こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。
弊社は私を含めた4人のスタッフで運営をしています。代表が私hatao、そして同僚はそれぞれ5歳ずつ年齢が離れており、一番若いスタッフは20代です。今回は弊社のようなスモールビジネスの組織論についてお話をします。
体育会系のワンマン社長のもとで働いた経験
私が20代で務めた会社は、アイルランドの商品に特化した社員数名のニッチなスモールビジネスでした。現在のようなIT立国になる前のアイルランドは、良質な羊毛を使ったセーターやマフラーなどの服飾産業と、黒ビールやウィスキー、アイリッシュ・パブを象徴とする飲食産業、遺跡や断崖や緑の丘といった資源を活用した観光産業を主力産業としていました。私が働いた会社では、アイルランドから衣料品やおみやげ品などを輸入販売していました。
会社はバスケットボール部で鍛えられた当時60代の男性社長がワンマンで経営しており、社内には社長に意見できるような人はいませんでした。取引先は社長の交友関係で、スタッフ採用も社長の知人関係から。プロジェクトもその日の業務内容も社長の気分次第で決まります。朝令暮改は当たり前。社員は社長の指示で動き、勝手な行動は認められませんでした。自分の考えで働きたい私は、そんな社長とたびたび激しく衝突したのでした。
文化系出身、バンドのようなフラットな組織を目指した
学生時代から文化系で育ち、体育会系の上意下達のノリに馴染めない私には、年齢関係なく一緒に楽しむ音楽の世界が心地よく感じます。音楽の世界では年齢は関係なく、センスや好みや相性が実力と同じくらい大事です。体力や技術力や年数で序列が決まるスポーツとは異なり、音楽家同士はお互いを尊重しあって一緒に音楽を作る仲間です。
起業するにあたり、私はバンドのようなフラットな組織を目指しました。バンドでは共通の目的のためにお互いがそれぞれの強みを活かし、弱みを補い合い、それぞれの担当パートに真剣に取り組みます。
弊社は、全員が「ヨーロッパ伝統音楽の楽しみを広める」という目的を掲げており、私は経営と輸入を、スタッフそれぞれはインターネット通販や店舗、SNSマーケティング、顧客対応などを担当しています。私はバンドで言えばバンドリーダー、あるいはバンドの顔となるボーカルのような存在です。私が他のフタッフよりも立場が上だとか、指導をする上司であるという意識はありません。ですので、何かを決めるときは4人で合議しますし、スタッフに仕事を依頼するときも業務命令ではなくお願いや相談をする形を取っています。それぞれのメンバーから積極的にアイデアを出しあい、全員で話し合って決めています。
スモールビジネスの社員教育は非効率
先日、弊社のスタッフが不祥事を起こしてしまいました。致命的な不祥事ではありませんが、想定外のことだったので、ミスの背景になにがあったのか聞き取り調査をし、指導をした上で、けじめを取らせるために初めて減給の懲戒処分をしました。
私はこのような指導の時間を非常にもったいなく感じました。一般企業であれば社員の研修や育成は重要な業務ですが、たった4人の弊社にはそのようなことに時間を割くリソースはありません。先程のバンドメンバーを例にすると、ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4ピースのバンドで、ボーカリストである私がギターの演奏を指導するようなものです。
バンドでは、自分の担当パートではない楽器の演奏に対して指示を出したり口出ししたりということは基本的にはありません。各自がセンスとテクニックを総動員してベストを尽くしバンドのサウンドを作ります。メンバー間の信頼関係があって初めて、良いサウンドが仕上がります。
しかし今回のような不祥事は、ライブ会場にメンバーが現れないような事態です。演奏でミスをする程度であれば他のメンバーがリカバーできますが、さすがにライブ会場に来ないことは想定しておらず、守りきれません。実際のバンドであれば、即刻やめてもらい、新しいメンバーを探すでしょう。
私が目指すフラットな組織というのは、それぞれが自立していなければ成立しません。見方によっては、先輩が後輩の面倒を厳しく見てあげる体育会系組織のほうが優しいとも言えるのです。
組織のカルチャーを理解できる人と働こう
小さな会社は、縦社会のワンマン組織とフラットなバンド組織があります。私達はそれぞれ育った環境が異なりますから、先輩後輩の中で自分の立ち位置がはっきりしていたほうが能力を発揮する人もいれば、自由である代わりに相応の責任も求められる環境でのびのびと個性を発揮する人もいます。どちらが良いということではなく、組織のカルチャーだと考えています。
スタッフを採用する際には、自分たちの組織のカルチャーを理解してもらうように努め、見合った人材を採用しなくては、お互いを活かし切ることは難しいでしょう。