2024年初ライブは、能楽堂で開催された。
この「撥一閃」ライブは、去年からシリーズ化していて、聴く人にとっても、舞台に立つ私たちにとってもまさに、”三味線”の真髄に集中できると言っていい特別なライブである。
新潟高橋竹山会皆伝者との合奏が前半を飾り、後半は師匠である高橋竹育との親子共演が最大の見どころだ。
皆伝者たちは、前回以上に熱心に稽古を重ねてきていた。
竹山会で学ぶ曲は通常、譜面に忠実であるが、私の独自の演奏スタイルとは異なる。
皆伝者は私の演奏の手を譜に起こし、徹底的に研究していた。
そうした絶え間ない努力が実を結び、全員が同じ手で披露した合奏は見事に調和し、圧巻であった。
皆伝者の中には芸歴40年にもなる者もいるが、彼らのそうした更に高みを目指す姿勢というのは、私自身もまた成長させてくれる。
演奏後の彼らの笑顔からは、共演の喜びが溢れ出ているのが伝わり、それは私にとっても大きな喜びであった。
もう一つの見どころである親子共演では、親子の息の合った演奏が実現し、まるで三味線の音で会話をしているかのような掛け合いを、楽しんでもらえたと思う。
毎回演奏する親子二重奏でも、これまで一度も同じ演奏をしたことはない。
まさに、本物の即興演奏である。
私も常に新しい表現をステージ上で模索し、演奏中に手を動かしながら、その場の感覚に従う。
この瞬間が、スリリングでエキサイティングなのである。
古典曲は私の真骨頂であるが、その魅力を存分に伝えることができたと感じている。
今回初めて三味線演奏を聴いたというお客様も多く、ライブ後のロビーで、嬉しい感想を伝えてくれた。
今年で芸歴40年を迎えるが、少しずつ三味線がわかってきたという思いである。
その奥深さを実感し、答えのない道を歩んでいることを改めて感じている。
まだまだこれからの三味線人生が楽しみである。
守破離(しゅはり)という言葉が伝統芸能には、よく使われる。
まず大事なことは型を守り、そして次にその型を破って新しい自分の型を見つける。
最終段階とされる「離」は、その芸道の本質を理解したうえで、自分自身の独自の芸術域に至るというものである。
芸道40年、今自分がどのあたりにいるかは分からないが、これからもこの意識を常に持ち続けていたい。