史佳 SAKE PROJECT -幻の酒米を前に三味線を奏でるー

5月7日の人生初の田植えダイビングから、早3週間。酒米菊水は、無事に根が付いたようである。
5月31日に打ち合わせと苗に三味線の音を聴かせるため、再び菊水酒造を訪れた。
天気はあいにくの曇り空。風も強く、今にも雨が降り出しそうである。

苗が風で揺れる中、三味線演奏を始めた。思いの外、外の演奏にも関わらず響いている。
向かいの菊水本社社屋にまで届いているようで、会議中にも関わらず、ブラインド越しに社員の方が覗いてくれていた(笑)。土手が田の周囲を囲むような形になっているため、この絶妙な地形が、音響反射板の役割を果たしているのだろう。とても響きが心地よい。
やはり、コンサートホールで演奏するのも良いが、このような大自然と三味線が一体となる場所に身を置くのは、希少で格別である。三味線はやはり、自然との共生の中で発展してきたことを改めて感じる瞬間であった。


実はこの日は、もう一つ楽しみがあった。菊水酒造の皆様との懇親会である。懇親会は新発田牛などの旬の厳選食材と、菊水のお酒が楽しめる新発田にある”ついしん手紙”というお店で、開かれた。今宵初参戦するのは、清酒専門評価者という凄いスキルをお持ちの、研究開発部長である。おいしい料理と菊水のお酒を飲みながら、史佳オリジナル酒をどのような輪郭の味にしていくのか、今後のアクションの核となる有意義な時間を過ごした。


今宵頂いたお酒は、まずは、酒米菊水で醸した純米大吟醸。実は、酒米菊水は一度途絶えてしまった幻の酒米で、わずか25粒の種籾から奇跡の復活を遂げたという稀有な歴史をもつ。常温で頂いたのだが、香りは品よく抑え気味でありながら、爽やかな香り立ちである。香りをあえて抑えている理由があるのだろうと思いながら、ゆっくりと口に含める。舌の上で、辛口の味わいが広がるも、角のない柔らかい風味が印象的だ。

常温ということもあってか、とろっとした舌ざわりで、口の中で新発田牛と融合した瞬間ノックアウト。やはり、料理と楽しむなら香りは控えめで、絶対的に辛口がいい。せっかくなので飲み比べを・・ということで、続いて“無冠帝”を注文した。純米大吟醸よりやや甘く感じたのだが、辛さとしては、“無冠帝”の方が辛口傾向のようである。

日本酒は、常温、冷酒、燗酒・・・と温度によって呼び名も味わいも変わる不思議なお酒であり、魅力の一つである。そんなことを改めて感じながら、気が付けば完飲していた。この有意義な会議の結果、史佳オリジナル酒は、酒米菊水純米大吟醸のような味わいの方向性で進めていくことに決まった。奇跡の復活を遂げた幻の酒米菊水と、自分自身がリンクした気がした。

この幻の酒米に三味線の音色を聴かせ、ほかの酒米では出せない唯一無二の味わいの“史佳の酒”が完成するまで、一体どんな軌跡を辿るのか、私自身も本当に楽しみである。
ところで、この有意義な最高の打ち合わせ懇親会は、もう少し頻度をあげたいなぁ__。

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