店頭販売での値引き交渉はアリ、ナシ? 値引きのデメリットとは

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店を経営しているケルトの笛のhataoです。本連載では、スモール・ビジネスの経営について、自分の経験や考え方をシェアしています。

店頭での値引き交渉はアリかナシか

今回は経営者として「店頭での値引き交渉はアリかナシか」という問題について考えてみましょう。

皆さんは客の立場として店員に値引き交渉をしたことはありますか?

商品の購入を迷っているときに、店員から最後のひと押しで値引きを提案されたら、ちょっと心が揺らいでしまいますよね。

家電量販店、車両販売店、不動産屋、引っ越し業者、新聞販売店など、値引き交渉が可能だと思われている業種は数多くあります。その中には値切るのが当たり前で、むしろ交渉しないのは損をしていると言われる業種もあります。

一方で病院、スーパーやコンビニ、美容院、公共交通機関などで値引き交渉が可能だと思う人はいないでしょう。このように業種によって値引きができるかどうかが別れていることがあります。

私の業種は楽器小売店ですが、値引きするのもしないのも業者次第だと言えるでしょう。店頭展示品だから、商品が古い型だからといった理由で値引きに積極的に応じて在庫を売り切ってしまう業者もいるでしょう。

もしあなたが私のような小売店なら、値引き交渉に応じるでしょうか。結論を申すと私は「店頭での値引き交渉には応じない」という方針を徹底しています。それには多くの根拠があります。

ここから、「なぜ値引きをしてはいけないのか」「値引きのデメリット」をご説明しましょう。

なぜ値引きしてはいけないのか?(値引きのデメリット)

他のお客様との公平性を損なうから

お客さんAが値引きされたのにお客さんBは値引きされなかった。Bさんがそれを知ったら、適正な価格で買い物をしたのにも関わらずなぜか損した気分になります。

値引きする基準および度合いに一貫性がないから

タフな交渉屋のAさんは5,000円の値引きしてもらい、控えめなBさんは2,000円の値引きで手を売ってくれた。あとで二人が知人であることが分かり、Aさんのほうがなぜ得したのかBさんから説明を求められたら、Bさんを納得させられる説明ができません。

買う人は値引きがなくても買うから

スーパーやユニクロなどの量販店で値引き交渉ができると思っている人はいません。でも人は欲しければ定価でも買います。

値引きで買うと納得感が下がるから

安いのには必ず理由があります。賞味期限が近いから、商品に問題があるから、流行が終わったからなど。
しかし一見、何も理由がないのに店員から値引きを提案されると、お客様は理由を探し始めます。そして何も理由が見つからない時に「値引きを前提にもともと高めの価格設定をしているのだ」という結論にいたり、買い物への納得感とお店への信用が下がります。

値引きでは悩みが解決されないから

購入を悩む背景には価格以外の理由があるものです。なぜなら、本当に必要なものなら少々無理をしてでも買うからです。
その理由とは「買っても続けられるかわからない」「すでに持っている品物でもいいのでは?」などです。それを値引きの誘惑によってごまかされて買った場合、本来の悩みは解決されていないので、不必要なものを買わされてしまったという不満が出てくる可能性があります。

販売コストが上がるから

一度値引きに応じる姿勢を見せると、お客さんは毎回値引き交渉をしかけてきます。その噂が広まると、販売の際にいちいち交渉に応じなくてはいけなくなります。

見た目よりも利益が減少するから

10,000円の商品を2,000円値引きしたとしましょう。商品原価が6,000円だったとしましょう。お店にとっては利益が4,000円から2,000円に50%下がっています。しかしお客様にとっては10,000円から8.000円に20%下がったようにしか見えていません。値引きは利益を直接減少させる行為ですが、お店にとってはかなり無理をした値引きでも、お客様にはそうは見えていないものなのです。

商品が安っぽく見えるから

100円の商品をわざわざ値引きして80円に負けさせるようなお客様はそういません。お客様が値引きされて嬉しいのは、通常価格では手が出にくい高級商品です。
しかし高級商品であるからこそ、値引きされることでブランドイメージに傷がついてしまいます。ブランドバッグやブランド服はセールをしないと言われますが、それはブランドイメージを一番大切にしているからです。
高級なものを買うことでお客様は自尊心が満たされるのです。そのため値引きはブランドのファンにとって、自尊心を傷つける行為となります。

売り方に芸がないから

値引きは商売の素人でも思いつく安易な売り方です。それは砂漠で砂を売るのとは真逆の行為で、売るためのあらゆる努力を放棄しています。少々高くてもお客様に価値を感じてもらい、価格が適正かむしろ安いくらいだと思わせられないのは、販売員としての力量不足だと言えるでしょう。

特別セールなどの効果が薄れるから

日常的に値引きをしているお店は、歳末キャンペーンなどで値引きをする際に特別感が薄れてしまい、お客様にお得感をアピールしにくくなります。普段値引きをしないお店が期間限定で一斉値引きをするからこそ、お客様の購入意欲が高まるのです。

「値引き」という販売手段を有効に使おう

このように「値引き」という行為ひとつにも、様々な視点から考えることができます。

私は店員が気分で値引きをすることには反対ですが、値引き自体が悪いとは思っていません。どんなふうに値引きをすればお客様もお店も得をすることができるのか。値引きという手段を、ぜひ有効に活用していきましょう。

それではまた来月!

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MASAKO TAKANO

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