スモールビジネスの価格はどう決める?

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。

6月はテレビ朝日の音楽番組「ハマスカ放送部」に出演したり、アイルランド音楽のコンクールに初挑戦したり、その間に毎週どこかでコンサートがあったりと慌ただしく過ぎていきました。


©テレビ朝日

さて、今月のテーマはビジネスの核心である「プライシング」すなわち価格決めについて、10年間スモールビジネスを経営してきた私のアイデアをシェアします。

インターネットやアプリの普及により誰でも簡単に副業やスモールビジネスを始めることができるようになりました。経営者は商品やサービスの値段をどうやって決めているのか、ご参考になれば幸いです。

価格と価値


プライシングについて考える前に、前提として知っておきたいこと、それは「価格と価値」の違い。この違いについてはよく知られているため、インターネットでさまざまな記事を読むことができます。

参考に、こちら「筆子ジャーナル」の記事「価格と価値の違いを知れば、余計な物も浪費も減る。」では、価格と価値の違いを明快に定義しています。

https://minimalist-fudeko.com/difference-between-price-and-value/

価格とは「~円」など数字で表せるもの。
価値とは「自分にとってどのぐらい役立つか」だとしています。

価格は誰にとっても一定である一方で、価値は人それぞれによって感じ方が異なることから、その違いは明らかです。

例えば喫茶店のコーヒー1杯が800円だとしましょう。800円という金額は誰にとっても同じ800円ですが、その800円のコーヒーが価格に見合うかどうかは、人それぞれだということです。
一般的にコーヒー1杯に800円の値段設定は強気の値段ですが、限定品のめずらしい豆だったり、インテリアや雰囲気が素敵だったり、観光地など人気の場所であれば、800円でも飲みたいという人はいるでしょう。あるいは、それ以上の価値を感じる人にとっては、800円は安いので1500円でも飲みたいかもしれません。

このように、価格はきちんとした数字でありながらふんわりとしており、800円のコーヒーが高いか安いかは、一概に言えません。

価格の算出方法


自分が提供する商品やサービスの価格をどのように設定すべきでしょうか。これには、いくつかの考え方があります。キーワードは「原価率」と「利益率」です。こちらについても様々な記事がありますので、ECサービスを提供しているカラーミーの記事を参考にお読みください。

商品の販売価格の決め方はどうやるの?値段のつけ方のポイント・コツとは?

商品の販売価格の決め方はどうやるの?値段のつけ方のポイント・コツとは?

上の記事にもあるとおり、原価や利益率から計算した価格は販売者側の都合であり、消費者が買いたい価格とは合致しない場合があります。

コモディティ(大量生産される普及品)であれば相場があります。
例えば石鹸1つを売る場合に原価率や利益率から計算して1つ1,000円で販売したいとしても、ドラッグストアで3つ200円で買えるのであれば、価格にかなりのギャップがあります。その場合は、消費者が1,000円分の価値を感じてもらえなければ買ってもらえません。そこで、「契約農場で栽培した天然原料」や「フェアトレードで開発支援をしている」といった説得力のあるストーリー、または「シニアの女性の肌に合わせて開発した」など効果・効能を特化するといったマーケティングが必要となります。

価格を左右する要素

「価格と価値」そして「原価率・利益率」を踏まえた上で、プライシングに影響を与える要素をご紹介します。

・相場

この世の中に、1つしか存在しないものというのはそうそうありません。たいていは同じ商品をどこか別の場所でも購入できるものです。そして今の時代、消費者はインターネットで簡単に値段を比較することができます。

商品やサービスの価格には相場があります。ランチであれば2,000円以内、楽器のレッスンであれば1時間5,000円程度といったように。その相場から大きく外れて安い・高い場合に、消費者は「なにか理由があるのでは?」と感じます。

消費者は買い物で失敗したくないという心理がありますから、安すぎても高すぎても不安になるわけです。そこで、「在庫処分セールで安い」とか「最後の1つなので高い」など正当な理由がなければ、相場の範囲内で買い物をしようとします。

・競合

顧客の購買行動は、同業他社が同じランクの製品をいくらで販売しているのかによって影響を受けます。デフレが進んでいる現在、消費者は同じ製品であれば少しでも安く買いたいと考えています。

コモディティであればどこで買っても同じ製品ですから、価格を重視する消費者は1円でも安い店を探します。そこで店頭でスマホを取り出して価格.comやamazonや楽天市場にアクセスして、どこで買うのが一番トクかと調べるのです。このような場合、送料や保証期間や販売店の評価も加味した上で、原則的には価格の安いものから売れていきます。

反対に、離島に1軒しかないスーパーマーケットのように競合が存在しなければ、島民は原則そこでしか買い物をしないので値段は高くなるでしょう。

・仕入先との契約

販売業者が不当に価格を吊り上げたり、販売業者間の競争が消費者の不利益にならないように、販売価格の範囲を定めている場合があります。例えばメーカー小売価格の80%から120%の範囲にすると定められていれば、原価ギリギリで販売したり、オークションで価格を吊り上げたりすることは許されません。

・割引率

メーカーが小売業者に卸売する際にどれほど割引をするかは、それぞれによって異なります。私の経験では量産体制があるメーカーは卸売価格を小売価格の5割から6割に設定しているところが多い印象ですが、量産体制がない職人的なメーカーであれば、卸売するよりも小売したほうが得ということで、値引きがまったくないか、あっても5%値引き程度になる場合もあります。

以上、今回はプライシングについて一般的な要素をご紹介しました。それでは、次回の連載では弊社がどのようにプライシングをしているのかについてお伝えします。

・原価率を一定にするか、粗利額を一定にするか
・ワゴンセール
・為替レートの変動を考慮する
・オリジナル商品を開発する
・ブルーオーシャンを探す
・ダイナミック・プライシングとオークション

といった話題になります。お楽しみに!

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