配色を考える-色のボキャブラリーを増やすための資料-

配色って難しいです。

単純に調和の取れる色の組み合わせを考えるのも難しいのに、オレンジは温かくて青は冷たいとか意味やイメージを持った色の使い方はどうするのか、とか。ライティングによっても変わるしな、とか要素が多いです。更に3DだとRGB値で見れば1色でも、光が当たる部分と影とで最低2色に増えて見えるというマジックが起こります。

私の場合、描くモチーフの形状をデフォルメして情報を絞っているので、色の情報量が多いとモチーフが色に負けてしまいます。加えて3Dマジックの影響もあるので、配色を考えるときは色数をできるだけ少なくなるようにします。

その代わりに、同じRGB値の中で光沢感やテクスチャを変えて、仕上がりの表情が均一過ぎてつまらない絵にならないように意識しています。

▼過去作品のカラーパレットで解説

配色は最初に背景色を決めてから、それに合う色を探します。
背景色に対して明度/彩度差のある色を(際立たせたいモチーフに使う為に)1色入れるのが好きなので、その色を手がかりに組み合わせを考えたりもします。

3Dではライティングや質感によって同じ色の組み合わせでも見え方が変わってくるので、私の場合は色ベタのカラーチップとにらめっこするより、空間写真や立体物を見て参考にすることの方が多いです。色に困った時には好きな家具ブランドのカタログをめくったり、色や質感が好きで買ってきた文具や置物を眺めたりします。

困った時に眺めているもので、WEBでも見れるもののを少しご紹介します。

 

● muuto

画像出典:https://muuto.com/(Catalogueより)

muutoはインテリアブランドなのですが、低彩色の使い方がとても気持ちいいです。

シーズン毎に更新されるWEBカタログは、家具単体ではなく空間に置かれた状態での写真が多く、特に参考になります。1枚の写真としてトリミングした時の、画面内の色面積比が計算されています。

全体的にグレーの空間に、パリッとした元気なサーモンピンクとかオレンジを合わせて、その2色の目線の間に渋いワインレッドを入れたり…と、空間として捉えた時の色の繋げ方も気持ちいいです。

実際の製品の質感も好きで、特にトラッシュボックスやプランターで使っているプラスチックの手触りが最高です。少しゴム質のあるベルベットのような滑らかな感触で、マットと半光沢の間のような絶妙な光沢度合い。真似したい質感です。

 

● kvadrat
画像出典:https://www.instagram.com/kvadrattextiles/

数年前に貰った「DIS-PLAY」というコレクションのカタログを何度も見ています。WEBでも一部アーカイブが見れますが、ダークグリーンの布にピンクのステッチ、ネイビー×ブラウンなど、自分の発想には無い組み合わせの気づきがたくさんあります。

あえてURLをインスタグラムにしたのは、製品だけではなく彼らのインスピレーションを覗き見できるからです。kvadratやRonan Bouroullecのインスタグラムを見ると、身近な街並みとか自然界からも配色のインスピレーションを得ていることに気づきます。私も真似して、なんとなく気持ちいいな〜と感じた色の組み合わせを写真で残すようになりました。

 

● Woonyoung Jung氏

画像出典:https://www.instagram.com/woonyoungjung/

がっつり2Dですが、色のまとめ方がかなり理想で好きです。絵の中に漂う空気に色があって、その色が画面全体を緩やかにまとめてる感じ。私はこういう表情を3DCGで出すために、背景色が反射するステージとかライティングを試行錯誤しています。

RGBカラーが効いてるのもデジタル着彩ならでは。鮮やかな蛍光色をピリっと入れたり、高彩度のパステルカラーをぶつけ合う配色は、RGB値で描いてたものを真っ平らでテクスチャのないモニター越しに光を通して見ることで抜群に活きるなと感じます。

この方を知ってパステルカラーの多色使いを試してみるようになりました。蛍光やパステル系は光をよく反射させるのですが、背景色に使うと空間が澄み切った空気で満ちる感覚があり好きになりました。
似たような話で、原色の赤や黄色は反射が強く陰影の差があまり出ないので、主にパターンなどの平面的もしくはアイコニックに見せたい絵によく使っています。

 

好きな色とか無意識でいつも使ってしまう色はどうしてもあるので、そこに凝り固まらないように、色のボキャブラリーは増やしていきたいと思います。

□ ANOTHER STORY

Naoya Hanaoka

SHINGO KURONO

sumida

SHINGO KURONO