The Miles Davis Quintetを聴きながら、無冠帝

9月のマンハッタン。無冠帝を嗜みながら、ジャズを聴く。自分にとっての心地よい時間とは、こんな風にジャズを聴きながら、お気に入りの日本酒を嗜むことかもしれない。意外かもしれないが、私自身は三味線を聴きながら日本酒を飲むということはほとんどしない。三味線の音に気をとられるからだ。全く日本酒や料理に集中できないという大問題が発生してしまう(笑)。親交のあるジャズピアニストの秋田慎治さんも、ジャズが流れている飲食店は苦手だと言っていた。
演奏家目線ではどの音楽ジャンルにするかは大きな壁ではあるものの、料理と日本酒のマッチングと、そこに合う”音”をチョイスする時間もなかなか楽しい瞬間だ。

日本酒と料理と音の心地よい時間

今日のチョイスは、The Miles Davis Quintet (マイルスデイヴィス クインテット)の1964年イタリアでのライブ音源。ジャズの帝王として語り継がれているマイルス・デイビスが率いた当時のバンドメンバーは以下の通りである。
マイルス・デイヴィス(トランペット)
ウェイン・ショーター(サックス)
ハービー・ハンコック(ピアノ)
ロン・カーター(ベース)
トニー・ウィリアムス(ドラム)
Autumn Leaves、My Funny Valentineなどの名曲が、色鮮やかに演奏されている。いまでは珍しいアコースティック音源は、ライブをそこで見ているようだ。

ジャズ界を牽引してきたこのThe Miles Davis Quintetは1950、60、70年代とメンバーが入れ変わり、その音楽性は時代背景とともに形を変えてきた。それは、モダンジャスの帝王マイルスの挑戦と苦悩そのものの現れだといつも感じる。

そのマイルスのステージで一際目を引くのが、ベースのロン・カーター氏である。リズムセクションというベース、長身を活かしたパフォーマンスは、1964年当時若干27歳であるが、凄みさえ感じる。2回のグラミー賞受賞など、輝かしいキャリアを築き上げてきた生きるレジェンドは御年84歳である。現代ジャズ界最高峰のアーティスト。ジャズ・ベースの神様だ。

世界初となる3弦の三味線と4弦のベースの共演

そのロン・カーター氏が、私のニューヨークカーネギーホールコンサートにスペシャルゲストとして出演して頂ける事が決定した。鳥肌が立ったのと同時に一気に恐怖心が襲ってきた。それはそうだ。三味線で言えば、初代高橋竹山師のような存在だ。神様の領域に到達したレジェンドとの共演は、ミラクルという他ない。
ロンさんとは、数年に渡りお互いの音楽を通して親交を深めてきた。紳士でありながら、日本人のような精神性(ご縁、礼節など)を併せ持った方で、私にもいつも優しく親切に接してくれることに、ただただ感動している。
世界初となる3弦の三味線と4弦のベースによる奇跡の共演が実現する。その7本は融合するのか、また別々の世界観が見えるのか、私自身もまだ想像できないでいる。ぜひその歴史的瞬間に立ち会って頂き、新しい歴史の1ページを見届けて頂けると幸甚である。


カーネギーホールコンサートが大成功した暁には、ロンさんと無冠帝を嗜みたいと決めている。この無冠帝は、私が日本から持ってきたものだ。アメリカではまだ飲めない。酒銘である無冠帝には、地位や名誉にこだわらず高い志を持つ「無冠の帝王」という意味が込められている。その誕生への想いも含め、私はこの無冠帝が一番好きかもしれない。
誇張しすぎず落ち着いた酒質の中に、一瞬米の旨味が現れる。なんとも絶妙なチューニングだ。どんな料理にも合い、さっぱりとキレのある辛口で、人々に寄り添う日本酒である。そう、ジャズも人に寄り添う音楽だ。だからこそ、無冠帝の味わいはアメリカでもきっと、全ての人に寄り添い幸せにしてくれるだろう。ワインボトルやウイスキーボトルの隣に並んでも、引けを取らないスタイリッシュな水色は、まさにサムライブルーだ。この無冠帝の海外展開が実現し、世界のお酒となることを願っている。

さてこの無冠帝・・。300mlの小さい方で、在庫は、あと1本のみ。いつもこの絶妙な”味の距離感”に、杯が止まらなくなるのだが、コンサートが終わるまで取っておかないと・・・。我慢できるのか、史佳(笑)。


誰か、日本から無冠帝の大きい方(720ml)持ってきて欲しい。

ロンさんと無冠帝を飲む時にチョイスする音楽は何かって?
もちろんカーネギーコンサートの”余韻”の音で・・・。

9月は、史佳47歳の誕生月。
無冠帝のように、さりげなくも志高い三味線人生も悪くない。

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