11月29日早朝、菊水酒造に到着。今日は、米麹造り、本仕込みという重要な作業を体験する。
菊水酒造の作業着も妙に似合っていて、蔵人仮採用中の史佳である。
本採用に向けて、酒造りのセンスが問われる重要任務である。(笑)
日本酒作りのフローは、大きく分けて、二つのステージに分かれる。
ステージ1は、酒母を造る工程。酒母=酛(もと)のことである。
酛とは、良いお酒造りの元を指し、水、蒸米、米麹、酵母を混ぜ合わせて造られる。この酒母は、前もって11月18日頃に仕込みがされていた。
今日はステージ2、本仕込みである。
酒母の中に、米麹、蒸米、水を加え、三段仕込みの最初の仕込みである初添(はつぞえ)を行う。
三段仕込みは4日間の工程で行われ、1日目に初添、2日目に踊り、3日目に仲添(なかぞえ)、4日目に留添(とめぞえ)と続く。
いよいよ作業に取り掛かる。早朝から節五郎蔵は、蒸米の蒸気でとてもいい香りがしていた。
蒸米の入った大きな釜を重機で持ち上げて、併設されているベルトコンベアーのような機械の場所まで移動する。
パラパラと落ちてくる蒸米を布でまとめていく。蒸米は10袋くらいになり、準備完了。
酒母が入っているタンクに移動して、初添に初挑戦。
事前に作られていた米麹、蒸米、最後に水の順にタンクに投入する。
あとは発酵の香りを感じながら、櫂棒(かいぼう)で勢いよく攪拌させる。スムーズに初添の仕込み完了である。
あとの3日間は、蔵人さんにお任せすることになるが、どんなお酒の味になるのか、想像が膨らんでくる。
本日のもう一つの重要な作業が、米麹造りである。今後の仕込みに使う米麹を造る。
麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋に入り、蒸した酒米を平らに広げていく。
酒米は粘り気がなく、手袋をした手にこびりつくことがないため、スムーズに作業が進む。
お米を平らにする作業の音がギュッ、ギュッと、耳に心地よく響いた。
蒸米の温度を下げる作業(ひっくり返しなど)をこなし、いよいよ、麹菌を振る作業である。
蔵人しか出来ない門外不出の作業である。
少し遠慮がちに麹菌が入った缶を振っていく。緑がかった菌が、白いお米に舞い降りるのがわかる。
最後にこの蒸米を一塊にまとめ、寝かせて米麹にする。
締めくくりは、節五郎蔵に史佳の三味線を持参しての初演奏。
麹菌を振りかけた蒸米、タンクに入っている酒母・初添に、たっぷりと三味線の音を伝える。
タイミングよく酒蔵見学に来ていた観光客の皆さんが、この場面に遭遇し、ガラス越しに笑顔で拍手を送ってくれた。
さながら、三味線酒造コンサートとなったが、思いのほか音響が良いことに驚いた。
良いお酒の元となってくれることを期待したい。
年末にはいよいよ、搾りの瞬間が待っている。