスの道具として価値があると考えました。

まず経費の削減です。

音楽家として全国各地に出張演奏に行くと、宿泊の問題が発生します。ビジネスホテル代を出してくれるような予算があるコンサートはまれで、たいてい宿泊費は自腹です。友人知人の主催公演だとご自宅に泊めていただくこともあるのですが、気を遣いますし、深夜まで語らって体調を崩す原因にもなります。そんなときキャンピングカーがあれば、呼ぶほうも私達の宿泊の心配をする必要がありませんし、車内で調理ができますから外食も減って経費削減にもなります。キャンピングカーの購入費用が高くても、10年くらい乗って全国に出張演奏をしたら十分元が取れるのではないかと思いました。

次に移動店舗としての活用です。

私の楽器店の実店舗は東京と京都にあり、お盆休みなどを利用して遠方からもお客様が来ます。しかし気軽に旅行ができずご来店が難しい方もいます。そんな方のために自分から楽器を積んで出向いて行けば喜んでもらえるかもしれません。

そしてレッスン場所としての活用です。

旅先でも私から笛を習いたいというご要望をもらうことが多々ありますが、問題になるのが会場です。貸しスタジオは費用が高く、カラオケボックスを利用したこともあります。キャンピングカーなら対面で座りながらレッスンができます。

そしてブランディングです。テントむしは街で見るのはレアで、可愛らしい外見が目立ちます。車体にステッカーなどでロゴをつければ、走る看板。街で見かけた人がホームページを検索してくれるかもしれません。また、あのキャンピングカーのお店!と印象にも残ります。

最後にモバイルオフィスとしての活用です。

コロナ禍でリモートワークやモバイル・オフィスの需要は高まっていますが、問題は静かな環境と電源やネットワークです。キャンピングカーなら場所を選ばず駐車したところがオフィスです。車内には100VのコンセントがありPCの充電ができますし、スマホからのテザリングやモバイルWifiを使えば家と同じ環境を再現できます。

もちろん、私が旅行好きで日本中を旅してみたいという願望もありました。上記はすべて後付けで、これが一番の理由だということも述べておくべきでしょう。

「テントむし」はこんな車


キャンピングカーといっても多種多様です。座席を組み替えてフルフラットのベッドにするものから備え付けのベッドがあるもの、キッチンやトイレなど家と同じ機能を持つものなど、車体の大きさや車種にもたくさんの選択肢があります。高いものだとバスと同じような大型車で、数千万円というものもあります。

その中で最近人気を集めているのはいわゆる「軽キャン」。軽自動車をベースに改造したキャンピングカーです。特徴は、とにかく安くて手軽ということ。車両取得費用が300万円程度から、そして軽自動車ですから維持費も安いのです。若い方でも手の届く価格帯で、駐車場所を選ばず、日頃の街乗りにも使えることから人気が高まっています。

私が購入した「テントむし」はそんな軽キャンパーで、ベース車体はダイハツのハイゼットトラック。農作業などで大活躍する軽トラです。これを改造してキャビンを載せており、おしゃれな見た目のため軽トラだとはわからない方もいることでしょう。

シートは前に2人、キャビンに2人で定員は合計4人です。キャビンには小さなギャレー(シンク)、テーブルがあり、車内で調理することも可能です。寝るときは前の座席を倒してシートを組み替えるとフルフラットのベッドを作ることができます。また、ポップアップ・ルーフになっていて、屋根を展開して2階のベッドを作ると、大人なら2人、子供2人を合わせて4人まで寝ることもできます。

テントむしにはたくさんのオプションが用意されています。

私はハープ奏者と演奏活動をしているので、大型荷物の積み下ろしができるように後部に大きなハッチを取り付けました。同じような車を販売しているメーカーが日本には少なくとも3社あるのですが、これができるのはテントむしだけでした。それがテントむしを選んだ理由です。このハッチは買い物の際の積み下ろしにも便利で、選んで大正解でした。

また車の横にはオーニング(タープ)を取り付けました。普段は収納していますが、車を停めて路上演奏をしたり、お店を広げるときに便利だと考えました。

テントむしを選んだ理由のもうひとつは、私の和歌山県の家へと続く細道は軽トラ程度の小さな車幅の車しか通れなかったからなのです。

初出店しました!

納車されるまでの2年間、あちこちでキャンピングカーのことを話題にしていたため周りでも期待が高まっていたようです。納車日が決まるや岐阜県各務原市で開催された「マーケット日和」という屋外イベントの主催者から声をかけていただき、先日11月3日に初出店をしてきました。

このイベントは都市公園を利用し、雑貨店などの出店やコンサートが催され、毎回数千人の入場者を見込んでいます。私が出店したのは2日の期間のうち1日です。当日は秋晴れに恵まれ、朝から大勢の来場者で賑わいました。

私にとっては未経験のキャンピングカーでの出店。ケルト音楽は認知度が低いし、珍しい楽器ばかりだからそんなに売れないだろうと予想していました。売れなくてもお店のパンフレットを配ってお店の存在をアピールできれば良いという気構えで参加しました。

しかし開場すぐに次々とお客様が当店に集まり、オープンの10時から閉会の16時までの6時間、座る暇もないほど忙しくなりました。おかげで1500円のティン・ホイッスルを40本完売するという記録を作ることができました。これは、音楽家である私自身が笛を実演して見せたことも大きかったかと思います。

初出店のため陳列什器やオーナメントも揃っておらず、その場で色を塗っただけの即席の看板で、他の店舗に比べて地味なお店だったと思いますが、雑貨店やアパレル店の中でケルト音楽のお店はユニークな存在でした。

この日はメイン・ステージに人気アイリッシュ・バンドtricolorが出演していたり、来場者の客層が若いファミリー層だったりと好条件がたまたま重なったこともありましたが、行商は人気が出るかもしれない、と自信をつかんだ経験でした。

夢は日本全国の市町村を周り楽器を販売すること

納車から2ヶ月が経ちました。可愛らしく目立つこの車に乗っていると、街ゆく人々の視線を感じます。駐車していると話しかけられることも度々ありました。日頃は買い物や生徒さんの送り迎えにも利用しており、街乗りするには大げさなキャンピングカーでなくこの車で良かったと思っています。

この車で、これから10年かけて日本全国の全市区町村を回ってケルト音楽を広め、地域の人々と交流したいというのが私の40代の夢です。日本は小さな島国だとは言っても、すべての場所を回るには広すぎます。1つの県に2週間月滞在する旅を年2回、それを10年とちょっと続けて全国を回ろうと思っています。

これから、そんな旅の様子もお伝えできればと思っています。