半径2メートル

三軒茶屋の駅の改札を越えて、渋谷方向のホームに降りるエスカレーターの前におばあちゃんが立っていた。

杖をつき、きちんとしたきれいな服を着た方だった。
どう見てもなにか困っている感じだ。

その横をスマホの画面を見ながらさささっと通り過ぎてゆくひとびと。

「どうしました?」と聞くと「表参道こっちですかね?」ということだったので、「こっちに乗って、3つめですよ。」と答えた。

みんな忙しいのはわかってる。
自分のいる半径数メートルの世界よりも、右手に持った画面の向こう側の世界をチェックしないといけないのか。

手に届かないような遠くの世界よりも、手がとどく世界をみたいと思った。

Shingo Kurono

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