史佳

新潟出身の三味線プレイヤー。9歳より津軽三味線の師匠であり母でもある高橋竹育より三味線を習い始め 2000年よりプロ活動をスタート。新潟を拠点に国内外で演奏活動を行ってきた。古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しいニッポンの音楽を目指し、現在、ニューヨークを拠点に移し三味線芸術の新しい境地を開拓している。 YouTube公式チャンネル :https://www.youtube.com/channel/UCDcEsCsEsKHs6Oyv-i83Nfw

ラッセル・マローン ありがとう

ロン・カーター氏率いるゴールデン・ストライカー・トリオが、2年ぶりに来日した。
これは絶対に行かねばと、ブルーノート東京での4日間公演(8月20日〜23日)のうち、8月21日の公演に足を運んだ。

思い起こせば、2年前の同じ時期に、新潟でゴールデン・ストライカー・トリオを招き公演を行った。
あの感動はいまだに鮮明に私の心に刻まれている。
久しぶりの再会を楽しみにしながら、開演を待つ。

そしていよいよ幕が開くと、盛大な拍手の中、3人が登場した。
ロンさんは2年前は杖をついていたが、今回は杖なしで軽快な足取りだった。
そして、ギターのラッセル・マローン、ピアノのドナルド・ベガが続く。

当日のセットリストは以下のとおりである。
● Eddie’s Theme
● Laverne Walk
● Candle Light:フューチャーリング Russell
● My Funny Valentine:フューチャーリング Donald
● You Are My Sunshine:Bass solo
● Soft Winds
● There Will Never Be Another You(アンコール)

息の合った素晴らしいパフォーマンスの中、3人それぞれのアドリブ演奏が堪らない。
ラッセルの『Candle Light』は鉄板中の鉄板だが、何度聴いても惚れ込んでしまう。
音の柔らかさと綺麗さには、常に感銘を受ける。

ベガの軽快なピアノソロには、観客も自然とそのリズムに乗り、会場が一体となり素晴らしかった。
ロンさんのベースソロで披露された『You Are My Sunshine』は、途中にバッハの曲が取り入れられた斬新な構成になっている。
ジャンルを超えた音楽の追求を続けてきたからこそのパフォーマンスであった。

アンコール後、ロンさんは画用紙に書かれた言葉を披露。
ラッセルには「moved」、ベガには「amazing」と書かれていた。
ロンさんのお茶目な仕掛けに、会場は笑いに包まれた。
長年、3人で築き上げてきた深い信頼関係が感じられる、素晴らしいステージ演出だった。
お互いを思いやり、演奏を引き立て合う彼らの姿に、チームの素晴らしさを改めて感じた。
終演後、楽屋で久しぶりの再会を喜び合った。

その2日後、ラッセルは60歳で急逝したという知らせが届いた。
突然の訃報を受け入れることができず、深い悲しみが押し寄せ、胸が詰まる思いだった。
彼の最後の演奏を生で聴けたことに感謝している。彼のご冥福を心よりお祈りしたい。

ラッセル、あなたの優しいギターの音色は、私の三味線の指針だよ。ブラザー、ありがとう!