旅を「部屋ごはん」ではじめるという提案

ここ数年の疫病による混乱も落ち着きを見せはじめ、久しぶりの旅行を計画されている方も多いかと思います。

旅行の際、食いしん坊につきまとう一番の悩みが「胃はひとつしかないんだ」問題。

1日3食、それにプラスしておやつに食べたいものを割り当てたとしても、すべてを網羅できない場合もあり、もっとも頭を悩ませるところです。

しかし、そこであえて提案をしたいのが、「旅初日の夜ごはんを、購入したお惣菜などで部屋ごはんにする」という作戦です。

食いしん坊諸君におかれましては「そうやすやすと1食分のチャンスを無下にできるか」と憤慨される向きもあろうかと思いますが、この提案に至った思いをつづってみますので、まずはご一読を。

旅先の空気になじむ時間を

「旅に出た」という高揚感で動き回るのも、もちろん楽しいです。

けれど、一旦旅先の空気や時間の流れになじむ時間を取るのもいいなと、「部屋ごはん」を選択肢に入れるようになってから思うようになりました。

そもそものきっかけは、何度か行っているハワイ旅行。

初めての渡航では、「あそこも!これも!」と時間を惜しんでまわっていたのですが、何度か訪れるうちに「そんなに焦らなくても」という余裕ができてきました。

そこで何度目かのハワイ旅行の折、スーパーでパンとハム、チーズ、レタス、ポキなどのお惣菜とビールを買い込み、到着初日の夜ごはんを部屋で楽しんでみたのが、えらく気に入ってしまいまして。

部屋の窓を明け放つと、リゾートらしい喧騒とプールの水音が聞こえる。それらをBGMに、買ってきたものを適当に組み合わせてはつまみにし、ビールと楽しむ。

そんなリラックスした状態で、明日からの予定をのんびり検討する時間が、日常と旅との間をなめらかにつないでくれるような気がして、「部屋ごはん」を旅先での食事の選択肢に入れるようになったのでした。

リゾートではなくても、見たことのないローカル番組をテレビで観たり、地元のお惣菜をつまんだりする時間は、身体に少しずつ旅先をなじませてくれるものになると思うのです。

そんな旅先での「部屋ごはん」を集める、私なりのヒントを挙げてみたいと思います。

①旅先スーパーは、地元食文化のパラダイス

以前、旅に出ると、その行程に「地元スーパー探訪」を必ず入れる、という記事 も書いていますが、地域の食生活を支えているスーパーこそ、その土地の食文化がずらりと並ぶ食いしん坊のパラダイスです。

野菜や果物のコーナーで、洗ってそのまま食べられる地物を探したり、

お刺身が並ぶ中に、見たことのない魚を発見したり。

惣菜コーナーも「聞いたことはあるけど、これか!」「食べ方も分からない、これはなに?」といった発見に満ちているし、お酒の棚には、地元民に愛される、その土地に根付いたメーカーのものが並んでいるはず。

広島のスーパーでは、地元ではあたりまえの「うどんVer.お好み焼き」も並ぶ

        

ドレッシングコーナーで、地域の有名店オリジナルなんて見つけたら、先程のお刺身にかけてカルパッチョ的にいただく、なんて小技も使えます。(開封後も、常温保存できるものに限られますが)

沖縄に行かれる方には、ぜひ豆腐売り場をのぞいていただきたい。

沖縄名物の「ゆし豆腐」が、ほかほかの状態で売られているタイミングがあるのです。

この売り方は食品衛生法で認められていないのですが、昔から続く食文化を守るべく地元民が国に陳情を重ねた結果、一定の条件付きで認められている販売方法なのだそう。

塩味がついているため、部屋ごはん向きの一品です。

メーカーごとの到着スケジュールに、「あちこうこう(あつあつ)」へのこだわりが感じられる

     

   

②専門店のテイクアウトを狙う

テイクアウトができる専門店に足を運ぶのも、部屋ごはんの充実によい方法です。

地元名産の肉や牛乳で作る加工品や乳製品、伝統野菜の漬物、人気のベーカリーなど、

調べるといろいろなお店があるはず。

あまり気負って買い回りに力を入れると、「まずリラックスする」という目的がかなわなくなってしまうので、そこはよき塩梅で。

京都の地元パンチェーン店・志津屋のカルネ。「次に行ったらまた買いたい」と思えるものとの出会うのも旅の楽しさ

   

昔は「旅行」といえば、1日3食すべてのスケジュールをびっちり入れて、「取りこぼすものか」という気迫だったのですが、「リラックスして楽しむことを一番大切にしたい」と思える大人になれましたよ。よかった。

自分らしいスタイルで旅を楽しむヒントのひとつに「部屋ごはん」、アリですよ。

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