秋田県横手市の未来を信じて。「このまちで子どもを育てたい」と言われるまちづくり

「このまちで子どもを育てたい」と言われるまちづくり。

私が地元である秋田県横手市の地域づくりに関わって、早くも10年目を迎えようとしています。
震災直後の2011年3月21日にTwitterをはじめたことがすベてのきっかけになりました。

日本で初のTwitterでまちおこしをするNPO法人Yokotterが秋田県横手市にあったこと、そして横手市、秋田県のまちに関わる先輩方が私を受け入れてくれなければ今の自分はなかったと思います。

そして、この2020年9月からNPO法人Yokotterの正会員として一歩踏み込んだ関わりをしていくことになりました。

Yokotterのグランドデザインは、このまちで子どもを育てたいと言われるまちづくり。

私はこのメッセージを、どんなに素晴らしいブランドや企業のコンセプトやビジョンよりも、圧倒的に美しいものだと強く信じています。

NPO法人Yokotter:https://yokotter.com/

その地域のみんなが地域の経済を支える一員である。

一度横手に帰った時に、紹介していただいた駅前の美容室で髪を切ってもらったことがありました。
オーナーさんに切ってもらったのですが、髪を切ってもらいながら、なぜ地元でお店を出しているのか、というお話をしました。

オーナーさんは、自分の地元のために何かできるんじゃないかと思って帰ってきたとのこと。
自分で技術を学び、独立できる力をつけて地元に帰り、地元の日常生活を支えるお店として、そして地域経済を構成する一人として立派に活躍されているんだなと感じました。

しかし、そのオーナーさんとしては今まで何もそれらしいこと、いわゆる活性化のように地元の横手に貢献するようなことは自分ではできなかったとおっしゃるわけです。

私はそんなことはまったくないと思いますし、何より独立して、地元の横手市で地域の経済活動を構築する一人になっていることにリスペクトを送りたいと思っています。
何より地元にちゃんと納税していることで十分社会的な役割は果たしています。

地域を活性化すること、まちが元気になるための活動に何か高いハードルがあり、そういった活動をするプレイヤーになることが特別になっているんじゃないかなと感じた出来事でした。

この出来事から考えたことは、地域がどうとか、まちがどうとか、そういったいわゆる地域活性化の活動は何も特別なものではないことをもっと認識してもらうことが第一歩なんじゃないかということです。

私は、その地域で過ごしている人たちはみんな地域の経済を支えている一員だと考えています。

日常生活に落とし込んで考える。

公務員として地元のために仕事をしている人、地域のイベントやボランティアをしている人、地域に関する事業をしている人、もちろん素晴らしいことだと思いますし、それ以外の人に比べたら思いが強かったり、貢献度のようなものは高いのかもしれません。

ただ、そういった人たちも、自分の生活を維持するための日常生活の中の仕事として、趣味の延長として携わっていることを改めて認識してもらうと良いのではないかなと考えました。

そして、日本を支えているのは中小企業です。

日本国内の99.7%が個人事業主を含む中小企業で、日常の維持に必要なサービスや商品を提供しています。

つまり、地域の元気を維持しているほとんどの方は中小企業で活躍されている方々ということになります。
地域において平和で健やかな日常を過ごすこと、地域で物を買ったり売ったりする経済活動を行うこと、それだけで地域経済を構成する一員になり、地域を活性化することにつながっているわけです。

特別に何か自分で起業したり、企画したり、0から1にすることをしなくても、地域で楽しく生活をする方々がいてくれるという基本的なことが大切です。

年齢も性別も、経歴も職業も、何も関係ありません。

その地域でその人らしく、その人の意思決定で楽しく暮らせる地域が良いのです。

子どもを育てたいと思えるまちとは

さて、Yokotterが掲げる「子どもを育てたいと言われるまちづくり」に表現される子どもを育てたいと言われるまちとはどんなまちでしょうか。

様々な解釈があり、これという正解に決めるのは難しいですが、子育てをする家族が楽しく暮らせるまちであると考えています。
普通の日常が豊かに、ちょっとした彩りがあるような、そんな暮らしなのではないでしょうか。

例えば、自分の得意なことが生かせたり、やりがいを感じられる仕事に関わることができること、そして休日や自分の時間には楽しいと感じられる活動や趣味ができること、家族としての時間が確保できること、そういった基本的な生活ができるまちだと思います。

