さなえごはん

いつものごはんにひとつまみのときめきを。 お料理を、作ったり考えたり伝えたり届けたり。 アルコールの優先順位高めで生きてます。                    ◆Twitter http://twitter.com/sanae_foodgeek ◆Instagram http://Instagram.com/sanaegohan

旬の食材練習帖「栗」-2022秋編-

季節の下ごしらえは、行く先の自分へのごほうび。

梅を漬けては干し、実山椒を掃除し、旬の果実を甘く炊く。
いつの日かの自分においしさを贈るため、手間と時間をかけるのもいいものだなと、年々感じるようになっています。

秋の今頃だと、値段を見定めながら生筋子を買ってきて、漬けを仕込むのが恒例行事。
年末、お正月の準備に買おうとすると値札に一瞬胸がきゅっとなるので、下ごしらえしたものを小分けにして冷凍保存し、自衛する作戦です。

同じく秋に出会う手仕事食材といえば栗。なのですが…
この下ごしらえの経験が、私の中にほぼ蓄積されていないのです。

おそらく「皮を剥く時、手が痛かった。なんか大変だった」というネガティブイメージが大きすぎて、その他の経験記憶を脳から駆逐しているのだと思われます。
ネガティブに弱すぎ。

そんな栗仕事を、この機会にかこつけて攻略してしまおうという魂胆です。

秩父の道の駅で買った栗

魂胆を胸に、秩父の道の駅で買った栗。まるまるぷくぷくつやつや。

 

栗の下ごしらえ情報はラビリンス

夏のほや企画と同様に「栗 下ごしらえ」でひたすら検索しまくります。
ほやよりも身近な食材のためか情報がかなり多く、絞り込みに時間がかかりました。

手間をかける以上、できるだけ長く楽しみたいので冷凍保存したいと考え、まずは以下の選択肢に行き当たります。
A.生のまま皮を剥いて冷凍保存
B.皮付きのまま茹でて冷凍保存

なるほど。
栗で何を作りたいかによって、そりゃ処理も違ってくるな。
しかし、今回の私は「栗の処理を攻略したい」という、「手段を目的」として行動しているのです。
よくセミナーなどで「手段を目的にしてはいけませんよ」と諭される、あれを自らやろうとしているのです。
どうしようかな。

せっかくの機会なので、できるだけ選択肢をつぶして結論にたどり着きたい。ここはネガティブに負けてきた自分に鞭を打とう。

というわけで、選択肢をできるだけ集約して全部やってみることに。

 

決意も新たに、検索を続けます。

そのうちに見えてきたのは、以下の共通点です。
・皮のまま、ぬるま湯に15分~1時間、水に1時間~一晩水につける
(時間については、たくさんの諸説あり)
=皮をやわらかくするため、また虫止め(中の虫やその卵を窒息させる)のため

これは、ほぼどの情報にもあったので実行。

 

そして、AとBに対して、以下選択肢を試してみることにしました。

A.生のまま皮を剥いて冷凍保存
①水に一晩(もしくはぬるま湯に15分ほど)ひたす
②1時間以上水にひたして5分茹で、そのまま1時間置く
③一晩冷凍して熱湯に5分ひたす
それぞれを行った後、鬼皮・渋皮とも剥いて冷凍保存するという方法。

③は渋皮もはがれるように剥けている画像があって、これがうまくできればよさそう!という期待の新方法。

Aについては、剥いたそばから水にさらしてあく抜きをするというのが共通点です。

B.皮付きのまま茹でて冷凍保存
④茹でたら、ざるあげして粗熱を取る
⑤茹でたら、湯につけたまま冷ます
上記ののち、水気をとって皮のまま冷凍する

なんとか絞り込みました。さあ、次は手を動かしていくぞ。

 

いざ、検証開始

まずは、生栗保存のAから。

ボウルに栗を入れて水をはる。
1時間ほど経ったら③の分の水気をとり、密封袋に入れて冷凍庫へ。
残りはそのまま一晩おいておきます。

水につけた栗

水につけられた栗たち。かわいい。

 

翌日、①はさっそく剥いていきます。
②は湯を沸かして5分茹で、そのまま火を消して1時間放置してから。

①も②も、鬼皮を剥いてから15分以上水につけて、渋皮に挑みます。
①の渋皮は、「剥く」というより「削る」という感じ。やはり力が必要で、果物を剥くようにはいかず、下手が丸出しになってしまう…

