クラウドファンディングを考える (2) 挑戦者の立場から

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

ビジネスについて語るシリーズ、今月は「クラウドファンディング」について書いています。

前回はクラファンに出資する立場で考えることについて書きました。今回は反対に、クラファンで資金調達に挑戦する立場から考えてみましょう。

公開直前でクラファンをやめた経験

クラファンは本来の用途であった商品開発や新規事業の立ち上げだけではなく、今や個人単位で幅広く行われています。例えば経営困難になった店が支援者を募ったり、地域猫の避妊手術の費用を募ったり、学生が留学費用を募ったりしています。Campfireを開けてみればお分かりですが、あらゆるプロジェクトで混沌としています。

実は私自身、これまで一度だけクラファンを試みたことがあります。それは「フランスの伝統音楽を演奏するアーティストを日本に招きたい」というプロジェクトです。このアーティストは私がかねてより大好きなフルート奏者で、日本ではまったく知名度がないのですが、彼の音楽の素晴らしさを多くの人に知ってほしいという熱意で来日ツアーを企画しました。

ケルト音楽はマイナーなので興行として収益が期待できるようなものではありません。お金儲けではなく、彼らと一緒にツアーをすることで、音楽家として私自身の学びになると考えたのです。

たった2人の音楽家を招くだけでも、国内ツアーをするには渡航費用や滞在費、交通費として最低100万円以上の予算が必要になります。集客に失敗すればその損失を全て私が被らなくてはいけないため、あらかじめどのくらいの人がライブに来てくれるのかの保証が欲しく、クラファンに頼ることを思いつきました。そのため、リターンにはライブ鑑賞権とCDやレッスンを受ける権利を設定しました。つまり前売り券を販売して先払いしてもらうような感覚でクラファンに挑戦したのです。

このクラファンは審査が無事に通過したのですが、私は公開直前で考え直し、この来日計画のすべてを自費で賄うことにしました。というのも、このプロジェクトを行うにあたりすでに一年以上前からアーティストの予定を確保しているため、「クラファンに失敗したから来日はキャンセルさせてください」というのは不可能ですし、仮に資金調達に失敗したとしても、私は彼らを呼びたい気持ちに変わりはなかったからです。

何より、プラットフォーマーへ支払う手数料が思った以上に高額で、もったいなく感じもしました。それらを考慮して、誰の資金援助を受けなくても実現させてやる! という強い思いや自信があることに気がついたので、やめたのです。

クラファンは自分が痛みを負うことなく資金が得られて良いことばかりのように感じられるかもしれませんが、手数料やリターンを実行する際の労力やプレッシャーをよく考えて、本当に必要であれば挑戦しましょう。

後ろ向きのクラファンと前向きなクラファン

クラファンについて調べた際に、インターネット上で「クラファンとは信用をお金に換えているようなものだ」という趣旨の文章がありました。確かにその通りだと思います。

例えば、経営に行き詰まったお店がクラファンに挑戦して資金調達する場合、一回目はそこの店の常連やお店の方針に共感する人々から資金調達に成功するかもしれません。しかし、同じクラファンは二度とできるでしょうか? せっかく資金を集めて継続したのに、また数年後に同じように経営に行き詰まってクラファンをしたら、おそらく成功はしないでしょう。そのお店の信用残高が、もうそこを尽きてしまったからです。

このようなマイナスを補填するクラファンは、挑戦者の切羽詰まった悲壮感に共感して一度は成功するかもしれませんが、出資者は同情しているだけで、ワクワクは生まれません。

このケースとは反対に、商品開発や芸術作品の創作でクラファンを行い、その結果生まれたものの価値が認められた場合、それは次のクラファンの成功へとつながることでしょう。一度目の成功によって投資する人の期待値が高まるからです。

クラファンは資金調達に成功したから終わりではなく、出資者はその結果もきちんと見ています。せっかく挑戦するのであれば、プラスの循環を産むようなクラファンをしたいものです。

SNSの影響力を活かす

クラファンが達成するかどうかは、プロジェクトの意義よりもSNSでの注目度が大きく影響します。例え挑戦者に実力がなくても、私的な目的であっても、普段からSNSで多くのインプレッションや「いいね」を獲得している人であれば、プロジェクトを達成できる確率は高まります。また、若くて綺麗な女性だったり、爽やかなイケメンだったりすると印象も変わり、成功にプラスの影響を与えることでしょう。

一方でプロジェクトに対して深い考えがあり地道で献身的な活動をしている人であっても、知名度が低かったりオンラインでの存在感がないと、そのプロジェクトは注目されません。

不公平ではありますが、人の魅力は理性で抗えないものがあるので、受け入れるしかありません。

個人的には「目立ったもの勝ち」のようなSNSの現状に対して不安を覚えますが、この影響力には侮れない威力がありますので、自分の魅力を利用できる挑戦者は積極的に武器にすると良いでしょう。

クラファンは最後の奥の手に

今回は挑戦者側の立場で考えることについて書きました。個人的に、クラファンは申請やリターンの実行に手間がかかり、また手数料のことを考えても心労が多く、最後の奥の手としています。

私は何かのプロジェクトを企画する場合は自己資金で解決し、それができない場合はやり方を変えるなど、なるべく人の助けを借りずに自分の力で可能な範囲で物事に挑戦しています。

もしクラファンに挑戦したいという方がいたら、自分の個性として人の協力が得やすいキャラクターなのいか、そうではないのか考えてみると良いですね。

それでは、また次回!

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