稼ぐのは、”儲からないこと”をやるため

皆さん、こんにちは。ケルトの笛のhataoです。

ちまたでは少しずつ以前の賑わいを取り戻しつつあり、音楽家たちの活動も少しずつ再開しつつあります。先日、私は3ヶ月ぶりの感動的なコンサートを行い、今週末は広島に演奏旅行に行くことになっています。

相変わらず和歌山県の山間部の家と行ったり来たりの私。都市での活動が増えてくると移動の効率が悪いため、音楽活動休止を続けるのか、田舎暮らしを諦めるのか、難しい選択を迫られています。

まだ完全にコロナの危機が去ったわけではありませんから、いつまた自粛を求められるともわかりません。

さて、ずいぶん前になりますが、1か月遅れながらも去年の確定申告を提出しました。スタッフやお客様のお陰で、楽器店や個人の活動を合わせた営業利益は右肩上がり成長を続けることができました。

出版や楽器販売事業を手がけ始めて10年

音楽家として出発した私ですが、10年ほど前から出版や楽器販売の事業を手掛けるようになり、今ではスタッフが自分を含む4名、店舗が3つと海外代理店1つにまで拡大しました。小さいながらも、事業を継続できており、本当にありがたいことです。

音楽家としての私はとても不器用です。派手なことはしない、着飾ったり演出もしない、喋るのは苦手、人付き合いは苦手、お客様のリクエストにも答えない、自分のやりたい音楽しか演奏しない、という偏屈もの。

世の中の売れる音楽家とは対極です。その上、演奏するジャンルはケルト音楽という狭いマーケット。人気商売の音楽家として到底やっていけるとは思えません。

しかし偽りの自分を演出して、顔を合わせたくない人と一緒に、自分のやりたくない曲を演奏してまで、音楽家でありたいとは思いません。そんなことをしていたら、すぐに心を壊してしまいます。だから会社員ではなく音楽家の道を選んだのです。

生き方にわがままを通そうと思うのなら、やり方に工夫が必要です。誰にも頼らずに経済的自立をするしかありません。ですから、自分の好きな音楽で、満足な収入を得られるように起業する道を選びました。

起業するにあたり、アイルランド音楽の笛というニッチなジャンルですが、その世界に関しては日本で誰よりも詳しく、有能になろうと思いました。海外の文献を読み漁り、海外を旅して音楽家を訪ね回り、楽器をたくさん買い集めて知見を得ました。これまで何百人という生徒に音楽を教えてきました。そうやって蓄積した経験やノウハウはお金では買えない強力な武器になりました。

事業をやるからには、稼ぐことに集中します。自分が売りたいもので、かつお客様が求めるものが重なる商品を探してきて、販売に力を注ぎます。それは、しっかりと稼いで、「稼ぎを気にせずにやりたいことをやるため」です。

ただ良い音楽を作って演奏したい。そのための事業

起業して10年、いつしか楽器店の収入が音楽家としての収入を上回りました。そんな自分はもはや「職業音楽家」とは言えないのでしょう。しかし、時間的・経済的なゆとりが増えたために、以前のように生活の不安や将来への不安をかかえることなく練習ができるようになり、気になる楽器や音源を自由に買うことができ、書籍を読んだり書いたりして研究に費やせる時間が増えました。

自分の軸足はあくまでも音楽家です。儲かるとか儲からないとかを音楽に持ち込まずに、ただ良い音楽を作って演奏をしたい。そのために事業をしています。

かつてヨーロッパの王宮や貴族はパトロンとして音楽家を養っていたといいます。豊富な資金援助を受けて、音楽家はひたむきに芸術に打ち込むことができました。現代でそのようなことは実現不可能なので、事業家としての自分が、音楽家としての自分のパトロンになった、そう考えています。

今、自分は約20年の音楽人生の中で最も自由で、幸せです。

好きなことだけして生きていたい、という人は多いと思います。やり方次第でそれは充分可能だということをことを、この連載で伝えたいと思います。

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