起業でコンプレックスが癒やされる? コンプレックスを逆手に起業しよう

こんにちは! ケルト音楽の楽器店を経営している、フルート奏者のhataoです。

私は最近、会社設立に向けて動いています。起業して10年間、ずっと個人事業主として店舗を経営してきたのですが、去年の税金があまりにも高かったためです。

同時に、節税と投資も始めました。昨年はふるさと納税に初めて挑戦し、先月から節税効果のある小規模事業共済に加入し、インデックス投資信託の積立ても始めました。

これまでは自分の知識と経験への投資、そして自分のビジネスへの投資が最も費用対効果が高いと考えて金融投資を控えていましたが、店舗ができ、大きな出費は今後なさそうだと判断し、蓄財に舵を切ったのです。

日本では倹約や貯蓄が美徳とされていて、「安く買った自慢」はするのに、お金儲けや投資には嫌悪感があるようです。もっとおおっぴらにお金の話ができるようになれば良いですね。

さて、今回は「起業と癒やし」についてお話をします。ビジネスと心の癒やしに関係があるなんて、思いもしませんか? それが、深く関係があるのです。そんな私の体験をシェアします。

コンプレックスに悩まされた20代

人は何かしらのコンプレックスを持って生きています。私は大学生の頃まで、様々なコンプレックスを抱えて生きていました。醜い容姿、人とうまく関われないこと、スポーツが苦手なこと、女性にモテないこと、特技が何もないこと、得意なはずの勉強も一流ほどではなかったこと。高校生の頃はコンプレックスで自分が大嫌いになり、社会との関わりを持つのが怖く、鬱屈した青春を過ごしていました。

大学に入学してからはそれまでの自分の殻を破り、サークルに入り、友達や恋人ができ、音楽を始め、一人で海外旅行をして……と、自分を変えるきっかけが多くありました。しかし、その後もひきずるコンプレックスがありました。それは、「自分は何の取り柄もなく、何者にもなれないのではないか」というものでした。

大学4年生になり周りが就職していく中、自分は音楽活動に明け暮れ、なんとなく大学を卒業しフリーターになりました。消極的にであれフリーターの道を選んだのは他ならぬ自分なのに、大学を出てまで何をしているのだろうという自責の思いは募るばかりでした。

  • 起業をきっかけに自分が好きになった

  • 以前にこの連載でもふれたことがありますが、私が起業したのはそれしか選択肢がなかったからです。フリーターを3年続け音楽活動をしたものの結果が出せず、結婚を機に就職したものの仕事がきつく半年で退職。何をしてもうまくいかない、続かない。自分を社会の荷物のように感じていた中、背水の陣で起業をしたのです。

起業後は演奏、音楽講師、楽器教本の製作、楽器販売と自分の好きなこと、やりたいこと、得意なことだけに絞って仕事をし、これまで生きてゆくことができました。その中で昔抱いていたコンプレックスはいつの間にか消え去り、こんな自分でも愛せるようになったのです。今では胸を張って、自分が大切だ、自分が好きだと言えます。その間に何が起きたのでしょうか。起業したら人はどうなるのか、心の変化について考えてみました。

  • お金のコンプレックス

私は幸運にも貧乏に悩まされたことは一度もありません。実家は一般的なサラリーマン家庭で学生時代は実家の援助がありましたし、浪費癖もなく堅実に生きてきたつもりです。それでも、フリーター時代に会社員の友人がボーナスや福利厚生で手厚く保護されているのを見ると、時給でしか稼げない自分がみじめに感じられたものです。

幼少期から貧しく習い事や進学などを諦めなくてはいけなかった人や、怪我や障害や病気で働けず耐乏生活を強いられた人もいることでしょう。そんな人は、起業をして事業がうまくいき、その年代の平均的な収入を上回ると、自尊心を満たすことができます。

