金沢には地元資本の回転寿司店が何軒もあります。漁港からの直送、目の前で握る寿司職人たち、一皿千円近いものもある高級魚などなど、大手資本の百円回転寿司チェーンとはかなり内容が異なるので、近年は「グルメ回転寿司」と言われるようになりました。
そのグルメっぷりは、日本テレビ系列の人気番組『秘密のケンミンSHOW』で何度か取り上げられており、今では街中の回転寿司店はまず観光客が列をつくるという状況になっています。
でも、金沢の回転寿司店はほとんどが郊外に立地していて、街中には近江町市場と片町に数店あるだけで、観光客が順番を待っているので、市民消費者は街中の店にはほとんど行かないようです。
なぜ、これほどのグルメっぷりになったのでしょうか。
地元資本の回転寿司店には大きく3つの系列があり、順不同ながら『もりもり寿し』、『金沢まいもん寿司』、『すし食いねぇ!』の3大回転寿司チェーンへと成長しました。この3社による激しい競合が、現在の高水準の回転寿司をもたらしたと言えます。
その背景には、回転寿司のベルトコンベアを製造するメーカーが昭和の時代に数社創業し、まずはそれらベルトコンベア・メーカーの激しい競争があったのです。
回転寿司というアイデアは大阪の人が考案したのですが、今では、全国の回転寿司ベルトコンベアはほぼ100%石川県で作られています。機械の販売のために、各メーカーはまず地元に回転寿司店を開業させることに注力し、中には自社の子会社として開店寿司店を経営していたメーカーも出てきました。それらの活動を通して、メーカーは寿司店に訪れる消費者のニーズを先取り的につかみ、機械に反映させました。例えば、自動お茶給水整備とか、直線レール搬送機とか、です。
回転寿司店同士の競争がレベルアップに貢献している。
回転寿司店間の競争は、もともと一皿百円で創業していたので、価格をそれ以下にする意義がなく、量や質の向上を目指して始まりました。
「でかねた」と言われる大きなネタ、港直送のより新鮮なネタ、回ってないネタでも職人が直接オーダーを請けるシステムなどなど、クオリティーはしだいに向上して行きます。
一皿の価格が上がっても、よりよい寿司であれば消費者はついて来ることが分かると、競争によるレベルアップは一気に進捗し、やがてどの街にもないグルメ回転寿司店の林立になったのです。