しかし、全国各地の地域で住む人たちの中で、心からそう感じている人たちは少ないのかもしれません。

しょうがなくそこで暮らしている、お金に余裕がない、本当にやりたい仕事がない、自分や家族の時間が少ない、などなどいろいろな課題があるように感じます。

普通の人が普通に楽しく暮らせるまちをつくる。

上記のような課題を解決するために、地域でできる仕事や楽しめるアクティビティを増やしていくことが必要です。これに関してですが、私はすべてを地域資源を生かして仕掛ける必要はないと考えています。

意識が高いことや感度が高いことは良いことですが、そうあるべき必要もなく、地域社会にはそういった人ばかりいるわけではありません。

いわゆるチェーン店であったり、ジェネリックなお店、仕事も大切です。
大企業が展開しているブランドが悪ではなく、まちに適切な割合やバランスを考えてまちをつくっていく視点が必要と考えます。

チェーン店ばかりでは特徴のない街になってしまうでしょうから、他の地域にはない特徴があるお店があったり、その地域でしか楽しめないアクティビティがあったり、そういった彩りのようなものをまちに点在させていくと少しずつまちが成長していくように感じます。

東京などの首都圏への一極集中の状況が見直され、地方での生活に注目が高まっている今。
これから10年の間で、今後の将来に自分たちの地域がどんな地域でありつづけるべきなのかを本気で向き合っていかなければいけない段階にきています。

好きなお店がある、行きつけのお店がある、一緒にいて楽しい人がいる、家族との時間を豊かに過ごせる、そういった普通の日常生活での楽しさをまちの機能として維持したり、新しくつくっていくことが必要なのではないでしょうか。

Uターン?移住?住むだけが正解ではない。

新型コロナウイルスの影響もあり、Uターンや地方移住が話題になることが増えてきました。

人生の中での大きな決断になるでしょうし、リスクよりは自分の人生が豊かになるきっかけになる可能性的な一面も大きいと思います。

しかし、みんながみんなUターンや移住をしなければいけないわけではありません。
私は元々、よくある安易な移住定住促進の施策に関して懐疑的に思ったりする部分があります。

その地域に関わるにはそこに必ず住まなければいけないという決まりはありません。
東京にいながら、大阪にいながら、あるいは国外にいながらでもその地域に関わり、まちに参加したり、まちの活動をすることだってできます。

そういった多様性を取り入れていく視点が不足している地域が多いのも実情だと思います。
加えて、地元を離れても地元を思い続ける人は少なくありません。そういった方々に地元に関わり続ける安心感を提供する仕組みも大切です。

副業、兼業、リモート、県人会、2拠点居住、観光、などなど地域には多様な関わりの可能性があります、都市と地方の橋渡し役も必要です。
決めつけず、自分が心地よい関わりを見出せる地域と付き合っていくのが良いのかもしれません。

地元がなくなるのはいやだった。

私も全国各地の様々な地域に関わってきましたが、やはり原点は地元の秋田県横手市にあります。
人口も減り、地元のお店も少なくなり、学校がなくなり、耕作放棄地が増えています。
当たり前のように、増田レポートでの消滅可能性都市になっていました。

国からしたら、消えてしまえば楽になると思います。
莫大な税金を投入して維持し続けている地方都市、いわゆるお荷物です。

でも、地元がなくなること、つまり自分のルーツや思い出が消えてしまうのはあまりにも悲しすぎます。そしてその地域で生きたいと思っている人もいます。
すべてが最適化されて効率的に進めばもっと良い未来があるのかもしれませんが、人間である以上、感情をもったりできる心があります。余白やゆとりが必要です。

機械的に生きるのではなく、いろんな無駄があったらいいなと思ったり、可能性が低いけれども選んだら楽しそうな選択肢があったり、自分の中で大切に思える何かがあったり、人間らしく生きていくことができればいいなと考えています。

私は自分のために地元に関わり続けています。
50年後、100年後にも残り続け、豊かで彩りがある地元であってほしいからです。

課題先進国である日本で、難しい挑戦を仲間と続けていきたいと思います。

========================

照井 翔登(TERUI SHOTO)

ファンドレイザー・コミュニケーションデザイナー。
照井デザイン事務所代表
HP:https://www.terui27.jp/

Twitter:@terui27
Instagram:@terui27
Facebook:shoto.terui

=========================

□ ANOTHER STORY

MASAKO TAKANO

さなえごはん

SHINGO KURONO

SHINGO KURONO