私の失敗エピソード〈海外編〉:飛行機を乗り逃し、お金を使い込まれる

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が、起業やビジネスについて、アイデアと経験をみなさんとシェアしています。

1月に和歌山県に転入し て正式に和歌山県民になりました。コロナ禍が始まってから3年間続けた兵庫県と和歌山県との忙しい二拠点生活をやめて、今後は本格的な田舎暮らしをします。ここは携帯電話の電波も入らない山間部、しかも誰も家の前を通らない谷間の行き止まり。買い物に行くのでさえ往復2時間かかります。都会の人はこんな人里離れた場所を寂しく不便に思うでしょうが、私にとってはむしろ心が安らぎ、コンビニや娯楽施設など消費文化から遠ざかることで、じっくりと音楽や仕事に打ち込めると感じています。

ここには3軒の民家と納屋、約1200坪の農地があります。今は、昨年に手に入れた築30年ほどの小さな民家の改修工事を終えたところです。もともと風呂・トイレが無い物件ですが、庭に五右衛門風呂の風呂釜を見つけたので、再生させるべく、風呂とトイレを収める建屋を建てました。主に地元の大工さんが設計、施工してくれたのですが、私も壁貼りなどを手伝い、職人という仕事の面白さ、凄さを垣間見ました。この家は、芸術に打ち込みたいアーティストの長期滞在などに活用していければと考えています。

床を張り替えて、スッキリ。

五右衛門風呂を収めた建屋。壁がなく露天風呂になっています。

そんな田舎暮らしを楽しんでいる私ですが、楽器店経営者としての一面もあります。最近私のことを知った方とお話をしていると、「山奥で隠とん生活をしながら、預金口座にはチャリンチャリンとお金が入ってくるんでしょう?」と、成功者のようなイメージを持たれることがあります。

確かに今こうして山間部でも仕事ができているのは起業から10年かけて手に入れた結果ですが、それまでに多くの失敗や挫折も経験しています。中には公開するのも恥ずかしいものや、辛すぎて記憶にふたをしているものも。今回は、そんな失敗を公開します。

1、 海外で2回、帰国便を乗り逃す


まずは軽いものから。海外旅行にトラブルはつきものですが、みなさんは帰国便に乗れなかったことはありますか? 私は2回もあります。

一つは2010年頃に北京の友人を訪ねた時のこと。私は中国人のマンションに宿泊させてもらっていたのですが、北京国際空港から日本へ帰国する日に、友人宅から空港までの交通を完全に彼に任せていました。というのもその頃はスマホや国際SIMカードは一般的でなく、中国内で日本語のネットを利用することは難しかったのです。また、当時私は中国語が全くできませんでした。

そのため私は帰国便の出発時刻を伝えて、いつどのリムジンバスに乗れば良いかを調べてもらっていました。そうして友人と別れて空港に着いたら……。私の乗るはずの飛行機の預け荷物のチェックインはもう終わっていました。大きな荷物があったので、飛び乗ることはできません。仕方なくまた友人のところに帰って事情を言うと、実は彼は飛行機に乗ったことがなく、飛行機を路線バスのような感覚で考えていたとのこと。

日本に帰れないかもという不安で、私は突然に高熱を出しました。フラフラになり病院に連れて行ってもらい、言葉が全く通じない医者に訳もわからず血を抜かれて、目の前で粉薬を調剤して点滴され、その体験は恐怖そのものでした。そういえば私はその数年後に北京から貴州省への長距離鉄道も乗り逃したのでした……。

もうひとつはフランスからの帰国便。空港まで着いてあとは飛行機に乗るだけ、という段階で、私はもう当分は使わないユーロ現金を使い切ってしまおうと、コンビニで買い物をしました。すっかり気が抜けていたのですが、なんと私が利用する空港ターミナルは空港駅から離れた場所にあり、そこまでのバスで小銭が必要だったのです。運転手にカードで支払えないかと聞くも断られ、またキャッシュマシンを探すも見当たらず、途方に暮れたまま出発時間を過ぎてしまいました。その飛行機はロンドンでの乗り継ぎ便だったため、連鎖的に帰国便も逃すことになってしまいます。

いずれの場合も、その場で空いている飛行機を探してもらい乗ることができましたが、当日のチケットは高額で、大きな代償を支払うこととなりました。

2、 韓国支店を出店するもコロナで中断、資金を使い込まれる

コロナ禍が始まる前、私は韓国、中国、台湾という近隣諸国を頻繁に旅行をしていました。現地でのレッスンやコンサートが目的でしたが、純粋にそれらの国々への好奇心と愛着がありました。

そんな折、韓国でケルト音楽を広めたいという音楽家の友人が、私の楽器や楽譜といった商品を韓国で販売するお手伝いしたいと申し出てくれました。彼はそれ以前にも韓国の生徒さんに楽器を斡旋してもらっておりお得意様でもありました。とはいえ不動産を借りて店員を雇うような規模のビジネスではないので、彼の教室に私の楽器を展示させてもらい、売れたら彼への手数料を差し引いた売上金を送金してもらうという約束をしました。

それから2年間、売上額は年間100万円ほどの小さなものですが、韓国市場進出への手応えを感じられ、また韓国語でビジネス経験を積むことができ、私にとっても良い経験となりました。しかしコロナが始まった2020年以降、管楽器販売の売上は低迷し、その年末にいったん商品を引き上げることを伝えました。商品は帰ってきたのですが、その時に預けていた売上金120万円ほどが待っても振り込まれません。

彼に事情を聞いたところ、コロナ禍で収入が減り、借金返済や教室の家賃、家庭の支払いのために全額使い込んでしまったとのこと。私は大いに驚きました。いくらお金に困っても他人、しかも友人のお金に手をつけはしないだろうと思っていたからです。そして、少しずつでも良いから返金してほしいと伝え、毎月5万円ずつ返金してもらう約束をしました。しかし、失礼ながらモラルや計画性がある人は友人のお金に手を付けたりはしません。案の定、支払いは途切れ途切れになり、そのたびに催促の連絡を繰り返すようになりました。それは、ずっとストレスを与え続ける頭の痛い問題でした。それから丸2年が経ち、ようやく返済額二十数万円のところまで取り返しました。

メンツを大事にする韓国文化。彼の名誉のためにこの事件は韓国人の共通の知り合いには話していないので、誰も知らないはずです。彼とはこの問題が解決したら再び友人として付き合っていきたいためおおごとにはしたくないのですが、在庫の目録や売上表、LINEのやりとりは証拠として保存しており、何があっても必ず全額取り返すつもりでいます。

この経験から、私はお金が関わるとどんなに信用している人間でも変わってしまうこと、それだけお金の魔力が強いのだということを知ったのでした。

失敗エピソードはまだまだあるので、次回に続けたいと思います。

□ ANOTHER STORY

machiko-machikado

KIKUSUI

hakko-bunka

SHINGO KURONO