夕森山方面に通じる丸野林道と分かれて、奥三界岳への登山道を歩きます…って、この道は本当に登山道なのかな?よくよく観察してみると、どうやら丸野林道の支線のようです。そっかー、昇龍の滝の前にあったコンクリート塊は、堰堤関係のものかとばかり思っていましたが、どうやら本沢に架かるこの林道の橋台だったのか。
とはいえ、林道には山側から大量の土砂が流入し、そこに根差す草木が繁茂して、ほとんど林道の面影はありませんがね。逆に谷側が崩落していたり、更に山腹から染み出す沢水が道に流入して川の中を歩いているようでした。
これぞ自然の治癒力。このまま放置したら、あと何年もしないうちに踏み跡は消え、草木が繁茂して、山に吞み込まれることでしょう。そんな人工物の衰退を奧三界岳は何食わぬ顔してほくそ笑んでいます。
チッチッチ…道沿いの笹薮から野鳥の鳴き声が聞こえます。しばらく鳴き声の方を凝視していると、小さな野鳥が笹の中に潜んでいるようでした。ヤブサメかな?ムシクイの幼鳥かな?
イワガラミの花が賑やかに咲いていましたが、色彩が地味なので、葉っぱみたいな扱いです(笑)
時計回りに山腹を巻く廃林道。短針の6時から9時辺りまで来ると、正面に奥くらがり渓谷源流の滝が見えて、その奥に奥三界岳の山頂と思しき穏やかなピークが見えました。これが奥さんかい?⇒奥三界(まだ言ってる)
時計の短針が10時を指した辺りが廃林道の終端。そこには資材置き場か飯場として使用されていたと思しきプレハブ小屋がありました。中は酷い荒れ具合でしたが、いざという時に雨風は凌げそうでした。でも、ここに一晩泊まれと言われれば…Non!ですね。
小屋前で一服したら裏手からヒノキの植林の中を急登します。こちらでもムシクイかウグイスの幼鳥らしき野鳥を見かけました。
笹原の広がる稜線へ
植林帯を抜けると笹原が広がる気持ちの良い斜面に出ました。この笹原が広がる景色は割と最近のものらしく、昔は山麓同様、鬱蒼としたヒノキの植林が広がっていたそうですが、伐採後に再生されなかったそうです。同じ阿寺山系北部の白草山の稜線もこの様な笹原が広がる風景でしたが、わざわざ稜線まで植林を広げても管理や伐採に手間がかかるからでしょうか。
標高を上げていくと東側に広がる笹原の先に中央アルプスの中央部の山々が衝立の様に出現しました。北から空木岳、南駒ヶ岳、越百山と、何れも標高2,600~2,800mの天空の稜線。その中で今朝沢を隔てた仙涯嶺は荒々しくアルペンチックなピークを見せていました。
山腹をトラバースする区間になると、いくつかの小沢を渡ります。そんな沢沿いにはヤグルマソウが咲いていました。この様な身近な場所では見られない植生を目にすると心躍ります♪
笹原の中を落ちるゴロ岩の沢。「ひるめし沢」の表示がありました。昼飯は既に小屋の前で食べてしまいましたよ(笑)登山道はこの沢を直登します。前夜に結構雨が降ったせいか、結構な流れでしたが、雰囲気からすると普段は「音はすれども姿は見えず」程度の流れかもしれません。
鳴くよウグイス平安京エイリアン…世代です(笑)
ふと、傍らの笹の葉にクロヒカゲが。
一息いれて振り返ると恵那山が正面に見えました。ああ、遥かなるあの山、ええなぁ…恵那山も名古屋にいるうちに歩きたいお山です。
山頂部は瑞々しい湿地帯
山頂が近づくと再び樹林帯に入ります。ヒノキの植林とミズナラなど自然林が入り混じり、木々の根元には笹が密生する植生は、いかにもクマなんか出てきそうです。
カサコソ…ギャーーー!
…なんだ、アオゲラさんか(汗)
また、比較的平坦な地形なので、あちらこちらから水が湧出して、山上湿地の様相でした。道は常に泥濘で場所によっては沢の中を歩く感じになります。この様な山を私はむかーし、どこかで歩いたような…あ、鬼怒沼だ!子供の頃、親に連れられて登った奥日光の高層湿原鬼怒沼もこれに似ていた気がします。あの頃は家族旅行と言えば山。山が大嫌いでした(笑)
湧出した清水は、水溜まりというか小さな池をいくつか形成していました。その様な水辺にはすっかり大きく成長した水芭蕉が目立っていましたが、この巨大化した観葉植物のような葉っぱを見ても、ほとんどの人はあの清楚な白い花を咲かせる水芭蕉とは気づかないでしょうね。銀河鉄道999に出てきそうな話でしんみりしちゃいました。
やがて樹林が開けて、小広く伐採された奥三界岳の山頂(1811m)に到達しました。山頂はイマイチ展望がありませんが、倒壊寸前の展望台に上がると、僅かに東から北側が開けて、木曽御嶽山や阿寺山系の最高峰小秀山が望めました。
山頂付近に密やかに咲くツクバネソウやギンリョウソウを見かけました。
さて、南側にモクモクと入道雲が湧いてきました。夕立に見舞われたら大変。足早に来た道を返します。同じ道でも往路と復路は見える景色が違うとは言いますが、今回も長くなってしまいましたので、本日はこれにて散会といたします。(トドメ)
奥三界岳。導入は滝見を楽しみながらの沢筋の道。中段は豊かな森から笹原の稜線へ。上部は山上の瑞々しい湿地と、変化に富んだ山でした。
今回もご笑覧いただきまして、ありがとうございました。