起業してから、昔は羨ましく思えた20代会社員の月収を後から知ったとき、実はそれほどゆとりのある収入ではないのだと感じ、フリーター時代の自分が癒やされるような思いがしました。

お金を得ると、昔の穴埋めをしたくなります。昔は諦めた習い事を、旅行を、高い食事を、服を……と。案外、手に入れてみるとそこまで執着するようなものではなかったのだなと気づくかもしれません。

  • 就職していないことへのコンプレックス

私は20代前半の頃、就職していないことへのコンプレックスを感じていました。2000年代当時はニート、高学歴フリーターなどと言われ、世間の風当たりが強かったのです。大学まで出てフリーターをしている自分が情けなく思え、同い年の会社員の友人とは対等な気持ちではいられませんでした。

そのコンプレックスは自分が就職してみることで半分癒やされ、起業して事業が軌道に乗ったことで完全に癒やされました。

  • 学歴へのコンプレックス

学歴コンプレックスをかかえる人は珍しくはありません。
私は関西の有名私立大学を卒業しているので学歴のコンプレックスを感じたことはありませんが、学歴コンプレックスというのは根深く、中年まで引きずる人もいるようです。
学歴の高低は就職するときに効いてきますから、若い頃は学歴が理由で不利になることもあるでしょう。しかし起業して自分が社長になってしまえば、ビジネスの世界に学歴など関係ありません。何事も自分次第なので、学歴のコンプレックスなどとは言っていられないのです。

  • 無力感へのコンプレックス


自分の能力が仕事に生かされていないと思うとき、人は無力だと感じます。それは自分などいなくても関係がない、替えはいくらでもいる、必要とされていない、という感覚です。男性は自分の有用感に喜びを感じるため、自分が必要とされないと、特に失望するでしょう。

私も20代の頃は自分が何に向いているのか、何が得意なのかさっぱりわからず、就職の適正診断を受けたり、色々な資格取得を検討したりしました。今では笑い話ですが、ワイン醸造家や鍼灸師まで検討して話を聞きにいったりもしました。

自分の好きなことを軸に起業した結果、このような無力感はなくなりました。日々、自分の知識や経験がお客様に求められていることにやりがいと充実感を得られるからです。

  • 他人が活躍することへの嫉妬心

音楽家としての私は、同じ分野で活躍する同世代の音楽家の活躍を見ると心穏やかではいられませんでした。有名人のコンサートに参加した、テレビで取り上げられた、受賞した……など。もともと私は競争心が強いほうなので、他人の活躍を見ると苦しくなるのです。

芸術というのは競争ではありませんから、人と比較するのは無意味です。ひたすら人気を得ることだけを目指しても、ひたすらお金儲けに執着しても、ひたすら技術を高めても、自分の作品を愛することができなければ虚無感が残るだけです。大好きなはずの音楽で、そのようなことを目指すのは最も恥ずべきことです。

しかし音楽家として活動しつつも楽器販売業として起業しビジネスがうまくいく中で、そういった嫉妬心は癒やされていきました。自分はしっかり自分の脚で立っているのだ、人に求められ世の役に立っているのだ、という自信が生まれたのです。

近年は、ケルト音楽業界を盛り上げるために積極的に若手を応援したり、イベントに協賛金を出したり、同業音楽家のCDを紹介や販売したりしています。それは昔の自分では考えられないことでした。

事業が安定していることで、自分は自分、他人は他人としっかりと線が引けるようになったのです。

  • コンプレックスを逆手に起業しよう

今回は起業とコンプレックスという、一見何の関係もなさそうな事柄について私の体験談をシェアしました。

私のように、自分や人生に何かしらコンプレックスを抱えて生きている方。そのコンプレックスは、起業によって癒やされるかもしれません。そして強いコンプレックスを持っているからこそ、それをバネに人一倍頑張れるものです。

人生大逆転! というほど成功できるかどうかわかりませんが、自分が愛せるようになるかもしれませんよ。

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