ゆっけ

「きものシェアクローゼット&サロン 水端」店主。企画会社、老舗呉服店を経て水端をオープン。洋装mix、ユニセックスきものなどルールにとらわれないスタイリングを得意とする。 今の暮らしに馴染む、普段のお出かけをもっと楽しくするきものの魅力を発信します。

2020年成人式で考えた、これからの晴れ着の意義

先週は各地で成人式が行われましたね。今年成人を迎えられた皆さまにはおめでとうございます。

私の住む京都市でも13日の成人の日に行われ、私も振袖のお着付けで新成人をお祝いさせていただきました。人生の晴れの日をお手伝いさせていただけるというのは、特別な喜びがありますね。

photo by Yuki Nobuhara

 

今年の成人式は古典×自分らしさがトレンド

成人の日は振袖を中心に晴れ着の傾向をチェックするのが毎年の習慣。2年ほど前から古典回帰の傾向が続いていますが、今年は一層その色が強く見えました。

一方でトレンドの自由なヘアカラーに合わせた個性的なコーディネートのお嬢様もちらほら見受けられ、振袖自体の色もこれまで主流だった赤やピンク、黒だけでなく、洋服で流行りのニュアンスカラーが増えていたり、とても華やかでした。特にきものはシックにコーディネートしてヘアで遊ぶスタイルが今っぽくてかわいかったですね。

男性はカラースーツが例年よりも目立ちました。これまでは成人式に羽織袴を選ぶ男性はやんちゃなイメージがありましたが、カンカン帽と丸眼鏡をコーディネートした抜け感たっぷりの袴姿など男性の晴れ着も多様になってきているようで見ていて楽しかったです!

 

個性全開の振袖姿にSNSの反応は?

自由な着こなしが主流になってきた一方、保守的な層にはそれに抵抗を感じる人もいるようです。

SNSで歌川国芳の餓者髑髏(がしゃどくろ)を描いた振袖を着た動画を投稿したお嬢さんがひどい批判を浴びるということが起こりました。「晴れの席に髑髏を選ぶなんて不謹慎だ」「わざわざ不吉な柄を着ていくなんて成人式を侮辱している」といった趣旨のコメントが多かったようです。

当のお嬢さんにとっては餓者髑髏の振袖はとても思い入れのある着物だそうで、小物もヘアメイクも真剣に選んで決めたものでした。もちろんご家族の了承も得て仕立てたもの。批判をした人達に対して彼女が出したコメントは「髑髏を選ぶセンスを理解してもらいたいわけではなく、自分の人生を祝福する日に自分が着たいと思ったものを選んで着られることが当たり前になってほしい。これから成人式を迎える人たちは、周りが『普通』を突き付けてきてもあなたのしたいことをしてください」という内容でした。なんとも筋が通っていてかっこいいと思いませんか?

(髑髏は和柄では縁起物として扱われることの方が多く、マナー違反ではありません。また彼女の着こなしを絶賛する声も批判以上に起こっていました。なおご本人は既にこの件についての投稿を完結しています。)

話題になった餓者髑髏の振袖(クリックでメーカーHPに飛びます)

 

晴れ着は自分のために選ぶ時代へ

この出来事と自分が目にしたたくさんの晴れ着から感じたのは、「着こなしだけでなく晴れ着の意義も変化している」ということ。家族が用意したり周りのために選んだりしていた晴れ着から、自分で自分の人生を祝うために選ぶ晴れ着に変わってきているのだなと。

結婚式でカジュアルスタイルが増えてきているのも同じ理由だと思います。周囲への敬意を重んじていた世代には確かに受け容れがたいかも知れません。けれど個々人の人生や在り方を大切にする今の考え方が私も好きだし、それが服装、なかでも大切な晴れ着に表れるのは自然なこと。

より一層自分らしいおしゃれで自分自身の人生を愉しめる世の中になってほしいと強く思った令和最初の成人式でした。