借金してでも起業する? 私が無借金経営にこだわる理由

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店を経営しているケルトの笛のhataoです。

この連載では、私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、起業やビジネスについてのお話をお届けしています。

起業と借金について

起業には元手が必要なのは言うまでもありません。しかし起業したいのに資金がない場合は、商工ローンなどの借金を検討する必要があります。借金をしてでも今すぐ起業すべきか、それとも資金が貯まるまで待つべきか。悩みますね。

実は私は、一度も借金をしたことがありません。親や友人にすら、お金を借りたことはありません。あるとすれば、毎月のクレジット・カードの支払いだけでしょうか。

私はこれまで10年間ビジネスを続けてきましたが、仕入れや開店費用などのまとまった出費も預金で出せる範囲にとどめており、借金をする必要がありませんでした。それを誇りに思う反面、借金してでも手広くやったほうが成功のスピードが早まるのかもしれないと考えたりもします。今回は起業と借金について、改めて考えてみましょう。

借金は怖い?


多くの方は借金と聞けば「怖い」というイメージを持っているのではないでしょうか。ドラマなどで借金取りに追われるイメージを繰り返し見たため、借金が人生の破滅と結びついているからかもしれません。確かに、闇金融にクレジット・カード破産や、失業で住宅ローンの返済が困難になるなど、借金に関する悪いニュースを見ない日はないほどです。

一方で、多くの人が奨学金として学資ローンを組んだり、ローンで自動車や新築住宅を購入していたりと、借金は一般的に広く行われています。

よく「借金には良いものと悪いものがある」と言われるように、買い物や娯楽など刹那的な欲求を満たすだけのために借金をするのと、ビジネスのために投資として借金をするのとは異なります。「借金=怖い」ではなく、その借金が自分からお金を奪うのか、将来より多くのお金とともに戻ってくるのかを考えてすべきでしょう。

多くの企業は銀行からの融資を受けて事業を営んでいます。工場や設備を整えるほどの資金を個人ではまかなえないため、国としても借金を推奨して産業を育成しています。産業は雇用を生み出し、銀行に利益をもたらします。

無借金経営といえば立派なように聞こえますが、銀行に一切借金をしたことがない企業は信頼関係がありませんから、ある程度事業を大きくしていこうと思えば、銀行との付き合い方も学んでいく必要があるのです。

それでも私が借金をしなかった理由


必ずしも借金=悪ではない、と理解してはいたものの、私には借金に対して強い抵抗感がありました。ですから、起業のために借金をするという選択肢はありませんでした。

起業には、借金が必要になる業種とならない業種とがあります。例えばラーメン店を開業する場合、店舗を契約してリフォームをし、厨房設備を入れてアルバイトを雇用して、原材料を仕入れて……と多額の初期投資が必要となりますから、そのすべてを預金でまかなえる人は多くないはずです。

ラーメン屋に限らず製造業、医院、フィットネスジムなどは多額の資金が必要となります。これらの事業は成功すれば速いスピードでお金持ちになれる可能性を秘めていますが、失敗すれば再起不能になるほどの傷を追うかもしれません。

一方で士業と言われる弁護士、会計士、行政書士などは自宅を事務所にできるので初期投資が少なく、ビジネスを小さく始められます。もっとも、これらの資格を取得するためには多額の時間とお金を投資しているはずですので、投資資金の回収が大変である点においては店舗型ビジネスと大きな差がないと言えます。

それらの業種と比較すると、私が営んでいる演奏、レッスン、少額の通信販売という事業であれば初期投資は少なくて済みます。

私は大きなリスクを取りたくなかったので、自分の貯金の範囲でビジネスを始めることにしました。仕入れ以外で投資したものといえば事務用品やパソコン、ホームページのデザイン費用などでしょうか。

起業当初は経済感覚が学生時代とそれほど変わらなかったので、10万円の仕入れをするのも恐ろしかったように覚えています。ですが、楽器は食品のように腐ったりはしませんし、衣服のように流行に遅れることもないので、どんなに時間が経っても売り切ってみせる自信がありました。

不安をよそに、最初の仕入れが売れ、その元手をまた仕入れて、というサイクルを10年繰り返すうちに、雪だるまのように資本が膨らみ、現在のサイズまでビジネスを成長させることができました。

リスクを最小限に抑える

私には、自分の経験から生み出したスモールビジネスを長続きさせるための仕組みがあります。それはリスクを最小限に抑えることです。借金をして大きく始めるのではなく、自分の貯金の範囲内で仕入れをし、小さく始めて大きく育てるのです。

ビジネスには良いときと悪い時が必ずあります。嵐のときは身をかがめて小さくなり嵐が過ぎるのを待つがごとく、家賃や給与などの固定費を普段から削減し、少ない運転資金でビジネスを存続させる環境を作るのです。収益はすべてを再投資せずキャッシュとしてたくわえ、売上がまったく立たなくても一年間は持ちこたえられるように潤沢にキャッシュを用意しましょう。

私のようなやり方では、短期間で大成功はできないかもしれません。しかし自分が管理できるちょうど良いサイズで、着実に一歩ずつ成功の階段を登ることができるはずです。

借金をするかどうか初めて悩んだ


そんな私がいま、初めて借金をするかどうか真剣に悩んでいます。

ビジネスのためではありません。今住んでいる借家を大家さんからとても良い条件で譲っていただけることになったのです。

現在の預金で支払えないわけではない金額ですが、ビジネスの運転資金が少なくなるのは怖い。かといって、まとまったお金が貯まるまで月々の家賃を払い続けていれば、その期間の家賃を無駄にしてしまう。それなら住宅ローンや商工ローンでお金を借りて一括払いしてしまったほうが、ローンの利子を考えても得をするかもしれない……。そんな計算をしています。

私は無借金経営を誇りに思ってはいますが、借金について、まだまだ学ぶ必要があるようです。

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