No title.

小さい頃、雨が降ると300円ずつポケットに入れてもらい
兄弟三人手を繋いで近くの商店にお菓子を買いに行った。
大きめだったカッパと赤い長靴を鎧のようにして。

帰って来るともちろんびしょ濡れで、
母親は「よく行って来たねー」と嬉しそうにタオルで
私たちの頭をくしゃくしゃに拭きながら道のりについて毎度聞いてくる。
弟たちは夢中で喋る。大きな水溜りをジャンプしたとか、カタツムリがいたとか。
一番上の私が話を聞いてもらえるのは最後だ。
だから決まって私は先に父に報告をした。
2人の手は離さなかったと伝えると
「よくやった」とくしゃくしゃに頭を撫でてくれた。
たった数十分の冒険でも
私たちはそれぞれ偉業を成し遂げた気分になっていた。

あまりにざあざあ降るから窓に向かってシャッターを切ってみると、
その冒険の旅の思い出がそっと浮かんでにやけた。

いつの間になくなってしまった旅だけれど
最も好きだった時間かもしれないな。

 

Masako.

ps 台風と大雨,お気をつけて。

□ ANOTHER STORY

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