hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

「頑張っているつもりでも、稼いでないと意味ないよ?」

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が、起業やビジネスについて、アイデアと経験をシェアしています。

今回は煽りタイトルで始めてしまいましたが、これは誰かを煽っているわけではなくて、私が常々、自分に言い聞かせていることです。自分で商売をしている方は是非読んでみてください。

労働生産性が低い、昭和の働き方からアップデートしていないと、しきりに言われる昨今の私たち。「24時間働けますか」は、働けば働くほど儲かったバブル時代のスタイル。デフレ不況の現代にその考え方では若い人がついてこないし、いくら長く働いても給料が上がらないことにようやく気づき始めたのでしょう。

最近はそんな頭打ちの社会状況に絶望した若者たちを狙って、「ラクして稼げる」を謳った闇バイトの募集が横行しているそうです。働き方を考えた時に、私は基本的には二つしかありえないと思っています。 それは「しんどいけど、儲かる」か「楽だけど、儲からない」です。

どんな働き方を選択するか?

4人で運営している弊社の楽器店「ケルトの笛屋さん」は、音楽好きの趣味を活かして楽しく働いています。昨年法人化をする直前の会議で、私はメンバーに問いました。

「めちゃくちゃ頑張ってビジネスを大きくして大金を稼ぎたいか、それとも、そこそこ働いて、趣味を楽しめるだけの充分な時間とお金を手にしたいか」。全員の答えが一致しました。それはもちろん、後者です。私たちはたくさん儲かるとしても音楽に費やす時間や情熱を犠牲にしたくはないのです。

のんびりスタイルを選んだ弊社では、楽器店の営業は金土日祝の週3日、残りの日は通販の出荷や顧客の問い合わせへの対応はしますが、何時から何時は会社にいなければならない、といった時間的な拘束はしません。業務を滞りなく行っていれば誰も文句を言いませんし、お店の営業時間外は何をしていても自由です。週の労働時間は、スタッフの業務内容が異なるので一概には言えませんが30時間程度でしょう。それで生活できるだけの報酬を得ているので、効率は決して悪くないと私は思っています。もちろん、これからさらに生産性を上げて月収50万円などになれば最高です。

効率化を進めるために

効率化を進めるために必要なことは、シンプルに「儲かることをすること」と「儲からないことをやめること」の2点です。色々な商品とサービスの中で、よく売れるものや利益率の高いものをさらに多く売る努力をして、売れない商品や手間ばかりかかって利益率の低いサービスは廃止する。弊社では年に2回ほど、全員でこのテーマにもとづいて事業の見直しをしています。自営業の方やスモールビジネスを経営をしている方は、ぜひやってみてください。

一方でひたすら利益を追求すれば良いのかと言えば、そうではないと考えています。特に弊社は楽器という音楽家にとっての大事な道具を扱っているため、売り手が儲かっても粗悪な商品を売ることはできません。

また、文化事業なので、文化振興のためになることや自分達の興味関心のあることには儲からなくても積極的に取り組んでいます。以前にこのブログで「儲けるのは、儲からないことをするため」という言葉を書いたことがあるのですが、私のビジネスのように趣味性が高いものは、儲からないことをすることが結果的に市場での自分達の優位性や独自性を高めて、大手に潰されにくい強みになるとも考えています。

出版事業での反省エピソード

ここで、自分の出版事業での失敗エピソードをお話しします。私は音楽家でもあるので、「世界各地の笛の名手に録音を頼んで、それを私が譜面に起こした演奏解説書を作ったら、世界的に売れるに違いない!なぜなら私が一番、そんな本を読んでみたいから!」と取り組んだプロジェクトがあります。

この本は2年がかりで出版にこぎつけ、演奏家への演奏料や出版費用など金銭面のほかに、採譜に多大な時間と労力を費やしました。しかし、それは原価を回収する程度も売れていません。思い込みが先走って需要を読み間違えたのです。私はこれを素直に失敗だと認め、今後も継続するのであれば印刷物での販売ではなくデジタル販売のみにする、内容を簡易化するなどして手早く現金化する方法を模索すべきだと考えています。

私は音楽家でもあるので色々なコンサートの現場を見るのですが、一番いけないのが赤字を出しても反省しないことです。集客や企画に問題があって赤字になったのに、それを直視せずに「自分達が楽しかったから良しとするか」とお酒を飲んで紛らわすのは、プロとして失格です。赤字は失敗。赤字を出すならやらないほうがマシ。そのくらいの覚悟がないと、仕事として続けることはできません。

先ほどの出版の失敗も「自分の知的好奇心が満たせた」「演奏家とのコネクションができた」と評価したくなる気持ちはあるのですが、それなら自分一人でその演奏家の個人レッスンを受けたほうがどれほど有意義だったかと戒めています。

言い訳したくなる自分に、私はこの言葉を言い聞かせています。

「頑張っているつもりでも、稼いでないと意味ないよ?」