BREW読者の皆様、こんにちは。ケルト音楽専門の楽器店を経営している笛演奏家のhataoです。
2022年もどうぞよろしくお願いします。
コロナ禍が始まってから、もう丸2年。皆さんにとってはどのような2年でしたか?
私は普段であればコンサートや楽器のレッスンをして、何回も海外旅行に行って過ごしますが、それも思うようにできない日々。2年間の写真を振り返ってみると、写真の量が少ないことに気が付きました。
友人や音楽仲間と会う機会も減って、会食もできず、コロナが終わった頃には交友関係がすっかり変わっていそうです。長引くコロナ禍は多くの人に生き方の変化をもたらしていることでしょう。
今年の目標は「忙しくしない」こと
昨年秋に緊急事態宣言が解除されてから、イベントが一気に戻ってきました。10月以降は毎週末にコンサートがあり、加えて平日は楽器店の仕事と、無休で年末まで忙しく駆け抜けました。普段はのんびり過ごすのが好きな私はとても消耗して、「2022年は絶対に忙しくしない」と誓ったのでした。
昔の私は、忙くするのは良いことだと思っていました。忙しいイコール人に求められている、たくさんの仕事をしている、充実している、「売れっ子」だと思っていたのです。しかしそれはとんでもない思い違いでした。
皆さんも、もし「忙しいことは良いことだ」と思っているのでしたら、この記事を読んで今年は改めてみませんか。
多忙がなぜいけないのか
多忙がもたらす悪影響は多岐に及びます。
- 健康
「食事もできないほど忙しい」と言うように、忙しいとき削ってしまうのは食事にかける時間ではないでしょうか。普段なら栄養のある食事を丁寧に調理しているのを、インスタントやレトルト食品で済ます、出前や外食で済ます。果ては食事時間がもったいなくて食事を抜いたり、酒とおつまみで済ませてしまったりするかもしれません。
次に睡眠時間です。疲れていてもたっぷり眠れば乗り切れますが、夜も翌朝も仕事があるのでは、睡眠時間を削るしかありません。他にもゆっくりバスタブに浸かったり、散歩や運動をしたりする時間も削られていきます。
すると健康を維持するのが難しくなり、風邪を引いたり病気にかかったりすることにもつながります。身体の健康だけでありません。たくさんのタスクに追われていると脳を常に酷使して休めることができないので、ストレスが多く、精神の健康も損ないかねません。脳疲労から無気力や睡眠障害、鬱病につながる恐れがあります。 - 仕事
仕事が多忙なとき、充実しているように見えて実は「うまく行っていない」のです。仕事には業務を運営するための「作業」と「創造的な仕事」とがあります。
「作業」とは、メールに返信する、商品や仕事道具を維持管理する、日報を書く、といった日々の業務で、「創造的な仕事」とは現在の業務フローや人事体制を見直したり、新商品を考えたり、新たなプロジェクトや投資先を考えたり……ということです。
多忙になるのはたいてい「作業」の割合が増えているからです。日々作業に追われていてはビジネスの次の展開を考える時間などありません。忙しい間は仕事があって良いように思えます。しかし繁忙期が終わるとそこで仕事が途切れてしまいます。
それだけでなく、多忙にしていると集中力が続かずミスが増え、流れ作業的に雑にこなすようになり、一つ一つ心を込めて丁寧に対応できなくなり、サービスの品質や信用を落とす結果にも繋がります。 - 人間関係
仕事が多忙だと当然、人づきあいの時間は減ります。一人ひとりと丁寧に過ごす時間を作ることができず、ストレスからイライラして心のゆとりがなくなり、家族や友人とも心が離れてしまいます。 - お金
多忙になると、少しでも時間を作ろうとサービスにお金を使うようになります。時間をかければ在来線で行ける距離でも新幹線を使うようなものです。食事を作るのがおっくうになって外食が増えたり、普段は自分でしていることでもお金を払って人に頼んだりします。また、多忙のストレスを発散させるために、お酒や享楽的な遊びにお金を使ってしまう人もいるでしょう。これでは何のためにお金をかせいでいるのか、わからなくなります。
習慣
