雨の日のカフェにはいつもノラジョーンズがかかっていた

たくさんの人が集まっていた。

ガヤガヤといろんな話声が聞こえてきていた。

そこで僕は立っていて、すれ違いざまに人とぶつかり、眼鏡を床に落とした。
メガネはコツッという軽い音を立てて床に落ちた。

隣にいた同級生がそれを拾い上げてくれたのだが、もうすでにメガネは割れてしまっていて、それを再びかけると周りの景色はすりガラス越しにみた時のように、全てがぼやけて見えた。

「あぁあぁ、」

と僕は言い、またどこかで探そうか、と思う。

・・・

そこでピンポンと短めにインターホンが鳴り、パラパラと雨の降る日曜日の朝に僕は目を覚ました。
昨日の夜、遅くまで作業していたので、「くそぅ」と思いながら重い上半身を持ち上げて、玄関に降りていく。

ヤマトのお兄さんから中身の割に大きな段ボール箱を受け取り、MacBookを開く。
昨日の夜、やりかけで電源も落とさずに蓋をした画面が出てくる。
なかなかいい感じにまとまったな、と思う。

いつも思うのだけど、朝起きた瞬間というのは一番純粋にものを見られるような気がする。
夜中に書いたラブレターはもう一度朝読めというけれど、その通りかもしれない。

夜中は想像力が膨らみすぎて、うまく現実とのバランスが取れないのかもしれない。

ひよこは一番初めに見た動くものをお母さんだと思うらしい。

僕はいつも朝起きたらすぐに仕事を始めてしまう。
あまり幸せな生活、と言えないかもしれないが、そうなってしまう。
そしてひと段落するまで作業し、気分転換にコーヒーを入れたり、パンを焼いたりする。

先輩のKさんが、毎朝ゆっくりとコーヒーを入れるのがいい、それがフリーの幸せな時間だよねと言っていた。
僕もできればそうしたいと心から思う。

ゆっくりとコーヒーを入れ、パンを焼いて、ハムエッグかなんかを作ったりして、オレンジジュースとサラダを添える。
そこの順番をいつも間違えてしまう。

でもまぁ仕方ない。
朝起きてすぐに作業するのは、間違いなく一日の中で一番ピュアな心を視覚と体で向かいあうことができるから、前日に悩んでいたところの解決策が見えたり、夜中にいいと思っていたものをおかしいということに気づいたり、それはそれで気持ちがいいから、しばらくはこんな感じだろう。

だから事務所と自宅を分けるのはしばらくできそうにないかもしれない。

Shingo Kurono

□ ANOTHER STORY

ケルトの笛 hatao

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SHINGO KURONO