嫌だった営業職を初めて面白いと感じた日【営業×お酒(第1回)】

はじめまして。杉本と申します。大学を卒業してから、主に企業向けの営業、すなわち法人営業として仕事をしてきました。

最近では自分のTwitterで #ザ法人営業 をつけて、そこで得た現場の泥臭いノウハウ・あるある・Tipsを発信しています。(よろしければ是非コチラからフォローをお願いします!)

今回ご縁があって菊水酒造さんからこのような機会をいただき、これから何回か「営業×お酒」のエピソードを書いていくことにしました。どうぞよろしくお願いいたします。

■「営業×お酒」といえば

さて、「営業×お酒」というと皆様は色々なイメージがあるかもしれませんが、多くの人が想像するのは「接待」ではないでしょうか。大きな仕事をとろう、ノルマを達成しようとお客様にペコペコして接待をしている営業マンの姿…こんな描写は漫画でもドラマでも頻繁にありますよね。

最近では、あからさまな接待は少なくなった気はしているものの、どうしても買う側の顧客と売る側の営業は「上下」の関係になりがちなもの。企業の大小に関わらず、程度の差こそあれ、顧客に接待する営業のシーンは結構残っていると思います。(私の知り合いの営業からよく聞きます)

まあ接待したら仕事がすぐとれるかというと、現実はそんなに甘くはないのですが…

そもそも私は接待が好きではなかった

今となっては営業職の私ですが、大学を卒業し、大手通信キャリアに内定をもらったとき、実はエンジニアを志望していました。営業にだけは「絶ッッッ対に」なりたくなかったのです。

しかし、新卒研修後に配属が発表されてみると、私は法人営業部。それを言い渡された人事面談後、ガックリきて帰宅したのを今でもはっきりとおぼえています。当時は、人事にも同期入社組にも、誰にも言わなかったのですが、大変に不本意でした。

営業配属が嫌だった理由は、単純に将来的にエンジニアのほうが有望で給料がいいのではないかと思っていたからなのですが、何よりも営業というものは、接待をして客に媚びてお金をもらおうとする、お客様に口八丁手八丁で押し売りしていく、詐欺師みたいな仕事だと思ってました。

とにかく営業が圧倒的に嫌いだったんです。一言でいうと、ダサいし格好悪いし。接待なんて時代遅れの老害がすることだと。今から考えると、本当に酷い印象をもっていました。

そんな私の思いとは裏腹に、配属されたチームはゴリゴリの法人営業のチーム。上司は新卒時代からずっと法人営業をしてきた、まさに「現場のたたき上げ」という存在でした。そして、若手営業だった私は上司から、担当の企業相手に「懇親会」(というが実質は企業が顧客の飲み会代を出す完全な接待です)を設定するよう命じられていました。

ここまでコテコテではないけれども…ザ営業のたたき上げの上司でした。

 

■上司からの一言

私は接待はダサいと思いつつも、お客様とのミーティングの席上、お客様との接待を打診しました。ところが、実際には、お客様をお誘いをしてみても、

「これからは飲み会とかなしで大丈夫ですよ。今回はご遠慮しますので、お気遣いいただかなくとも結構です。ありがとうございます」

というお返事。

なーんだ。お客様側も特に必要ないと言ってきたじゃないか。

接待をして仕事をとるというのはダサいと思っていた私は「そらみたことか」と思いました。もう接待のようなものはお客様も求めてない。課長に伝えて接待なんて悪しき風習は今後は止めにしよう。

「先方も今回は特に飲み会をしなくていいと言ってます。これからは提案内容で勝負しましょう」

すぐに私は上司に伝えました。

すると、上司はたった一言。今でもずっと覚えてる一言をいいました。

「すぎちゃん、その飲み会だけどさ、3回誘った?」

これだけピシャリ。接待の有効性とか反論とか言わせず、一言です。

「いえ、誘ってないですけど…」

「すぎちゃん、人間はね、どんな人でも3回誘われたらなかなか断りにくいものなんだよ。あと○○社(ライバル企業)は賭けてもいいけど、お客さんと絶対に飲み会してるよ」

このときに私は反論できたかもしれないのですが、上司の言葉にひとつの興味を持った部分がありました。

「人間は3回誘えば断れない」

この教科書で習ったことのないような法則。え、本当?課長がいってる珍説でしょ?

