寄り添い、そして花を添える酒

今年も残り一ヶ月余りとなった11月下旬。新潟は、この一週間大荒れ続きだ。
横殴りの雨で、傘は全く意味をなさず崩壊。仕方なくビショぬれのまま、家路に着く。
これからの3ヶ月は、青空を拝むことがほとんどできない新潟。
また今年も一番過酷な時期がやってくる。毎日のように曇り空の日々が続き、気持ちが沈んでしまう人たちも多い。

そんな大荒れの日ではあったが、ニューヨークから半年ぶりに帰郷した私には、この雨がどこか懐かしく、ホッとしていた。10月17日のカーネギーホールでのコンサートは、本当に演奏したのかな?夢だったのかな?という思いがしばしば巡ってきて、未だ夢か現実かわからない錯覚に陥る。やはりそのくらい奇跡的だったということなのだろう。

さて、帰国後二週間待機ということもあり、ひとりぼっちの夕食がしばらく続いた。まずは、一人鍋。寒さが過酷にはなってくるが、鍋が美味しい時期になってきた。


お供には、ふなぐち菊水一番しぼりスパークリング(ふなスパ)。だしの効いたおでんや鍋と合うのはやはり日本酒だ。まずは、ふなスパを一口。微炭酸が口の中に広がり、その後にふなぐちの香りとフルーティな甘さが伝わる。派手さを抑えた比較的すっきりとした爽やかな味わいなので、水炊きなどの素材の味を活かしたシンプルな鍋にピッタリだ。
シャンパングラスやワイングラスに注いで、スパークリング日本酒としても楽しむことができるのではないだろうか。鍋パーティの乾杯酒としてもおススメである。

帰国後最初の二人会

さて、二週間待機も終わり、一番楽しみにしていた二人会に行ってきた。ジャンルは違えど、お互いの仕事を尊敬し、高みを目指して切磋琢磨できる同志の存在は、本当に心強い。帰国後の最初の二人会は、寿司と決めていた。新潟で寿司と言えばここだと決めているお店がある。ここでは、‟新潟らしい”お寿司を食べることができる。鮮度抜群の地元素材とこだわりのシャリとのバランスが絶妙で、もちろん味も最高だが、決して敷居が高いわけではなく気負いを感じさせない。そのすべてが一流だ。

寿司に合うと言えば、すっきりとした味わいの辛口。‟菊水の辛口”を燗で飲むのもありだなと思っていたところ、ここで突然のサプライズ!なんと、私の一番すきな‟無冠帝”を特別に用意してくれていたのだ。 なんて粋な演出だろう。芸術を感じさせる寿司と気配り。最高の居心地の良さはやはりこの‟間合い”なのだ。

‟無冠帝”のふっくらひろがる旨味と、寿司の味を邪魔しないすっきりキレのあるテイスト。おいしい寿司と、冴えるキレの中に優しい甘味の無冠帝で、さらに会話の花は咲いた。

どんな料理にも寄り添い、私にとっての嬉しい日にいつもさりげなく花を添えてくれる、そんなお酒だ。

ニューヨークでの半年は、私の既存の思考領域を越える変化をもたらしてくれた。ホンモノはいつも想像の一歩先にある。その経験を、新潟の文化芸術発展のために活かしていきたい。

堅い話は、また年末にゆっくりするとして、今宵も大荒れの新潟、ふなぐち菊水一番しぼりの緑缶新米新酒で、おでんを頂くとしよう。

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SHINGO KURONO

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Saki Nakui