税務調査がやってきた!

こんにちは! ケルトの笛演奏家で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が、起業やビジネスに関するアイデアや経験を皆さんとシェアします。

自営業者であれば一度は経験すると言われる(?)税務調査。泣く子も黙る税務調査官による監査を経験した、私の体験をお話しします。

それは突然に

7年前のある秋の日、私の携帯電話に一本の電話がかかってきました。電話が嫌いな私は、知らない番号から電話がかかってきても取らないことにしています。メッセージ録音を再生すると、「西宮税務署の◯◯と申します。確定申告についてお話しをお聞きしたいことがありますのでお電話ください」とありました。初めての税務署からの電話。当時の私は個人事業者として青色確定申告をしており、何年も税理士に申告を代行してもらっていたため申告内容には間違いないだろうと安心しきっていました。

「一度お話しを伺いたいので、ご自宅に訪問可能な日をお知らせください」

お互いの都合をつけて訪問日の約束をしました。朝9時頃でしょうか、50代くらいと40代くらいの二人のスーツ姿の男性がやってきました。普段は友人と音楽レッスンの生徒くらいしか来客のない自宅なので、異様です。同居人に会わせるのはきまりが悪いと感じ、客間に通しました。職員は、軽い雑談をし始めました。

「音楽家をされているのですね、普段はどのような活動をされているのですか? レッスンやコンサートですか、それはどのような頻度で?」

私は税務調査がどのようなものかネットで調べていたので、雑談から入るのがお決まりのパターンであることも知っていました。若手の職員が物腰柔らかで、中年のほうはいかにもベテランふうです。職員は威圧するわけでなく、紳士的におだやかに会話しようとしていました。午前中は本題に入ることなく、昼食時間に帰っていきました。 

収入の流れと金額を確認される

午後になり再び自宅にやってくると、すぐに本題を切り出されました。職員が私のお金の流れを詳細に聞き取り、ノートに書いていきます。その頃の私は音楽家として様々な収入を得つつ、楽器の通信販売ビジネスが軌道に乗り始めていたため、複数の収入源がありました。コンサートはいつどこで演奏し、どのくらいの収入があったのか、レッスンはいつ何人にレッスンをして、入金方法は何だったか。楽器を売ったのであれば、いつどれくらいを売ったのか。現金での収入なのであれば、それを証明する資料があるのか。

午後の最初の頃は自分の収入が複数あることを得意げに話していた私でしたが、この段階になって答えに詰まりました。それまで、まったくのドンブリ勘定でいい加減に収入の申告をしていたからです。コンサートの収入は当日の客数に応じてその日に現金で支払われることが一般的で、いわゆる「投げ銭」、つまりチップをお客様から集めるときもあります。そういった収入はまったく記録も申告もしていませんでした。

また、レッスンの収入も大半が現金でしたが、その記録は手帳にしかありませんでした。確定申告では、月ごとのレッスン時間数を計算して収入を申告していました。

職員から正確な記録を提出するように言われ、私は手帳を職員に見せました。手帳を出せと言われたわけではないのですが、これしか記録になるものがなかったからです。私は自分の話にほころびがでた時点で観念して、言われるがままに自白する容疑者のような気持ちになっていました。

コンサート収入は記録も記憶もないので、正確な金額の申告のしようがありません。そこで、おおよそで良いので、日付と収入金額をリストにして次回までに提出するように、と言われました。この日は次の訪問日の約束をして帰っていったように思います。私は演奏の収入を申告すればよいのであれば、それほどおおごとにはならないだろうと思っていました。

本丸はもっと大きなところだった

二回目の調査日の朝、これまでの確定申告の総勘定元帳(帳簿)と銀行預金通帳を見せてくださいと言われました。個人事業主は5年間の会計資料の保管義務が定められています。私が資料を提出すると、客間の床に座りながら、職員が2人がかりで何時間も帳簿をあたりました。この時私は別室で、祈るような気持ちでいました。

しばらくして、呼び出されました。

「◯◯年と××年の申告の際に、消費税の申告をされていないようです。それから、××年は金融投資での収入があったのではないでしょうか?」

まさか、と思ったのですが、その通りでした。個人的なことですが、その年の2年前まで私は前妻に会計と申告を任せていました。その前妻が確定申告期限の3月の直前に突然自宅からいなくなり、会計が何もわからないまま放り出されたのです。その年、初めて税理士に依頼し、確定申告だけはかろうじて済ませました。それ以後、申告のみを毎年異なる税理士に依頼していたのです。初年の私は自分が消費税の課税業者であることも知らず、納税しないまま申告を済ませていたのでした。投資の件は、「アベノミクス」が始まる頃にちょうど運良く買った株が値上がりしたため売却したものでした。確定申告が必要などとは知らなかったのです。

私の微々たる演奏収入の申告漏れはジャブであり、一番の狙いはおよそ200万円の消費税の未払いだったのです。私は脱税犯になったかのような気分で、とても恥ずかしい思いをしました。

再提出、そして追徴課税

その後の処理はとても面倒くさく、また苦しいものでした。

コンサートの収入リストの提出とともに、税理士に依頼をして数年間分の修正申告をしました。税理士への手数料は10万円くらいだったように覚えています。しばらくして、申告していなかった収入の分だけ、消費税、所得税、住民税、健康保険料など数年間分のすべての支払いが一気にやってきました。今回は初めての申告漏れで、また事情も汲んで脱税の意図や悪質性がないと判断していただいたため、ペナルティとしての重加算税はありませんでした。それらの請求額を合わせるとおそらく400万円程度だったでしょうか。今回は貯金でまかなうことができましたが、追徴課税で倒産する企業もあると聞いています。

その後、この苦しみを教訓として、現金収入を正確に記録して申告するように習慣づけました。今では信頼できる税理士と出会い顧問契約を結んでおり、安心につながっています。つい先日も京都市税事務所から伝言メッセージがあったのですが、私を通すことなく税理士に直接対応してもらいました。

次回は、税務調査で聞かれること、聞かれないことについて書いてみたいと思います。

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