でも妙に納得感があって私は何も言えませんでした。

私が新卒で配属されて1年近く立っていましたが、ビジネスが教科書通りにはいかないことを感じ始めていた私は、ビジネスが、というよりも人間が「本当は」どのような力によって動かされているか、それを垣間見れた気がしたんです。

このときはもちろん、まだまだ営業は嫌でした。けれども、人間関係に関する小さな法則を発見するには最高の場かもしれない、という気持ちも芽生えてきました。

■人間を動かす法則

結局のところ、私は最初に「ご遠慮する」と返事されたお客様にその後、3回ほど誘ってみました。そして実際に接待は実現しました。

接待で話したことは正直、今となっては何も覚えていません。話は上司がほとんどしていましたし。ただその接待では顧客は楽しそうで、我が社と顧客は前よりも少し仲良くなったように見えました。(たぶんライバル企業とも仲良くしていたと思いますが)

私が覚えていたことといえば、配属されたときに買った市販の営業のマニュアル本に書いてあった「ビールを注ぐときはビールの銘柄をお客様のほうに向けて注ぐ」だけを意識して注いでまわったことくらいです。

ただ、その後の二次会で私につぶやいた上司の一言は、はっきりと覚えています。

「ねえ、すぎちゃん。重要人物と扱われることを、悪く思う人なんていると思う?」

営業は顧客にモノやサービスを売ってノルマを達成する仕事だと思っていた私が、営業は人間関係を最前線で見て感じられる場所だと気づき、興味をもった瞬間でした。

その後、上司はただ単純に顧客を酒に誘えと言っているわけではなかったこともわかりました。どの人間と仲を深め、ビジネスを創る糸口を見つけて、絡まった部分があればどのように解きほぐしていくか…。しっかりと計算して企業対企業として向き合うべき人間関係(信頼関係)を構築していたことを知りました。

※それ依頼、人間関係にまつわる法則に興味を持ち、いまではTwitterで呟くまでに…

 

■節目節目にはお酒があった

私はとにかく接待をしろ、飲み会をしろ、と言うつもりはありません。むしろ今後、接待をはじめとする飲み会は、コロナの影響もあったことで必要性は今まで以上に見直されると思います。そもそもお酒を飲めない人は無理して飲む必要もないでしょう。

ただ、今回「営業×お酒」をテーマに連載をしていこうと決めて色々と思い出した結果、私が営業としてお客様と接待したとき、上司や先輩から営業訓を賜りながら飲んだとき、同期とバカをしてはしゃいで飲んだとき、壁にあたって一人で悩んでいたとき、社会人になってから仕事の節目節目で飲んでいたお酒が思い出せることに気がつきました。

お酒は人が日常で隠している部分を鮮やかに表出させてくれるし、自分にも向き合わせてくれるんですよね。だからこそ、色々な人とお酒を飲む場を作っては仕事で活用してきたんでしょうね。

これかもお酒と絡めた仕事のエピソードや思ったことを、ゆるゆると書いていきたいと思います。

#ザ法人営業 とお酒のエピソードを、これからもお楽しみに。

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杉本浩一(Koichi Sugimoto)

■通信キャリアにて、ネットワーク・システム・クラウドサービス等大企業向けの法人営業を担当ののち、2014年7月、LINE株式会社へ転職。
■LINE社にて新規事業サービスLINEビジネスコネクトの導入推進を所管。ヤマト運輸との提携やキリン次世代自販機(Tappiness)のプロジェクト企画推進し実現する。
■現在はメルカリにて事業アライアンスに取り組む。
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