②の渋皮は、①より若干剥きやすいものの、茹でた分、表面がやわらかいため割れやすく感じます。

楽しみにしていた③。
冷凍庫から取り出した栗を熱湯へ。

寒々しい栗画像。ここから熱湯にどぼん。

 

5分置いて鬼皮を剥きます。おお、確かに剥きやすい。
剥いたものは、熱湯に戻して置けばすぐに渋皮も剥けるよ!とあったのですが剥きにくく、湯につけたまま1時間置いてから剥きました。

①②よりも、剥がれるように剥ける箇所があるものの、「するん」と剥けるイメージだったので、あれ?と首を傾げつつ、実の色にも不安が。

栗の皮むき

他の生栗よりは、こんな風に剥けるところもある③。

 

それぞれ剥いた栗は、2時間ほど水に入れてあく抜きして冷凍庫へ。

渋皮を剥いた栗

右から①②③。下手が際立つ①。③の色、気になる…

 

 

さて、次はBの茹で栗。という段階で発掘されたメモ。

「えー…」って声が出ましたよ。
駆逐していた記憶を、メモしてたじゃない私。

栗のメモ

記憶から完全に削除されていたメモ。ところどころ日本語が不自由。

 

ごていねいに「こっちが甘い」まで書いてあるし。
整理整頓が苦手だと、こういうことが起きるのですね。

あ、でも「塩水で茹でる」という情報は今回の検索から漏れていたので採用しよう。
メモしてた私、グッジョブ。

濃度1%の塩水を作って、栗を入れます。
中火にかけて、沸騰したら弱火に。40分ほど茹でて、④はざるに取って粗熱をとり、⑤は鍋に入れたまま冷まします。
それぞれ水気を取って冷凍庫へ。

 

 

いよいよ試食

一旦冷凍したものを、翌日試食してみます。
これで、今後の私の栗ライフが決まります。

A①②③は、冷凍庫から出してすぐ、塩を入れた湯で10分茹でます。
B④⑤は、常温に30分置いて解凍し、皮を剥きます。

冷凍保存した栗の比較

上の右から①②③
下の右から④⑤

 

写真で分かるのは、生栗を剥くのが下手ということ、茹で栗は渋皮がはがれるように剥けるということです。

肝心の味ですが、
A-① 甘みは控えめながら、栗らしい食感と味。
A-② ①よりほっくり。①同様、栗らしい。
A-③ 味が抜けてしまった。食感もぼそぼそ。
B-④ Aより甘みが強い。きれいな栗の味。ほっくり。
B-⑤ ④よりもコクを感じる甘み。他は④同様。
という感想でした。

期待のA-③「生栗を皮付きのまま冷凍して、熱湯をかけたらするんと剥ける」という方法が、剥きやすさ、味の両方で納得いくものにならず残念。

検証の結果、今後の私の栗冷凍保存法は、
・生栗(A-①)
=一晩水につけて鬼皮を剥き、水に15分以上つけてから渋皮を剥く。剥いたそばから水にさらし、2時間あく抜きしたあと冷凍保存。
料理で熱を加える時は冷凍のまま使用し、そのまま食べるなら冷凍庫から出してすぐ塩水で10分茹でる。
・茹で栗(B-⑤)
=塩水に栗を入れて中火にかけ、沸騰したら弱火に。40分ほど茹でて火を止め、そのまま冷まして水気を取って冷凍保存。使用時は常温で30分解凍してから皮を剥く。
*塩水はいずれも濃度1%

とすることといたしました。

はー、頑張った!

 

秋食材練習帖ー後記ー

いやはや、今回は選択肢が多すぎて大変だった…
ですが、一応の結論にたどり着いて満足しております。

あとひとつ解決したのが、皮の剥き方。
おしりを落としてから剥き始めるいう情報があり、「おしりの皮についた実がもったいないなー(って前も思ったなーというかすかな記憶)」と思いまして。

栗の皮むき

おしり側の栗がもったいない。

 

おしりに包丁の刀元の角で切れ目を入れて鬼皮を剥いてみたのですが、おしりを落とすのと大差ない力加減で剥けたのも発見でした。
(てか、これも発掘メモに書いてあった。私の記憶力&整理整頓力よ)

栗の皮むき

渋皮煮にするなら、渋皮を傷つけないように気をつけながら。

 

しかし、他にも「圧力鍋を使う」「皮付きのまま冷蔵保存すると甘くなる」など、掘れば掘るほど情報が出てくるので、このラビリンスは思いのほか奥深いようです。

せっかく開いた門ですからね、また機会があればいろいろ試して経験値をあげていきます。
(今は冷凍庫に栗がぱんぱん)