古本屋ってどんなところ?

古本屋のよみた屋です

はじめまして。東京吉祥寺で古書店「古本よみた屋」を営んでいる澄田喜広です。

みなさんは古書店に足を踏み入れたことがあるでしょうか。

新刊書店のようにきれいな本ばかり並べた新古書店ではなく、昔出版された古びた本も置いてある古本屋です。

私は32年前の1992年によみた屋を開業しましたが、そのころと較べて古本屋の数は半分ぐらいになっているのではないでしょうか。全古書連に登録されている業者は3割ほど減っていますが、残った古書店の多くも店舗での販売をやめてネット通販などに移行しています。

一方でカフェなどと組み合わせて古書を販売する若い人が、ここ10年ぐらいでずいぶん増えました。本だけでは充分な収入にならないから、他の商売を組み合わせて本も扱っています。あるいは1軒の店の中の本棚を細かく分けて、それぞれの「棚主」が自分の本を持ち寄って販売する棚貸し型の共同書店もできています。これらは、古書に限らず新本も扱っているところがほとんどです。

新刊書店も古書店も減っているのに、本屋という営みに興味がある人はたくさんいるようです。なんだか本屋さんブームのようで、不思議な気がします。

古書店の仕事では仕入れが一番重要です

古本屋の仕事について、お店で見る店員さんの姿から想像している方が多いと思いますが、実際にはお店にいるばかりではありません。本を仕入れて、その本は誰かの本棚に並んでいたものですから、それをきれいにしてお客さんの前に出せる状態にして、やっとお店の本棚のしかるべき所に置くことができます。

みなさんがご覧になるのは、その本とお店の奥に座っている店員さんの姿ですが、その前の段階がたくさんあるのです。

仕入れと言っても、お客さんがお店に本を持ち込んでくれるばかりではありません。お宅まで買い取りに行ったり、宅配便を利用したり。古書の市場もあります。古本の仕事ではこの仕入れが一番重要です。

古書の市場というのは同業者の集まりです。自分の店で不要な本を出品して、欲しい本を競り落とす交換会です。たくさんの買い取りがあったときや、自店にあわない本を買ってしまったときなどに利用します。

古本屋はたいてい午後から開きます。あまり早朝からやっている店はないでしょう。早くても10時ごろです。では午前中に古本屋が何をしているかというと、やはり仕入れです。あるいは市場への出品。東京の市場では、だいたい午前中が出品の時間で昼頃にそれを係の古書店が整理して、午後が入札です。そのため、市場への出入りが多かったり、係になっていたり古書店主の店では、家族や店員さんが店番していることがあります。

本は重い

先日、知人が脚本を書いた芝居を見ていたら古書店で働く登場人物が出てきました。珍しがる別の登場人物にたいして、「いや、ただの肉体労働だよ」と私の口癖を言っていておかしかったです。実際のところ、本は価格あたりの重量がとても重いので、さまざまな仕事の中でも筋肉を使う量はかなり多い方です。扱う分野によっても違いますが、500グラムの本一冊が500円ぐらいだとすると、豚肉より安いですね。

この重くて安い本を、お客さんのお宅や古書市場からお店まで運んで、売れるものと売れないものを分けて、一冊一冊きれいにして、それぞれに値段を付けて、やっと本棚に並べることができます。そこで一息ついたところを、みなさんはご覧になっているわけです。

知識も必要です

もちろん、本を買い取ったり売値を付けたりするときには本に関する知識も必要です。古本屋にはさまざまなやり方があるので、知識がとぼしくても何とかする方法もありますが、やはり日々勉強が欠かせません。その点は他の仕事と同じでしょう。

インターネットのない時代は、古書店に勤めて実地に仕事をしながら学ぶしかありませんでした。私も、20歳のときに学生アルバイトとしてこの世界に入って、8年間は修業の時代でした。とくに店主の出張買い取りの助手としてお客様のお宅をまわったのは貴重でした。お客様とのやりとりを間近に見ましたし、行き帰りで店主が話してくれることは、雑談でしたが古本屋のあり方について私の根幹になっています。

28歳で独立開業してからは、市場での取り引きや同業者との会話から学ぶこともありますが、お客様から教わることが一番です。私は、自分の知識を総動員してお客様と接しますが、常にお客様の方が一枚上手です。さすが古本屋さんなどとお世辞を言いながら、一つ二つ本に関する知識を付け加えてくれます。

そして、次に教えてくれるのは本自体です。すでに40年ぐらいこの仕事をしていますが、毎日知らない本に出会います。あつかう本を全部読むことはできませんが、パラパラめくるだけでもその内容に驚くようなことがよくあります。世の中は知らないことばかりです。

これから古本と古本屋に関するお話をしばらく続けようと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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