緊急事態における僕の意外な冷静さ
人は突然訪れる危機に対して、意外にも冷静にいられることがある。おそらく防衛本能の一つであろう。もしかしたら「正常性バイアス」というやつかもしれない。結構な転び方で腕もやばそうなのに、一番最初に心配したのが「スマホの画面が割れていないか?」ということだった…。
僕自身もこの時、びっくりするぐらい平静を装っていた。いや、結構このパターンはあんまり慌てない性格なのかもしれない。
振り返ってみれば、22歳の冬。大学の試験の日に、徹夜で勉強して寝ぼけ眼で原付で学校に向かっている最中、僕の前方確認不足により前を走っていたハイエースに思いっきりカマ掘った(追突)ことがある。その時、大通りで僕は激しく転倒し、原付も大破。僕自身も大通りに投げ飛ばされたようになったが、すぐに立ち上がり、原付を道路の橋に寄せて、カマ掘った(追突)ハイエースに謝罪に行ったことがある。今振り返ってもビックリするぐらい冷静な対応だった…。
そんな僕だから、今回の転倒事故の瞬間もかなり冷静だった。今考えたら腕が逆に曲がるという、誰に話しても「うわっ・・・・想像するだけで恐ろしい・・・・」と言われる状態でも冷静だった。
脱臼だったら治せるんじゃないか?
流石に腕が逆になるという、正常の時にはありえない状況に驚きを隠せなかったが、事故直後のアドレナリン大量分泌のせいか、意外と痛みは弱く相変わらず落ち着いていた。
「これ、外れたまんまは嫌だし、とりあえず脱臼なら治せるんじゃない??」
ほら、スポーツとかで肩の脱臼とかよくあるし、癖になっている人もいるみたいだから、きっとどうにかなる!そう思って僕は、肘を通常の曲がる方向に動かしてみた・・・・・
「・・・おっ!ハマった??」
なんと!痛みはあるものの肘が通常の状態に戻ったのだ!しかも指は一応問題なく動くし、痛いけど二の腕も少し曲げられた。
これならなんとかなる・・・であろうと思った僕は、駆け寄ってきた店員さんに取り急ぎ救急車を手配してもらい、救急車が来るまでの間は店内でケータイをいじりながら冷静に待っていた。。。
「僕は骨折なんてしていない。ただただ脱臼しただけだ!だから病院に行って検査してもらっても、脱臼による痛みと打ち身による痛み程度ですぐ済むはずだ!」
そんな甘い考えを持っていた・・・・そう、僕が骨折なんてするわけがないのだ。これまで散々色んなことをやってきたけど、大怪我なんてしてこなかった僕。この歳になってコケて骨折なんて、大して笑えないシナリオライティングなのだよ。
そんなことを考えていると、遠くから救急車のサイレンが・・・いよいよ僕はその直面した現実を突き詰められる時が来たのだ…。肘が逆に曲がって外れて、それを半ば強引に戻すという愚行の審判が下されるわけだ・・・
・・・続く。