僕はそのとき、今より幾分かは細くて、少し長い髪の上に黒いニット帽を被っていて、ぱらぱらと雨の降り出した高速道路を、親父の運転する車の後部座席に座って、中部国際空港に向かっていた。
なにかある時はいつもだいたい雨で、「やっぱり降ったねぇ。」なんて笑いながら、フロントガラスを左右に横切るワイパーを眺めていた。
4階建ての駐車場に車を止めて、先週買ったばかりのスーツケースと、これもまた先週野球部の仲間にもらったばかりの折りたたみ自転車(色は黒い艶あり塗装のものだった。)が入ったオレンジ色のバッグを担いで、カウンターに並び、パスポートを取り出して、荷物を預ける。
「こちらのバッグは重量オーバーなので、追加料金になりますがよろしいでしょうか?」
「え、だいたいいくらになりますか?」
「7〜8万円になりますね。」
「…。」
結局折りたたみ自転車は置いていく事にして、その艶あり黒の、ハンドルのクロムがピカピカに光った自転車は、親父の愛車になった。
もうすぐ友人がニュージーランドにワーホリに旅立つそうで、自分がパリにいったのはもう10年前の話なんだ、と思い返していた。現地でいろんな仲間に出会って、今は一緒に仕事をしたりする間柄になった友人もいる。
海外に出たらなにかが変わる!なんてことをスローガンのように言うつもりもないし、どこにいたって何かを変えようとすれば変わるし、大なり小なり変化はある。そもそも大事なのは変わっていくことと、変わらずにいること、とマッキーが言っていた。
日本で何不自由無く暮らしていると、やっぱり現地はだいぶん不自由で、そのなかでもう一度気づく生活があったり、そこである出逢いと別れや、恋だとか、新しい楽しみかたを知ったり、きっとかけがえのない時間が待っているんだろうと思う。
無事に旅立って、素敵な時間を過ごして来て欲しいなぁと思います。
いいな。ニュージーランド。
Shingo