hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

コトの「断捨離」― 辞める判断基準とタイミングについて

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。

前回の連載では何かを辞めるべきか続けるべきか悩んだ時の考え方のヒントをお伝えしました。

個人的には、習い事やプロジェクトなど何かを始めるのは簡単ですが、続けることや成果を出すこと、適切に辞めることが難しいと感じています。音楽で言えば、バンドを始めることよりも音楽活動を軌道に乗せて続け、停滞したら解散すること。恋愛で言えば付き合うことよりも良い関係を続け愛が冷めたときに綺麗にお別れすることのほうが、より難しいのです。

そこで今回は辞める判断とタイミングについて考えてみましょう。

挑戦と失敗を繰り返す


私は現状を変えて何かに挑戦したいと思った時、「やらずに後悔するより、やって後悔したほうがマシ」という心構えを大切にしています。勇気が無いために行動に移さなかったら、その後二度と同じチャンスは訪れないでしょう。挑戦しなければ、傷つくことが無い代わりに満足を得ることもできません。精一杯やって結果が伴わなかったであれば諦めもつきますし、学びを得て成長することができます。

「失敗は成功の元」と言われるように、たくさん挑戦して失敗から学んで成長することが、成功につながるという考え方を私は信じています。これは多くの示唆を与える真理です。たとえ外見が悪くてモテなくても、たくさんデートに誘えば食事くらいは付き合ってくれるかもしれません。そうして経験値を上げることで恋愛上手になっていく……。あ、ここはビジネスの話をする場所でしたね。

私自身も、ビジネスにおいてたくさんの失敗を重ねてきました。思いつきだけは得意なので、色々なことをひらめいては即実行し、しばらくやってみてうまくいかなければ中断するということを繰り返し、今では「辞め方」ばかりがうまくなったような気がします。そこで大事なのは、適切に辞める判断をするということです。

辞める基準を持とう


人付き合い、趣味のサークル、習い事や仕事など、長く続けているけれど最近少し飽きてきているとか、惰性で続けてしまっている、ということはよくあるでしょう。私達の時間は有限なので、なるべく有意義で楽しいことだけに時間を使いたいものです。

しかし、いざ辞めることを考えると、名残惜しかったり気が引けたり、踏ん切りがつきません。そんな時は「辞める基準」を作り、基準に触れた時は感情を一時停止してみてはいかがでしょう。どんな基準があるのか、考えてみました

・サンクコスト

私達には「損をしたくない」という心理があります。これだけの時間・労力・お金……を投じたのだから、辞めるなんてもったいない、という心理状態です。

例えば私は韓国語を毎週オンラインで習っているのですが、最近は勉強時間が取れず、明らかに授業が負担になっています。しかし2年も続けたものを辞めてしまうのは、もったいないと感じます。このように何かに投じた回収不可能な費用Sunk Cost(沈んだコスト)が意思決定に影響を与えてしまうことを埋没費用効果と言います。

何かを「もったいない」と感じる場合は、それを続けることによる損失も考えてみましょう。事業であれば累積する将来の赤字、恋愛であれば今後に失われる新しい出会い、習い事であれば他のことで得られるもっと有意義な時間、といったものです。続けることによって失われるものが大きすぎると感じるときが、「損切り」をするタイミングです。

・赤字が出たら辞める 

私はこれまで色々なサークルや教室を主催してきた経験があります。参加者人数は増減するものですから、調子の悪い時期もあるものです。そういった時、頑張ったら伸びるのか、それとももう諦めたほうが良いのか。

私はこれに対して一貫した答えはありません。たとえお金にならなくても、自分や参加者の熱意が動機となり続けることもあるからです。

ここでの一つの基準は、「赤字が出たら失敗と認め、潔く辞める」ということです。趣味の会合であれば自分が楽しめばそれで良いのですが、事業で行っているのであれば、赤字という事実は言い訳することはできません。赤字を出した事実を認めて、その時点で辞めるというのは損失を回避するための合理的な判断です。

・優先順位を決める

いろいろなことに関わりすぎて、手が回らなくなっていませんか? そのようなときには、優先順位をつけて、優先順位が低いものから思い切って辞めてしまいましょう

この時の私の考え方は2つの軸で4象限図を作ることです。紙に十文字を書いて縦軸に「やりたい・やりたくない」、横軸に「お金になる・お金にならない」とし、今抱えていることを思いつく限りそこに書き込みます。この時、時間を多く取られるものは大きなマルで囲み、あまり取られないものは小さなマルで囲みましょう。

例えば趣味のサークルは「やりたいことだが、お金にはならない」、新商品の開発は「やりたくて、お金にもなる」という感じです。この中で当然辞めるべきは「やりたくないし、お金にもならない」こと。それが大きなマルであれば、なおさらです。その次に辞めるべきことを「お金になること」「やりたいこと」のどちらにするかは、ご自身の状況に合わせて決めればよいでしょう。

あるいは、「将来性がある・ない」とか「自分のためになる・ならない」などでも良いでしょう。大事なのは、今自分が何を重視しているのかを見定めて、重要ではないことは切り捨てるという考え方です。

コトの断捨離をしよう

今回は辞める判断とタイミングについて私の意見をお伝えしました。実は私自身が、色々なことを始めすぎて手が回らなくなるタイプの人間なのです。

今も会社の仕事、別荘の家造り、音楽活動、語学学習と様々なことを抱えすぎていてとても苦しくなっています(もちろん、Brewの原稿も落とさないようにしなくてはいけません)。

すべてが中途半端のまま疲れ果てる、というのは気分が最悪ですから、やるべきことを絞って、常にハイパフォーマンスで充実した生活を送りたいものだと自分に言い聞かせています。

それではまた次回にお会いしましょう!