日本各地の発酵食品 vol. 5 碁石茶

こんにちは。
発酵文化研究所です。

今回は、製造工程で三度も発酵させる、
とても珍しい高知県大豊町の碁石茶(ごいしちゃ)をご紹介させていただきます。

①碁石茶の産地と歴史

日本各地、茶畑は多く存在しますが、
その中の一つ、高知県大豊町で碁石茶は作られます。

余り聞き馴染みのない場所だと思いますが、
四国のちょうど真ん中、吉野川の上流に位置します。

大豊町は、日本一とされる特別天然記念物の大杉、
棚田や雲海など、四季折々の風景を楽しむことができ、
あの「どぶろく」もいただくことができる場所です。

ではなぜ、この大豊町で、
世界でも類をみない発酵茶が作られるようになったのか。

これがまた、発酵の世界ではよくあることですが、
明確な記録があるわけではありません。

しかし、土佐藩の史料である「南路志」に、
江戸時代に主要生産物であったと記録があり、
そこから明治時代までは特産品として珍重されていました。

現在では、過疎化、高齢化、食の欧米化により、
みるみる生産は減り続け、
この伝統を引き継ぐのは、たった一件のみとなっています。

碁石茶

②碁石茶ができるまで

大豊町は寒暖差も大きく、日照時間も長いため、
茶葉の生育条件にはピッタリな場所。

一般的には新芽を摘むイメージですが、
碁石茶は、しっかりと育てて枝ごと刈り取るそうです。
確かに茶葉を見ても、葉が大きいのがよくわかります。

【作業工程】
1,刈り取った枝から葉を取る。
2,取り除いた枝を薪にして葉を、しっかりと蒸し上げる。
3,一度目の発酵(前発酵)
蒸しあげた茶葉を筵(むしろ)に広げて重ねてを繰り返しカビ付け。
※この時の温度管理やカビの状態は職人の技と勘だそうです。
4,二度目の発酵(本発酵)
カビ付け後の茶葉を木樽にびっしり詰めて漬ける。
すると漬物のように乳酸発酵する。
5,乳酸発酵が済んだ茶葉を一寸角に切り出す。
6,三度目の発酵(後発酵)
再び木桶に入れ、足で踏み固めて漬け込み、発酵させ雑菌を防ぐ。
7,一寸角の塊になった茶葉を暑さ5mm程度にしながら干して完成。
この時に、きちんと発酵していれば四角くカチカチに固まる。

と、とても手間のかかるお茶なのです。

この四角く黒い茶葉。
一見、茶葉に見えませんし、とても黒いお茶になりそうですが、
意外にも、とても優しい色合いなのです。

③碁石茶の楽しみ方

しっかりと乳酸発酵しているだけあって、
香りや味に、ほんのりですが酸味を感じます。

とはいっても、とてもやわらかな甘い香りに、
ほんの少しレーズンのような香りを感じる程度。

味わいも同じく、まろやかな甘みの奥に、
後味として酸味を感じるかなという印象です。

慣れない方は急須で低温で入れられるとまろやかです。
少しずつ慣れてクセになってくると、
煮だして少し濃いめにして楽しまれるのもおすすめです。

普段、甘い物を食べないのですが、
塩豆大福に出会うと碁石茶を入れ、
塩味・甘味・酸味を味わい楽しんでいます。

日本の発酵文化を活かした碁石茶。
貴重な存在になりつつありますので、ぜひお試しください。
良い話のネタになりますよ(*^-^*)

□ ANOTHER STORY

さなえごはん

Saki Nakui

Yutaka Yanabu

YOSUKE KERA