私の失敗エピソード〈金融投資編〉 投資で200万円のマイナスを出す

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が、起業やビジネスについて、アイデアと経験をみなさんとシェアしています。

前回に引き続き今回も「私の失敗エピソード」と題して、私がこれまで犯してきた数々の失敗から、深刻すぎないものだけをシェアします。他人の失敗を読むのは楽しいですよね? わかります。さあ、今回は金融投資編です。

株式投資で200万円のマイナスを出す


このエピソードはトラウマになっていて、最近まで身近な人にすら言えなかったことです。

10年ほど前に親から生前贈与として少しまとまった金額のお金を受け取りました。その時の私は自宅の購入などの大きな出費の予定がなかったため、銀行口座に預金しておくよりも投資したほうが生きた使い方になるかなという軽い気持ちで株式投資を始めました。当時は安倍晋三氏が総理大臣になった頃で、いわゆる「アベノミクス」の金融緩和政策で市場に大量のお金が流れ込んでいた時期。株価も大きく上がりつつあり、猫も杓子も金融投資というご時世でした。

いくつかの投資指南書を読み、個別株に投資することにしました。特に興味があったのは外食産業で、株主優待でお食事券をもらいたいという不純な動機で、いくつかの会社に投資しました。私が買った個別株はなんと1か月も待たずに10%程度値上がりました。利益確定して味を占めた私は、細かく売り買いを繰り返すようになりました。儲けは小遣い程度ですが、資産が増えることに快感を覚え、私は毎日チャートをチェックしたり投資ブログを読んだり、すっかり株式投資に熱を上げていました。

そうしているうちに2015年、原油価格が歴史的な下落をします。原因は、アメリカがそれまで採掘不可能だったシェールオイルを採掘できるようになり産油国に転じ、中東の産油国との叩き売り競争が始まったことだそうです。一時的な下げだろうと思っていた私は、それまで興味も知識もなかった原油の、ETF(投資信託)を買うことにしました。その額、200万円。激しい値動きをしていたので、瞬間的に5%でも上がったら売って、10万円でも稼げたら良いなと思ったのです。しかし、その後もずるずると下がっていきました。

忘れもしない2015年夏、私はスウェーデンを旅行していました。美しい湖のほとりの街で、木造の橋を渡っているときでした。ふと株アプリを見ると、原油価格がさらに値下がりしています。すでに負けをこんでいたのですが、さらにつぎ込んだら、上がった時の儲けも大きい。10年かかってもいいから負けを取り返したいという思いで、100万円さらに投下しました。

それから…10年近く経っていますが、原油価格は元には戻っていません。いえ、正確には原油価格はだいぶ回復したのですが、投資信託は「将来の期待値」なので「現在の価格」とは異なり、相変わらずさっぱり値上がりしていません。投資の格言で「ひとつのかごに卵を盛るな」、「落ちるナイフは拾うな」というものがあります。リスク分散しないと取り返しのつかないことになるぞ、値下げしている銘柄に手を出すと奈落の底まで値下がりして大怪我するぞ、という素人が考えても至極当然の警句です。私はまさにそれをやってしまったのです。

私は2015年以来、株アプリの赤表示(負け)を見るのがいやで、すっかり金融投資から遠ざかっていました。そうして2020年にコロナ騒動が始まり、旅行需要が冷え込むなか原油価格は史上最低価格の「マイナス」を記録しました。紙屑同然になったのです。その時の含み損は200万円でした。
金融取引をご存知ない方のために補足しますが、これは200万円を失ったことが確定したわけではありません。損得は、売って初めて確定します。

それから数年して、私はこの気持ちに区切りをつけるために、始めて「損切り」をしました。一部を赤字で売却したのです。最低の時より若干は値上がっていたタイミングだったので、痛手も少なめで済みました。他の国内個別株の中には利益確定して儲かったものもあったのですが、この原油ETFのおかげでトータルは大損です。親にも申し訳なくてこのことは伝えられていません。ちなみにまだ100万円くらいは持っています。私の寿命が尽きるまでに黒字になれば良いなくらいの気持ちで持っています……。

投資では大損をしましたが幸いなことに現預金にはまだ余裕があり生活資金や事業資金には影響がなかったので、絵に書いたような生活破綻になることはありませんでした。

この失敗は痛い教訓となりました。その後少しは金融知識をつけて、ギャンブル的な投資はせずに、複数のアメリカ株や全世界株の投資信託の銘柄の積立てと小規模企業共済を毎月こつこつと積み立てています。

事業で稼いだお金を金融投資で増やす?

私が株式投資で負けた理由は単純に「無知だったから」につきます。もともと金融投資に興味も知識もなく、ましてや原油などというのは投資の専門家でも成り行きの読みにくい難しい商品に手を出したためです。そもそも素人の私に扱えるようなものではなかったのです。それなのに、単純にチャートだけを見て「買い」だと判断したのは愚かだったとしか言いようがありません。

私の失敗は極端な例だとしても、事業で稼いだお金を金融投資でさらに増やすことについては再考するべきでしょう。私はケルト音楽の楽器店という分野においては国内の先駆者、専門家であり、その分野においては熱量、知識ともに大手楽器店にも負けないという自信があります。一方で金融についてはほとんど無知です。勝ち負けを決めるのは、対象への知識と情熱です。

事業で稼いだお金を投資でさらに増やして事業に還流しようという考え方は、よほど事業資金に余裕があり投資について相応の知識や経験があれば「アリ」かもしれませんが、冷静に考えてほとんどの経営者にとってはリスクであると思います。チャートの値動きに気を取られて本業から注意がそれるのも良くありません。

それなら本業に対して投資をしたほうがよほど勝つ可能性が高いでしょう。私であれば、2015年の時点で店舗や自社製品の研究開発に投資したほうが良かったのです(タイミングもありますが、私がそれらを始めたのは2018年からでした)。

もちろん私がここで言っているのはリスクの大きめな金融投資であり、小規模企業共済やiDeCoといった退職金の積み立てや、よりリスクの低い債権や定期預金のことではありません。

いずれにしても、まずは本業でしっかり稼ぐこと。本業がピンチのときに会社やスタッフを守れるようにたっぷりと現預金を蓄えておくことは必須でしょう。事業資金がショートしたときに、含み損の金融商品をあてにするようなことはないように、私の失敗から学んでいただければと思います。

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