新年になり、今年こそは運動、ダイエット、英会話、資格の勉強、楽器の練習……と目標を立てている方が多いことでしょう。これらの目標は一朝一夕では成就しません。どれも地道な努力が必要とされます。
これらを習慣として定着させるには何日も継続しなくてはいけませんが、せっかくの習慣を台無しにしてしまうのが多忙です。中でも仕事は最大の言い訳になります。仕事さえしていれば他は許されると考え、せっかく定着した習慣は多忙によって簡単に中断されてしますのです。
なぜ多忙になるのか
仕事が多忙になる原因は、仕事がうまくまわっていないからです。それには主に以下の原因があります。
- 生産性が低い
一つの目標を達成するために残業や休日出勤をもいとわない「時間投入型」の労働スタイルは多忙の一番の原因となります。同じ目標をより少ない時間で達成できないか工夫をすべきでしょう。
自分がやるべきでないことをやっている
本来は自分の業務範囲ではないのに、人手が足りず自分がやることが当たり前になっていませんか? 専門職であれば、基本的に専門外の業務や誰でもできる業務はすべきではありません。フリーランスは外注や委託を活用して、自分の専門分野に注力しましょう。
必要のないことをやっている
売上の8割は2割の商品やサービスが作り出している……という話があります(パレートの法則)。大事なのは次の「8割」になる商品を育てることなのに、残り2割の主力ではない商品やサービスに時間を取られていませんか。すべての仕事を丁寧にやりたい気持ちはわかります。しかし、それが多忙の元になって悪影響を及ぼしているのであれば、すっぱりと切り捨ててしまいましょう。
完璧主義である- 完璧主義は生産性を下げる大敵です。試験対策で有名な話ですが、8割の点数で合格できる試験では、8割を確実に取れるまでになった時点でもう次の科目の勉強に移るべきです。実力を8割まで高めるのに必要な時間と、残りの2割を完璧にするための時間とを比較すると、後者には膨大な時間がかかります。人間、完璧であることは不可能です。完璧を求めるとチェックに大きなロスが生じ、効率性を落としてしまうのです。
断れない- 頼まれごとを断れない性格もまた多忙の原因となります。「本当に自分がやるべきことか」を一度考えて、「絶対自分がやるべきだと」自信を持って思えないなら基本的に断りましょう。立場上断れないのであれば、頻度や量を減らしてもらうなど交渉を試みてください。若い頃の私は依頼を断らないスタンスでした。それは少しでもお金を稼ぎたいことはもちろん、人とのご縁や新たな可能性を無駄にしたくなかったのです。若い頃はそれで良いでしょう。しかし、時間が有限であることを感じる今は、何もかも引き受けることはできないのですから、依頼を受けることには慎重でありたいと思っています。
集中力が低い
例えば仕事中にパソコンの横にスマホを置いていて、常にメッセージアプリの通知が鳴っていたのでは、仕事にならないでしょう。マルチタスクができるのはコンピューターだけです。スマホアプリの切り替えのように次から次へと思考を切り替える癖がつくと、集中することが難しくなってしまいます。
スマホの通知を切って手の届かないところに置くのはもちろん、一つの仕事をしている最中に雑念が浮かんだら、「そのことは気になるが、今の仕事が終わってから」と心の中で受け流すようにしましょう。
ゆとりのある「暇」を目指すべき
私は「ゆとりのある暇な時間」が大好きです。時間のゆとりがあれば、ゆっくり食事をして、人と楽しい時間をすごし、勉強や運動をし、音楽や芸術を楽しみ、自分と対話して今後の人生について思索することができます。それができない日々が続くと苦しくなってしまいます。
これまでの私は多忙を充実だと勘違いをして、自ら予定を詰め込んで忙しくしていました。それではクリエイティブな発想が生まれるわけがありません。「多忙は悪、暇は正義」。働けば働くほど仕事が楽になり、時間とお金が生まれ、豊かな暇人になる。そこを目指していこうじゃありませんか。
今年は多忙の反省を活かし、意識的に自分のスイッチを「OFF」にする日、時間を作ります。そのことについてはまた次回にお話したいと思います。