進むプロスポーツの「エンターテイメント化」の話

今回は、日本におけるプロスポーツの「エンターテイメント化」の話をしたいと思います。

■ 日本のプロスポーツのエンターテイメントの現在地

スポーツといえば、日本においては、まだまだ競技的。いわゆるスポーツで行われている競技を思い浮かべる方が多いのが現状ではないかと思います。

そして、日本のプロスポーツといえば、プロ野球に始まり、Jリーグが特にメジャーですよね。

プロスポーツといえば、興行として、チケットが有料であるというポイントで、観に行くものが試合(競技)であるというのが2000年代までの流れでした。

そこに競技以外での盛り上げ、つまりライブ感であったり、煽りVと言われる盛り上げ演出が加わり、エンターテイメントの風を吹かせたのが、K-1であり、総合格闘技のPRIDEであると思っています。つまり、ここ20年の近年での話です。

特に2010年代、もっと言えば、2013年の東京五輪が確定したあたりからの日本のスポーツに大きなウネリが起きています。つまり、スポーツのエンターテイメント性の向上の話です。

■横浜DeNAベイスターズの復活劇

近年のプロスポーツ興行において、特筆するスポーツの事例で言えば、横浜DeNAベイスターズの復活劇です。長年赤字続きであったベイスターズが、たった5年で約2倍に迫る集客に成功させ、黒字化を達成したのです。

プロ野球と言えば、いわゆるエスタブリッシュメントな世界。つまりは、長年蓄積された高品質さがある一方で、変化の少ない(変化を好まない)安定感のある世界です。

そんな中で、横浜DeNAベイスターズは、あらゆる変革を実行し、黒字化を達成させたのです。近年のスポーツビジネスでの一番の成功事例と私は考えています。

黒字化の背景にはさまざまな要因があると思いますが、その一つが「エンターテイメント化」です。一言で表すならば、競技自体の試合を楽しむ価値というものをもっと広義で捉え観客の「体験価値」の部分にフォーカスを当て、試合以外の要素も存分に楽しんでもらう、つまり空間全体を提供価値に仕立て上げたのです。

プロ野球での1試合でボールが動いている時間、つまりピッチャーが投げたボール、バッターが打ったボール、守備でボール回しの時間をトータルで考えると、7分とか長くても10分くらいしかない。むしろそれ以外が静と動で言えば、静の時間が多いので、まったりと試合観戦ができる。

■“アクティブサラリーマン”にターゲットを絞り、試合中や試合以外のエンターテイメントを強化

それならばと、横浜DeNAベイスターズは、野球の試合会場を単純に野球場ととらえるだけでなく、居酒屋の延長線上で、野球がおつまみ的に存在する試合観戦を許容する動きがあっても良いのでは、という切り口であらゆるサービスを展開したのです。

そして、その居酒屋的な雰囲気を踏襲する意味も込めて、“アクティブサラリーマン”という、いわゆる平日休日問わず、余暇に対しても活発な社会人にターゲットを絞って、アクティブサラリーマンが喜ぶ施策を展開。さらに、試合中や試合以外のエンターテイメントを強化。イベントを連発。花火を打つ。そういうことを繰り返して、試合だけじゃなく、試合以外でも楽しむ要素を付加。これらの積み重ねによって、たった5年で黒字化、さらには観客の倍増を達成させたのです。

プロ野球のように、何年も歴史が積み重なった組織というのは、抜本的な変革が難しい、つまり変化にスピード感が求めにくいプロ野球のようなスポーツにおいて、これだけの短期間で成果をあげた横浜DeNAベイスターズは本当すごい事例であると考えています。

■ アリーナスポーツにも「エンターテイメント化」の波が来ている。

冒頭でも触れました通り、日本のプロスポーツに、エンターテイメントの風を吹かせたのがK-1であり、総合格闘技のPRIDEであると思っていて、つまり、競技を軸にするだけでなく、競技に関わるすべてをショーアップしていくという発想で興行が行われています。つまり音楽アーティストのライブのような創り込みで演出が施されているのです。

この2つの団体は、今はK-1の場合は、新生K-1に引き継がれ、PRIDEの場合は、RIZINへと形が変わりましたが、それぞれが今でも日本の特にアリーナ型のスポーツエンターテイメントを引っ張っていると考えています。

(Photo by Tsutomu Sato / 千葉ジェッツふなばしのアリーナ演出)

具体的には、試合前後のショーアップは前提として、選手自身をキャラクタライズする、試合前の煽り映像、記者会見も見事です。有力なマッチメイク(対戦)の試合の場合は各地で記者会見を繰り返し、注目度を上げて行く活動も行われたりします。

いかにして、そのスポーツの注目を集めるのか、言い換えれば、そのスポーツの価値向上に繋げられるのかを考えてあらゆる活動が行われているのです。

■ スポーツ競技のアリーナ演出がこれからスゴくなる

直近のエンターテイメント化の事例としては、日本の「スポーツビジネス」の現在地とこれからを考えるの記事でも触れましたが、Bリーグ千葉ジェッツふなばしの試合のアリーナ演出は、スポーツの試合でありながら、音楽ライブのような空間になります。

前述したK-1や、PRIDEだけでなく、こうした他のプロスポーツにもそうした空間演出がなされるようになってきています。

そして、これは今週末の3月23日 & 24日の試合なのですが、上記で名前を上げさせていただいたBリーグ千葉ジェッツふなばしの千葉ジェッツ vs 秋田ノーザンハピネッツ の試合で、私がプロデューサーを担当させていただく、ド派手なハーフタイムショーをやらせていただきます。

このハーフタイムショーは、おそらく国内発のスポーツ系ハーフタイムショーで国内最大級の規模になると思います。ド派手にやります。

(Photo by Kazunori Arai)

従来の国内のプロスポーツのハーフタイムといえば、休憩や、観客参加型の催し物が行われるのが基本的でしたが、ハーフタイムをも、極上のエンターテイメントにしていこうという動きがあるのです。

数年前から、より経済規模の大きいプロ野球にエンターテイメント化の流れは来ていましたが、これからは室内のアリーナでは、音響や光り物の演出がくわえやすいという利点を活かし、よりパワーアップしていくのではないでしょうか。

私もその波に乗る側でもあるし、波を起こす側でもあるわけですが、日本のスポーツのエンターテイメント化に向けてより一層盛り上げに貢献していきたいと考えています。

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Fumiyoshi

SHINGO KURONO

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