山梨、長野、埼玉の3県にまたがる奥秩父の山並み。標高1千~2千m超の深い森が広がるこの山域を、東アルプスと呼ぶ人もいます。この奥秩父の盟主たる山が、山域の西部、山梨、長野の県境にまたがる金峰山です。
日本アルプスの標高3千m級の名峰を数多く抱える長野県にしてみれば、その存在はかなり小さく感じますが、山梨県から見上げる大らかな頂にシンボリックな五丈岩がそびえ立つ姿は、南の富士山と対峙する北の鎮護の山として、古くから信仰の山として崇められてきました。【金峰山山頂の五丈岩】
また、日本百名山の1座としても名を連ねているので、全国から多くのハイカーが訪れる山です。多くのハイカーは、西側の北杜市増冨方面から富士見平を経由して山頂を目指すルートか、逆に東側の川上牧丘林道が稜線を越える大弛峠から往復するルートを選択しているようです。かく申すこの山笑も何度か歩いた金峰山ですが、最初はボーイスカウトの夏キャンプで、北の長野県川上村の廻り目平から歩きました。子供心に長く辛いルートでしたが、水晶が露出する河原で石を投げあうなど、楽しい思い出を記憶しています。
いにしえの登拝道 金峰山御岳道
さて、今回は、信仰の山金峰の古くからの登拝道を歩くことにしました。かつて山梨県側の金峰山登拝道はいくつもあったそうですが、今はほとんどその存在を知られず、歩かれることはほとんどいないようです。
ところが近年、甲府市ほかいくつかの団体が古道の中で最も栄えていた表参道的な「御岳古道」と呼ばれるルートの復活に乗り出しているようです。(PJについてはこちら⇒金峰山古道復活 プロジェクト|&e×YAMAP)古道が復活することは大いに歓迎されることではありますが、賑やかな登山は苦手なコミュ障ハイカーとしては、静かなうちに歩いてみたいとチャレンジしてみることにしました。
その御岳古道ですが、甲府盆地の西、甲斐市敷島町から荒川(富士川水系。埼玉県側の荒川ではありません)沿いに北に延びて、奇岩、奇勝の昇仙峡、金峰山の里宮金櫻神社を経て登山口の黒平(くろべら)に至り、そこから山上に鎮座する五丈岩まで直登する長大かつ標高差も2千mに及ぶルートですが、今回は黒平までバイクで入り、そこから山頂を目指しました。さて、どうなりますか…【金櫻神社(かなざくらじんじゃ)】
Dax、山笑行きま~す!
9月下旬の週末、甲府市の奥座敷、千代田湖にやってきました。千代田湖は周囲約3kmほどの小さな人口溜池ですが、ブラックバスやヘラブナ釣りのポイントとして、朝早くから多くの人が訪れていました。千代田湖の湖畔を基点にズベノー作戦(ズベノーについてはこちら⇒「小型バイクで、ワタクシ的 ”ズベノー計画” 始動! | BREW」)を開始します。
奥秩父の山懐に延びる道をDaxはペケペケと快走します。そのうち山の緑に花崗岩の奇岩が露出する昇仙峡の渓谷を通過していきます。早朝の静かな昇仙峡ですが、山梨県屈指の観光地ですから日中は多くの観光客で賑わうことでしょう。【昇仙峡のシンボル覚円峰】
昇仙峡の上流に位置する荒川ダムを経由して、荒川上流の野猿谷を見ながら走る黒平に到達しました。奥秩父の山懐にある黒平集落。今でこそ甲府市街から車で1時間もかかりませんが、かつてはいくつもの峠越えで1日がかりで歩かれた山里だったことでしょう。黒平集落内の黒戸奈神社の前にDaxをデポしました。【荒川上流の野猿谷】
【山間の集落黒平】
今後は歩かれることがない?林道歩き
