商品開発はお客様の「困った」がヒント 〜ロー・ホイッスル「イニシア」を例に〜

こんにちは! ケルト音楽の楽器店を経営しているフルート奏者のhataoです。

この連載では、零細企業の経営について、私が実践していることや学んだことをわかりやすくお伝えしています。

本連載ではこれまで2回にわたり、オリジナル商品を持つことの経営への絶大なメリットについてお話してきました。シリーズ最終回となる今回は、私がどのようにオリジナル商品を開発しているかについて経験をシェアします。

ロー・ホイッスル「イニシア」開発の経緯

当店でこの春に発表したオリジナル新製品が、ロー・ホイッスル「イニシア」です。ロー・ホイッスルは、60cmくらいの金属製の縦笛で、短い縦笛ティン・ホイッスルの1オクターブ低い楽器です。

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ロー・ホイッスルは映画「タイタニック」のイントロでも聴くことができ、柔らかく哀愁を帯びた音色はとても人気があります。一方で、演奏においては身体的な負担が大きく、挫折する方も多いようです。

挫折する最大の理由は指孔の幅が広すぎて押さえきれないこと。そして息の消耗が激しく吹き続けていられないということです。以上の2点はよく指摘されていますがそれに加えて私は、楽器を短く分解できないためにいつも外出時にカバンから飛び出してしまい携帯が不便だと感じていました。

そこで、大阪で金属加工を手掛ける町工場の技術者の方と協力して、「初心者でも吹きやすいロー・ホイッスル」をコンセプトに商品開発をしました。

イニシアは押さえやすい位置に指孔が開けられており、楽に吹くことができます。またロー・ホイッスルとしては業界で初めてだと思うのですが、3分割できるようにデザインにも工夫をしました。

価格面でも他の製品との競争力がつくように、ロー・ホイッスルとしては安価な約3万円という価格設定にしました。4月の発売以降、イニシアは常に予約で納品をお待たせするほど好評を頂いています。

お客様は何に困っているのか?

商品開発には「プロダクト・アウト」と「マーケット・アウト」という2つの手法があります。

メーカーが作りたい商品のイメージが明確にあり、売れるかどうかは未知だが先に商品を作ってしまうのがプロダクト・アウト。お客様の声など市場のニーズを汲み取って、商品開発に活かすのがマーケット・アウトです。

私が生み出す商品はどちらの場合もありえますが、前回の「どこでもパイプス」や今回の「イニシア」は、どちらかと言えばマーケット・アウトの手法によって生み出されています。

「どちらかと言えば」というのは、お客様から明確にこのような商品がほしいという声を聞いたわけではないからです。しかし音楽教師としてレッスンでたくさんの生徒さんに接するうちに、また楽器商としてたくさんの製品に接するうちに、お客様が潜在的に欲していて、かつまだ市場にないものがはっきりとイメージできるようになったのです。

また店員としてお客様に接する立場であればお客様のご要望を直接聞くことができるので、売りやすい商品と売りにくい商品の差がどこにあるのかを考えることが商品開発のヒントになるでしょう。現場の声を商品開発に活かす、自分自身が現場に立つ、市場の商品を知り尽くすというのが商品開発の基本です。

誰も思いつかないような突飛なアイデアはそうそう生まれるものではありませんが、すでに市場にある製品の中で「自分だったらこうする」「ユーザーとしてこんな商品があれば嬉しい」という改善点が見つけられるのであれば、ヒット商品が生まれる確率が上がります。

次に手掛けるオリジナル商品は

次に手がけているのは、オリジナル・モデルのコンサーティーナです。コンサーティーナについては本連載でも昨年にご紹介していますが、当店で取り扱っている輸入品は海外の代理店を通じて輸入しているもので、初期不良や故障が多く、代理店のサポート体勢が手薄なために販売後のカスタマーサービスに手こずった苦い経験があります。また故障した際に部品が調達できない点でも、サポート環境が不十分でした。

問題が起きた時、学ばなければ永遠に解決しない

こちらの記事を書いてから一年。ついにOEM生産ができるメーカーを探し出し、いよいよ最初の商品が入荷するところです。メーカーと直接つながれば、部品の調達や細かな調整も可能となります。これによりユーザーの利便性が向上することでしょう。

以上、3回に渡ってオリジナル商品開発の魅力についてお話をしました。ぜひ小売店だからといって萎縮することなく、グッズなど小さなものでも結構ですのでオリジナル商品を手掛けてみてください。仮にヒットしなくても、商品知識が付き、大きな経験が得られること間違いありません。

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MAHOTIM

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Saki Nakui

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