その家は23階にあって、毎朝朝焼けがとてもきれいだった。
4月から6月の3ヶ月間、僕はPorte de Bagnoletという駅の近くのその家にお世話になり、Pale Lachaiseの語学学校に歩いて通っていた。公園の脇の道の緑色がきれいな季節だった。
ちょうど今頃の時期に、Saint Paul駅の近くのファラフェル屋の目の前に小さなワンルームを見つけて、引っ越しの準備をしていた。気がする。
いわゆるホームステイというやつなのだが、僕の前にいたAくんが出て行き、僕がそこに入り3ヶ月くらいで、出て行く。そうすると次の人がまた入ってくる。
マダムはとても親切なひとだった。毎日山盛りになったサラダと、フリットとパン、特別な日にはラクレットというチーズフォンデュみたいなものを出してくれた。
サラダは塩と胡椒、マスタードと白ワインビネガーとオリーブオイルを混ぜたドレッシングをかき混ぜたものだった。ワインビネガーの酸味で、いつも最初にむせていた。でもすごく美味しかった。
今でも同じドレッシングでサラダを作って食べている。ワインビネガーを入れすぎて、むせる度にマダムの顔を思い出す。
残すのも悪いし、全部食べきっていたら、おかげで3ヶ月で10kg太った。
3ヶ月でその家を出たあとも、毎週火曜日は晩ご飯に呼んでくれていた。毎週水曜はフランスの小学校が休みなので、マダムの孫の2人と遊びながら夕食を食べていた。
おかげで僕の次にホームステイしていたミオさんとミエちゃんとも仲良くなり、Annie家の兄弟のような感じだった。そんな時代からちょうど10年ということで、昨日3人で10年記念をお祝いしてきた。
あっという間に10年が過ぎて、僕はこうしてデザインの仕事をできるようになったり、みんなもいろいろあった。ミエちゃんは社長になっていた。すごい。原宿でPON D’ORという料理教室を運営している。今度行ってみよう。