「吉良って市町村合併したんですねぇ。」
と世田谷区役所の窓口の白髪の男性は言った。
吉良というのは僕の地元で、マイナンバーの住所や免許証の住所がまだ実家の住所になっているもんだから、なにかしらの手続きの時にいつも少しトラブルがある。(一番厳しいのはTSUTAYAだ。)
あぁ、またか。
と思った。
男性は続ける。
「僕ももともと西尾なんですよ、東部中の方で。」
「え、」
「そうなんですね!しばらく前に西尾市になったんですよね。」
と僕はいう。
「高校も西尾高校だったんです。」
「あ、同じです!」
思わぬところで先輩に出会った。
地元が同じというのは、地元以外のところで出会ったときに大きな力を発揮する。
少し前までは赤の他人だったふたりは、一気に親密になり、このタイミングで来てよかったとさえ思える。
周りの環境によってそれは変わる。
東京で同じ市の出身のひとと出会ったとき、海外で同じ県の出身に会ったとき。
これから宇宙に飛び立って行き、宇宙人に囲まれる未来が来たときに、きっと言うんだろう。
「ああ、僕も地球出身なんですよ!」
Shingo KURONO