投資家としてビジネス起業を支援しました(前編)

本文の要約:
エンジェル投資家としてアイルランド音楽のオンライン楽器レッスンビデオの配信サービスの起業を支援し、今年7月に開業しました。詳しくは公式サイトをご覧ください。https://www.trad-on.com/

 

健康に年越しできれば合格点

こんにちは! 楽器店を経営しているケルトの笛のhataoです。

2020年も終わりが近づいてきましたが、皆さんにとってはどのような一年でしたか?

私はコロナ禍のために大好きな海外旅行ができず、コンサートもほとんどが中止となり、時間があるにも関わらず目標だった本の出版が1冊も達成できず、何をしていたのだろうと思うくらいボーっと過ごしていました……。ニュースで感染状況を見てはソワソワして、予定がなくなっては落ち込んで……と感情的に不安定な一年でした。

それでも春の緊急事態宣言中は和歌山の山小屋に滞在して自然を楽しんだり、夏は札幌の実家で両親と過ごしたり、秋は広島や四国に演奏旅行をしたりと、少なからず良い思い出を作ることができました。あまり生産的な一年ではなかったものの、健康に年を越せたら良しと思っています。

投資家として起業支援しました

そんな2020年のビジネスの上での成果といえば、初めてエンジェル投資家(起業支援をする投資家)として学生の起業を支援したことです。

このお話が出たのは今年3月下旬のことでした。現役大学生の福島開さんから「アイルランド音楽シーンを盛り上げるために、オンライン動画レッスン、レッスン予約、質問箱などを組み合わせたプラットフォームを構築し、特に初心者がアイルランド音楽に導入しやすい環境を作り上げたい」という相談を受けたのです。

最初は資金援助をしてほしいというストレートな依頼ではなく、アドバイスをください程度のニュアンスでした。しかし私としても数年前から同じようにビデオレッスン配信サービスを立ち上げたいと思いながらも技術的なノウハウがないために先送りになっていたので、すぐに資金面でのサポートを申し出て、上限100万円を提案しました。

アイルランド音楽のビデオレッスン配信サービスは10年以上も前から海外に多くの先行サービス例があり、私も利用したことがあります。
伝統音楽のレッスン配信は、流行音楽ではないので内容が古びることがなく、利用者がたとえ少なくても長く売れ続けることができるロングテール的なビジネスモデルです。日本には大都市圏にしかアイルランド音楽の教室がないため、オンライン・レッスンの需要はあると見込んでいました。

福島さんによると、この起業はコロナの需要を狙ってのものではないとのことでしたが、奇しくも春から日本でもコロナ感染が広がり始め、今後は対面レッスンからオンライン・レッスンに切り替える流れが来ると考えていたため、事業を始めるにはちょうどよいタイミングでもありました。

事業内容を明確にするために聞きたいことを箇条書きにして、その翌日にオンラインで面談する約束をしました。私が質問したことは以下です。

・福島さんのシステム・エンジニアとしての能力(開発は一人なのかチームを組むのか)

・実装する機能(ビデオ配信のほか楽譜ダウンロードやチャット機能があるか)

・決済方法(利用する決済サービス、課金方法、入金までのフローや手数料)

・料金体系 (月額課金? 期間は? ビデオ単体を買い取り? コース別に課金?)

・コース内容と学習方法 (講師選び、リアルタイムのレッスンもあるのかなど)

・ローンチまでのスケジュール

・経営体制、予算スケール、利益の分配、会計方法

かつて自分も手を付けようと思っていたビジネスだけに、私もある程度の構想は持っていました。そこで自分の理想のビジネスモデルを伝えつつ、調整を行いました。

資金援助の条件

話し合いの結果まとまった投資条件はおおまかに以下のとおりです。

・私hatao自身が講師として出演するが、講師料を請求しない。

・私hataoは機材費、講師依頼料などの必要経費を全額負担する。

・投資予算は100万円まで。以後は状況を見ながら追加投資を決定する。

・開発者の福島さんは開発費用を請求しない。

・サーバー費用や決済代行費用などのランニング・コストは初期投資額に含めず、月々の収益から支払い、その純利益を二人で分け合う。

コンテンツについては4種類の楽器で10分程度のビデオ講座をコースごとに20本=合計80本のビデオを準備してサービス開始、以後は状況を見ながらビデオを追加します。課金方法は月極のサブスクリプション課金制にすることを提案したのですが、結果的に1回買い切り制となりました。

開発期間3ヶ月でローンチ

各コースの講師の依頼はスムーズに行うことができ、4月から私の東京店などを利用して撮影を開始しました。私自身も当然講師として加わり、6月には編集がすべて終わり、7月下旬からベータ版を公開、その約2週間後に正式リリースとなりました。

https://www.trad-on.com/

リリースにあたっては、開発者の福島さんが自らサービスを紹介しました。

 

広告宣伝は主にTwitterで行いました。Googleなどのオンラインの広告も検討したのですが、費用対効果を考えて見送りました。

紙媒体については、コロナ感染でコンサートなどのイベントが少ないためチラシは配布は有効ではないと考えてリリース時はチラシを作りませんでしたが、その後秋になって私の楽器店のお客様に商品に同封したり日本全国のアイリッシュ・パブに設置していただいたりするために印刷をしました。

リリース後の状況ですが、予想通り飛ぶように売れるということはありませんでしたが、じわじわと売れ続けています。11月には残りの初期投資額を利用して新たにハープ講座を新設しました。来年にかけてさらなるコースの拡張も検討しています。

次回の後編では、ビジネス立ち上げにあたっての問題点についてお話をします。

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