Yuka Koishi

イラストレーター、キャンプコーディネイター。 焚き火とお酒とカレー好き。 著書に「そうだ、キャンプ行こう!」(スタンダーズ)、「カメラ、はじめます!」(サンクチュアリ出版)、「日本酒語辞典」(誠文堂新光社) がある。

キャンプコーディネイターという仕事① 肩書きを作ること

わたしの肩書きは「キャンプコーディネイター、イラストレーター」だ。

よくはじめて会った人と名刺を交換すると
「キャンプ…コーディネイター?っていう仕事があるんですね!」
と言われることがある。

“キャンプコーディネイター”という肩書きをつけた理由

この仕事をはじめたころ、「キャンプのことを発信したりすることに対して名前をつけたらどうだ」と言われたときにつけたのが”アウトドアコーディネイター”。しかしアウトドアは範囲が広すぎるので絞って“キャンプコーディネイター”という名前にした。

ただ、これはわたしが勝手に名前をつけただけなので、資格も何もない。ただ単にわたしが発信したいキャンプというものがあって、よりいろんな方に(特に女性に)“キャンプがある人生”というものを知ってもらいたいために、肩書きをつけただけ。

だから、その当時(今はいるのかわからないけれども)おそらくその肩書きだった女性(もしくは男性も)誰もいなかった。

つまり自分だけの自分の肩書きをつけた

奇をてらったわけではない。例えばキャンプやBBQの資格をとろうとしたら、日本オートキャンプ協会が認定する「キャンプインストラクター」や日本BBQ協会が審査をする「BBQ検定」などもある。しっかりキャンプを仕事にするのであれば、もちろんそのような認定を受けるほうが周りへの理解や信頼度が高いと思う。

ただわたしはそういった資格もとっておらず、そしてなぜかとろうとすることもしなかった。おそらくわたしはわたしなりのキャンプについての考えがあったのと、単に資格をとる(正式な手続きとか)のが苦手だったのだ。

自称キャンプコーディネイターのわたしの最初の数年は、おそらく冷ややかな目線で見てる人もいたと思う。若娘が特にキャンプの何も知らないのに、コーディネイターを名乗るなんて、そして女性だから目立ったことでウェブやテレビやラジオに出させてもらっていたことに対して不愉快なひとも、わたしの知らないところではもしかしたらいたかもしれない。

だけど、そんなわたしの暴走を咎める人はほとんど見受けられなかった。特に業界に携わる人たちはむしろ応援してくれた人が多かった。そのことは本当に今でもありがたく思っているし、わたしの活動によって少しでも恩返しができるようになったらいいなというのが、わたしの働く意欲の根源となっている。


トントン拍子をこわがるより大切なこと

そういうわけで、テントをデザインする機会があったり、イベントに出演させてもらったり、テレビでキャンプの魅力を伝えたりすることで、「キャンプコーディネイターのこいしゆうか」が少しずつ板についてきたのだ。これはわたしの努力というより、何か大きな縁みたいなものに引っ張られるようにここにいるように思う。

少し話は変わるが、わたしが好きな漫画家の作品で、主人公の女の子が「トントン拍子にいくのがこわい」と先輩に相談するシーンがある。その先輩は何を言ってんの!?ってばかりに「それは自分に向いているからだよ!そういうときはトントン拍子にいくことがある。大事なのはそれに乗ってチャンスを逃さないことだよ」というようなシーンがあった。

勢いがあるとき、人はふっと心配になる。わたしも「こんな、何か大きなものに流されるようでいいのかなぁ」「もしも需要がなくなって、5年後のわたしはどうなってるんだろう。」と悩むことがある。キャンプの仕事がますます盛り上がっている近年もそうだ。

でも、そのときはその言葉を思い出す。何か大きなものに引っ張られる感覚に乗ること、チャンスを逃さないこと。もちろん調子に乗ることではない。いや、乗ってもいい。そこに「自分」を失わなければ、そこに「思いやり」を失わなければ。

こうやって書いていて思い出したことがある。
今まで応援してくれた人ばかりだったといったけど、この仕事をはじめたばかりの頃、一番近くにいた友人が、わたしに対して少しだけ嫌味なのか褒め言葉なのかわからないことを言った言葉

「あなたはノリと勢いで生きてるよね」

当時はとてもショックだった。冷たく言い放たれたせいもあって悪口なのかと思った。(実際そうなんだろうけど)しかしずっと忘れられない、大事な言葉として胸に刻んでいる。

ノリと勢い(もしくは違う何かもあってほしいけど)でやってきた、キャンプコーディネイターの仕事のこと、ここでもう少し詳しく話をしていきたいと思う。