日本海で獲れるズワイガニは、滋味あふれる豊潤な味覚で全国的にも知られています。特に、福井県が昭和の時代から打ち出した「越前ガニ」の名称は、広く浸透し、首都圏や関西圏では抜群の認知で、平成の頃から日本海沿岸の各県で水揚げズワイガニのブランド化が始まりました。
いくつも地域ブランド蟹がある中で、東京周辺では、「越前ガニ」と「松葉ガニ」がツートップで、それは出荷額にも反映されています。
石川県はやや遅れて「蟹」のブランディングをスタート。
私の住む石川県は、このような状況を受けて、北陸新幹線金沢開業前にブランド化に着手しました。結果、石川県では、雄のズワイガニを「加能ガニ」、雌のズワイガニを「香箱ガニ」と呼び、ある一定の基準を満たした蟹にはブランドを示すタグを付けて、市場に出荷しています。
金沢市もこの動きに同調し、雄のズワイガニを「加能ガニ金沢」、雌のズワイガニを「金沢香箱」と呼称するようになりました。甲羅幅が基準以上で、足折れがなく容姿端麗なものは、ご祝儀相場で高額で競り落とされ、話題となります。
今年は11月8日から市場に出回り、地元民が競って購買し、SNS上には蟹の話題が次々と投稿され、この時季を彩ります。
特に、雌の「香箱ガニ」は、卵を持ち、やや小ぶりの体に身が凝縮し、旨味が豊かで多彩、しかも、雄に比べる値段が安いので、地元消費者には絶大な人気があります。でも、「金沢香箱」は、資源保護のため11月8日から12月22日までしか獲ることができないので、旬が短く、その分、市民消費者はもったいないような感覚で大事に食す風潮があり、今では金沢を代表する冬の味覚となっています。
そんな海の恵みを食で感じてもらおうというイベントが始まっています。
金沢市内の人気実力のレストラン7店が、その二つのブランド蟹を使ったコースを創作し、期間中、提供する「金沢香箱×加能ガニ金沢in金沢蟹ディナー」が11月8日からスタートしました。「金沢香箱」で一品、「加能ガニ金沢」で一品、が含まれたコースは、それぞれのレストランの創作意欲と個性が感じられるこの時季ならではの特別なものになっています。
カニと言えば、和食のイメージが強いのですが、食材としての多様な魅力を訴求するために、金沢市と金沢市漁連が協力して、あえてレストランとコラボしたイベントです。12月22日までの開催となっています。
さて、「加能ガニ」が「越前ガニ」をキャッチアップするのは、いつになるでしょうか。