ないと困るもの

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salonという場所

歳をとって「ひとり時間」が多くなり、ご飯やお酒、ライブや映画、ひとり旅もどんどん楽しめる。

むしろ、ひとりの方が好みなのかもしれない。

でも、時々、集団を欲する。

私がふらっと行く場所には、大抵、面白すぎる面子が集まっていて、
年齢も趣味も職業もまったく共通点がなさそうだけど、なにか「ネタ」が転がっている魅力的な空間を、私は勝手に「salon」と呼んでいる。
フランスでは、貴族の邸宅に文化人や作家らを招いて、知的な会話を楽しむ、社交界をsalonと呼んでいる。

三茶で焼き鳥とグレープフルーツサワーを飲んで、未来を語り合ったりしていると、となりのおじさんが話に割り込んできて、
家に帰っても寂しいからココで飲んでいるのだろう?と決めつけられてしまったけど、確かに、深夜、恋しい人に酔っぱらって電話をしてしまった。

お洒落なフランス食堂でワインを嗜んでいたって、何故か、山形人が集まってきてしまい、訛り炸裂で、山形の情報交換している。
お洒落なフランス料理のお店なのに。

渋谷のどうげんという焼肉屋には、定期的にクセのある最高の友達と行くのだけれど、大した会話はない。ただ、肉の脂が燃え上がる炎を見ているだけ。肉の焼き奉行の指示で食する。もれなく、面白い店主のトークのオンパレードが付く。でも、この肉の社交場は、一生通い続けたいと思う、もちろんこのメンバーで。

去年まで、あるコーヒー屋で働いていて、カウンターのお客同士が、なにかしらの話題で盛り上がっていた。私は、少しの橋渡しと相づちだけ。コーヒーをドリップしているだけで、興味深いテーマが毎晩繰り広げられていた。そこで出会った方々や思い出が、私の人生の最高の財産になっている。

私はそんな集いの場は、すべて「salon」だと思う。私はひとりも好きだが、東京人が集うそんな「salon」が好きだ。ないと困る。私の夢は、飾らない自由な会話が飛び交う「salon」という場所を持つことだ。

 

 

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