少し時代錯誤な話かもしれないけれど、駅やデパートの奥の方に追いやられた喫煙所(うさぎ小屋と言われるが、うさぎに対しても失礼な話だ。そのうちに喫煙所の外から見ると中にいる人に耳がついて見える映像技術が導入されてほしい)で煙草をふかすおじさんは、本当に美味そうに煙草をふかしているなぁと毎回感心する。ふかすというよりも、味わうという方がしっくりくる。
ごそごそと左の胸ポケットから一本を取り出して、とんとんと箱に叩きつけで、口にくわえる。ライターの火をつける時間は短い。チャっと火をつけて煙草の先につけ、ライターはすぐにしまう。
そのあとの一口目はくぅぅと口で思い切りよく吸い込み、しばらくの間ははかない。
1本を身体全体で味わっている、まさに至福の時なのだなぁと思う。
JTの広告で「ひとの時を想う」というのがあったけど、まさにそういう時間だ。
その度にパカパカ吸っている自分を改めようと思う。
先日菊水の日本酒文化研究所に伺った時に、煙草のコーナーもあって、昔は煙草を嗜むことが粋だ、という文化だったそうだ。
もはや現代社会では隅っこに追いやられて、そのうちなくなってしまうだろう。
でも隅っこのマイノリティなら、マイノリティらしく、粋でありたいと思う。
マナーとかもね。
ちなみにビールを美味そうに飲むことに関しては自信があります。
Shingo Kurono