黒平から奥秩父の南麓を東西に横断する林道クリスタルラインを少しだけ歩いて、精進沢上流の甲府市森林浴広場へ。御岳古道の痕跡がある精進沢の畔に野営場があります。YouTubeなどでは、穴場の無料キャンプ場として紹介されていますし、当日もテントがチラホラ散見されましたが、トイレが見当たらないので、正式には解放されていないのでは?野営場から更に一般車両が通行止となっている御岳林道に入ります。林道を歩くと、林道の整備工事が行われていましたが、実はワタクシが歩いた時から1ヶ月後の去る10月18日、御岳古道復活プロジェクトの一環として、台風などで荒れていた御岳林道が整備されて、登山口までのアクセスが向上したそうです。この時は工期とにらめっこで急ピッチに作業が行われていたのでしょう。ありがたいことです。
御岳林道は荒川源流方面に延びていますが、その途中から御岳古道に入ります。古道にはそぐわない怪しげな導入でしたが、そもそも山は人里とは異界なのですから(笑)
奥深い奥秩父の森を歩く
先ずは尾根上の防火帯を急登していきますが、尾根は結構な斜度で、木が伐採された防火帯上でもシダ類が生い茂って、かなり歩きづらい状況でした。
その先はピークの西側をトラバースする平行移動、更に尾根上の平坦な林道歩きになり、一気に距離を稼いでいきます。林道の脇の笹薮には古道らしき踏み跡が延びていましたが、そこは横目でチェックしながら古道を歩いた気になっているワタクシでした。【猛毒注意!ヤマトリカブト】
林道が尾根から外れて東側に下っていく小広い場所から唐松嶺というピークの西側をトラバースして行きます。カラマツ林のなかに延びる踏み跡は、比較的明瞭なので、迷うことはまずないでしょう。
唐松嶺北の尾根を乗り越して、尾根の東側を巻きながら下っていくと神子ノ沢の流れに出合います。この沢はすぐに分岐するので、右俣の沢へ進むと、滑めた岩盤を流れ落ちる三段の滝に突き当たります。まさかの滝登り…とあんぐり眺めていると、左岸(右手)の斜面に踏み跡を見い出しました。小滝を越えてしばらく神子ノ沢沿いにあるくと、小沢が集まる広々とした凹地に至ります。
凹地から尾根上に上がった所が水晶峠です。水晶?何やらお宝のニオイが…周辺を見まわしてみると、地面に水晶のかけらが散らばっていました。【水晶の盗掘、盗採は犯罪ですよ!】
奥秩父を歩いていると沢や岩場に水晶が露出している場所を間々見かけますが、ここは水晶峠というだけあって、粒がいいです。ウヒヒヒヒ…大丈夫、大丈夫だって。誰も見てやしねえさ( ̄∀ ̄)【ピピッ?(ミソサザイ)】
いやぁ~素敵な水晶だねぇ…(ちっ、とんだミソがついたか)
水晶峠を乗り越すと岩がゴロゴロと堆積する荒川(富士川水系)の上流、御堂沢に入ります。涸れ沢が二俣に分岐する間の樹林を直進すると、御室小屋の跡地に至りました。かつて登拝者を迎えた御室小屋は既に解体されて、集積された廃材や瀬戸物、瓶の破片に往時を偲ぶばかりです。
核心部に到達するも…
小屋裏からは、今までと様子がガラリと変わって、シャクナゲが繁茂する岩場の急登になります。しばらく登っていくと大きな一枚岩の下の出て、長い鎖場になっていました。登拝の道らしいといえばそれらしいのですが、いきなりスリリングなルートに一変したことに少々ビビりました。
鎖場の上に出て御岳道の通じているであろう尾根筋を見上げると、中腹に「弁慶片手回し」といわれる巨岩と山頂の五丈岩がシンボリックな姿を見せていました。いよいよ、ここから先が御岳道の核心部なのでしょう。ドキドキ、ワクワクとした高揚感がみなぎってきました。さて、この時点で時計の針は正午を大きく回っていました。このまま歩いても山頂まではたどり着けるでしょうけど、到底日没までに下山できないことを悟り、ここで撤退することにしました。日帰りするにはもう少し早出する必要があるようです。振り返ると富士山が雲間から覗いていました♬この翌週、熱の冷めないうちに御岳道の核心部を歩いてきましたが、話が長くなりますので、今宵はここまでにしとうございます。
今回もご笑覧いただきまして、ありがとうございました。